生きものの「なぜ?」Q&A

フラミンゴの色、ハチミツの保存力、不死のクラゲ——動植物の驚きの適応を16問で解説します。

動物園や図鑑で見かける生きものの姿には、それぞれ生存戦略の理由があります。ここでは子どもから大人までよく検索される16の疑問を選び、進化と生理の観点から答えます。有名な俗説の訂正もあります。

Q. なぜフラミンゴはピンク色なの? A. フラミンゴ自身の羽の色はほぼ白っぽく、主食の藻類やブラインシュリンプに含まれるカロテノイド色素(カンタキサンチンやアスタキサンチン)が羽毛に沈着して淡いピンクに見えます。生まれたての雛は灰色っぽく、動物園では餌に色素を配合して色を保っています。色が薄い個体は栄養状態の指標にもなります。
Q. 猫はなぜ喉をゴロゴロ鳴らすの? A. 喉頭の声帯の振動で低い音が生じます。筋肉を音の一周期ごとに収縮させるという従来説に加え、声帯の特殊な組織が低周波の振動を可能にする仕組みも研究されています。くつろいでいるときだけでなく、不安や痛みがあるときにも鳴らすため、音だけで健康状態は判断できません。コミュニケーションや自己鎮静などの役割が考えられていますが、組織を治す効果が確立したわけではありません。
Q. 犬はなぜ舌を出してハーハーするの? A. 犬は人のように全身から汗を出して冷やすことができず、速く浅い呼吸(パンティング)で口や気道の水分を蒸発させ、気化熱を利用します。体温調節に役立つ汗腺は主に肉球にあり、皮膚の他の汗腺は主な冷却手段ではありません。高温多湿では放熱に限界があり、ハーハーしているから安全とはいえません。暑さ以外に興奮や痛みでも起きるため、異常な呼吸やぐったりした様子があれば獣医師に相談します。
Q. なぜハチミツは腐りにくいの? A. 糖が多く微生物が利用できる水が少ないことや酸性であることが、多くの微生物の増殖を抑えます。種類や条件によっては過酸化水素なども抗菌性に関わります。ただし無菌ではなく、水分が増えると発酵することもあるため、表示に従って保存します。古代のハチミツが食べられたという逸話を安全性の根拠にはできません。ボツリヌス菌の芽胞を含むことがあり、1歳未満の乳児にはハチミツやハチミツ入り食品を与えてはいけません。
Q. タコの血液が青いのはなぜ? A. タコやイカは、銅を含むタンパク質ヘモシアニンで酸素を運ぶためです。ヘモシアニンは酸素と結合すると青くなり、酸素を放すとほぼ無色になります。酸素との結び付きやすさは温度や体液のpHにも左右されますが、その性質や環境変化への応答は種によって異なり、すべてが低温・低酸素に同じように強いわけではありません。
Q. なぜナマケモノはあんなに遅く動くの? A. 葉を多く食べる生活と関係して、代謝が低く、消化にも長い時間がかかります。少ないエネルギーで生活するうえで、ゆっくりした動きが役立ちます。ただしフタユビナマケモノとミユビナマケモノなどでは食性が異なり、すべてが葉だけを食べるわけではありません。移動距離や体温にも条件による違いがあります。ゆっくりした動きや毛に共生する藻が、見つかりにくさに役立つ可能性も考えられています。
Q. ペンギンに膝はないの? A. あります。大腿骨と下腿の骨の間に膝関節があり、脚の上部が体の輪郭や羽毛に隠れているため、外からは分かりにくいのです。骨格を見ると、見えている部分だけが脚の全体ではないと分かります。左右に揺れる歩き方では、重心の運動に伴う位置エネルギーと運動エネルギーの交換も研究されていますが、「揺れるから無駄」とも「どんな歩き方より効率的」とも単純にはいえません。
Q. サメは泳ぎを止めると死ぬって本当? A. 種によります。ホホジロザメなどには、泳いで鰓に水を通す呼吸(ラム換水)に依存する種があります。一方、ネコザメやトラフザメなどは、口や噴水孔から水を取り込み、鰓に送ることで止まっていても呼吸できます。泳ぎ続ける必要があるかどうかは鰓への水の送り方の問題です。浮袋がないことは浮力に関わる別の特徴で、それだけから呼吸方法は決まりません。
Q. キリンの首はなぜそんなに長いの? A. 高い位置の葉を食べるうえでの利点と、オス同士が首を使って争う際の利点(性選択)が主な仮説です。互いに排他的とは限らず、首の進化を一つの目的だけで説明することはできません。高い頭まで血液を送るため動脈圧が高く、血管の性質や血圧調節なども関わります。「脚からの血液が奇網を通って直接脳に戻る」という循環ではなく、静脈血はまず心臓へ戻ります。
Q. セミが鳴いているのはオス? メス? 何年生きるの? A. 日本でよく聞く大きな鳴き声はオスが出します。腹部の発音膜(ティンバル)を筋肉で変形させて音を出し、腹部の空洞などで響かせます。種ごとの音の高さやリズムが繁殖の合図になります。成虫の寿命は種や環境によって数週間、ときには1か月以上で、「必ず1週間」ではありません。地下の幼虫期間も種によって異なり、北米の周期ゼミには生活環が13年または17年のものがいます。
Q. ホタルはなぜ光るの? A. 腹部の発光器でルシフェリンという物質が、ルシフェラーゼという酵素と酸素、ATPのエネルギーにより酸化され、ほとんど熱を出さずに光(冷光)へ変わります。主な目的は夜間の求愛で、オスとメスが種ごとに決まった点滅パターンで互いに合図を送り合います。光のエネルギー効率は極めて高く、発光生物学の重要な研究対象です。
Q. ラクダのコブには水が貯えてあるの? A. 主な中身は脂肪組織で、エネルギーの蓄えです。脂肪の代謝では水もできますが、コブが水筒のように水を蓄えているわけではありません。水分を節約する腎臓の働きや体温の変動を許容する性質なども、乾燥地での生活に関わります。ラクダの赤血球はもともと楕円形で、脱水後の急な水分補給に伴う浸透圧変化にも耐えやすい性質があります。脱水で初めて楕円形になるのではありません。
Q. ヘビはなぜ脱皮するの? A. 古い表皮の外側の層を脱ぎ、新しい層に更新します。成長に伴うだけでなく、成長が緩やかな成体も脱皮します。脱皮前には目を覆う透明な鱗も白く曇って見えることがあります。一続きに脱げることは多いものの、脱皮の状態には湿度や健康状態など複数の要因が関わり、栄養状態だけの判定材料にはなりません。
Q. コウモリはなぜ逆さまに吊り下がって休むの? A. 多くの種では、高い休息場所から体を落として翼を広げると飛び立ちやすく、地上の敵も避けやすくなります。足の腱や爪の仕組みも、少ない筋力でつかまり続けるのに役立ちます。ただし地上から離陸できる種もあり、「すべてのコウモリは地面から飛べない」は誤りです。逆さま以外の姿勢で休む種もいます。
Q. 不死のクラゲは本当にいるの? A. ベニクラゲの仲間 Turritopsis dohrnii は、クラゲの段階からポリプの段階に戻る能力で知られます。ポリプは単なる小さなクラゲではなく、付着して生活し無性生殖を行う別の体の形です。細胞の状態の転換や体の再構成が研究されていますが、実際に無限の寿命が観察されたわけではありません。捕食や病気などでは死ぬため、「不死身」ではなく生活環を逆戻りできる能力と考えるのが適切です。
Q. キツツキはなぜ頭を強く打ち付けられるの? A. 2022年の高速度撮影とモデルによる研究では、頭部は衝撃を吸収するクッションではなく、硬いハンマーのように働くと報告されました。減速度そのものが小さいのではなく、脳が小さいために、モデルで推定した脳内の圧力が霊長類の脳震盪の基準を下回ると考えられました。長い舌骨が安全ベルトのように衝撃を吸収するという説明は確立していません。この結果も、すべての状況で損傷がないことを保証するものではありません。
確認クイズ(生きもののふしぎ)

問1. フラミンゴの羽がピンク色になる原因は?

問2. タコの血液が青い理由は?

問3. ラクダのコブの中身は何?

問4. 日本でよく聞くセミの大きな鳴き声の説明は?

問5. ハチミツが腐りにくい理由として誤っているものは?

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