画像と音声のデジタル化——条件からデータ量を計算する

画素数・色深度・標本化周波数・量子化ビット数を区別し、非圧縮データ量を求める。印刷密度と画素数、圧縮率と削減率の違いにも注意して、保存容量の見積もりを説明する。

この単元の目標
  • 画像の画素数と色深度から、条件を明示して非圧縮データ量を計算できる
  • 標本化と量子化を区別し、音声の時間・チャンネル数を含めてデータ量を計算できる
  • bitとbyte、MBとMiB、画素数と印刷密度を区別できる
  • 可逆圧縮と非可逆圧縮の違い、および圧縮後の容量を求めるための追加条件を説明できる
📑 目次
  1. 1. まず「何を数えるか」と単位を決める
  2. 2. 画像:縦横の画素数と1画素当たりの情報
  3. 3. 「解像度」は画素数と密度を区別して読む
  4. 4. 音声:時間方向の標本化と振幅方向の量子化
  5. 5. 圧縮後は「何が既知か」を確認する
  6. 6. 自分で条件をそろえて計算する

1. まず「何を数えるか」と単位を決める

デジタル画像や音声の容量は、基本的には「値をいくつ記録するか × 1つの値を何bitで表すか」で考える。ただし、画像形式や音声形式の名前だけで容量が決まるわけではない。ここでは、まず非圧縮の画素データ・音声サンプルの本体を数え、その後に圧縮や付加情報を考える。数値例はすべて学習用に設定した架空のデータである。

単位この授業での定義注意点
bit0または1を表す情報の単位bと略すことがある
B(byte)1 B = 8 bitbitからBへは8で割る
kB、MB1 kB = 1,000 B、1 MB = 1,000,000 B本記事では十進の接頭語を使う
KiB、MiB1 KiB = 1,024 B、1 MiB = 1,048,576 B二進の接頭語。MBと同じ値ではない
Hz、kHz1 Hzは毎秒1回、1 kHz = 1,000 Hz音声では毎秒の標本数を表す

2. 画像:縦横の画素数と1画素当たりの情報

ラスター画像は小さな画素を格子状に並べて表す。横W画素、縦H画素なら、画素数はW × Hである。色深度d bit/画素は、1画素に割り当てるbit数を指す。このd bitを色の区別だけに使うなら、表現可能な符号の数は最大2のd乗となる。RGBの各成分を8 bitで表す場合、各成分は256段階、1画素は合計24 bit = 3 Bで、組合せは16,777,216通りになる。これは人がすべての色の違いを見分けられるという意味ではない。

Dimage=WHd(bit),Dimage/8(B)D_{\mathrm{image}}=W H d\quad(\mathrm{bit}),\qquad D_{\mathrm{image}}/8\quad(\mathrm{B})
この式は、各画素を固定長d bitで隙間なく並べた非圧縮データ本体の式である。ヘッダ、色パレット、行末の埋め草、メタデータなどは含まない。透明度用の8 bitをRGBに追加すれば32 bit/画素となるが、32 bitすべてが色の違いに使われるわけではない。また、総bit数が8で割り切れない場合、ファイル保存には端数byteを切り上げるなどの扱いが必要になる。
例題1:24 bit画像を何MBで保存するか

横1,600画素、縦900画素、RGB各8 bitの画像を非圧縮で保存する。透明度や付加情報はなく、行末の埋め草もない。データ量をBとMBで求めよ。さらに縦横の画素数をそれぞれ2倍にすると何倍になるか。

解答・解説

画素数は1,600 × 900 = 1,440,000。1画素は24 ÷ 8 = 3 Bなので、容量は4,320,000 B = 4.32 MB。MiBでは約4.12 MiBである。縦横をそれぞれ2倍にすると画素数は4倍になり、同じ色深度なら容量は17.28 MBになる。片方だけを2倍にした場合の2倍と区別する。

3. 「解像度」は画素数と密度を区別して読む

「解像度」は画像の縦横の画素数を指す場合と、長さ当たりの画素密度を指す場合がある。ppiは1インチ当たりの画素数で、印刷時の寸法を決める手掛かりになる。dpiは本来、印刷機などの1インチ当たりのドット数であり、画素数と必ず一対一ではない。単位と対象を確かめよう。既存画像のppiの指定だけを変え、画素の追加・削除をしなければ、画素データ本体の量は変わらない。

例題2:同じ画像を違う大きさで印刷する

横1,800画素の画像を300 ppi、150 ppiで印刷するとき、それぞれ横幅は何cmか。1インチ = 2.54 cmとする。画素数と色深度は変更しない。

解答・解説

300 ppiでは1,800 ÷ 300 = 6インチなので15.24 cm。150 ppiでは12インチなので30.48 cm。同じ画素をより大きな面積に配置するので横幅は2倍になるが、画素データ量は変わらない。大きく印刷するほど細部が新たに増えるわけではない。

4. 音声:時間方向の標本化と振幅方向の量子化

標本化は、連続的に変わる信号の値を一定の時間間隔で取り出すこと。標本化周波数fが48,000 Hzなら、1秒につき48,000個の標本を1チャンネルごとに取る。量子化は、その振幅を有限個の段階に対応させること。量子化ビット数qが16 bitなら符号は65,536通りである。標本化周波数は時間方向の細かさ、量子化ビット数は振幅方向の細かさに関わり、役割は異なる。

信号に含まれる最高周波数がF Hz以下に制限されている理想条件では、f > 2Fの標本化周波数が復元の目安となる。境界ちょうどは避ける。実際には標本化前の低域通過フィルタなども必要で、fだけを上げれば元の録音や再生機器の品質が必ず良くなるわけではない。量子化では丸めによる誤差も生じる。
Daudio=fqct(bit),R=fqc(bit/s)D_{\mathrm{audio}}=f q c t\quad(\mathrm{bit}),\qquad R=f q c\quad(\mathrm{bit/s})

式のcはチャンネル数、tは秒単位の時間である。モノラルならc = 1、左右を別々に記録するステレオならc = 2。非圧縮の固定長PCMとして、各チャンネルの各標本をq bitで記録し、ヘッダ等を無視する場合に成立する。f × tは1チャンネルの標本数となる条件で考える。bit/sは1秒当たりのデータ量であり、音の周波数の単位Hzとは別物である。

例題3:ステレオ録音の保存量

48 kHz、16 bit、2チャンネルで30秒を非圧縮PCM録音する。付加情報は無視する。bitレートとデータ量を求めよ。

解答・解説

bitレートは48,000 × 16 × 2 = 1,536,000 bit/s。30秒分は46,080,000 bitで、8で割ると5,760,000 B = 5.76 MB。同じ条件でモノラルなら2.88 MBである。30秒を掛け忘れたり、ステレオの2を二重に掛けたりしないよう、各因子に単位と意味を添える。

5. 圧縮後は「何が既知か」を確認する

方法復元について容量計算の注意
可逆圧縮復号すると元のデジタルデータに完全に戻せる規則性により効果が異なる。必ず小さくなるとは限らない
非可逆圧縮情報を捨てるため元のデジタルデータに完全には戻せない品質設定や内容により容量が変わる
再標本化・画素数削減記録する値の数そのものを変更する圧縮形式の変更とは別の条件変更として追跡する

圧縮前が4 MBと分かっても、形式名だけから圧縮後の容量は決められない。圧縮率という語は「圧縮後 ÷ 圧縮前」と「減った量 ÷ 圧縮前」の両方の意味で使われることがあるため、必ず定義を確認する。本記事では残存比r = 圧縮後 ÷ 圧縮前と定義し、圧縮後 = r × 圧縮前、削減率 = 1 − rとする。比較する範囲もデータ本体同士か、ファイル全体同士かをそろえる。

例題4:圧縮後のbitレートから求める

例題3の30秒の音声を圧縮し、音声データ本体の一定bitレートが128 kbit/sとなった。1 kbit = 1,000 bitとし、圧縮前後とも付加情報を除く。圧縮後のMB、残存比、削減率を求めよ。

解答・解説

圧縮後は128,000 × 30 ÷ 8 = 480,000 B = 0.48 MB。残存比は0.48 ÷ 5.76 = 1/12、約8.33%。削減率は11/12、約91.67%。このbitレートが圧縮済みの音声全体に対して指定されているので、量子化ビット数やチャンネル数を再び掛けない。可変bitレートでは実際の時間平均bitレートが分かれば同様に計算できるが、単なる目標値なら見積もりにとどまる。

圧縮率が同じでも同じ品質とは限らない。可逆圧縮は元の「デジタルデータ」に戻せるが、最初の量子化で失った連続信号の情報まで取り戻すわけではない。また、非可逆形式を可逆形式へ保存し直しても、すでに失われた情報は復活しない。

6. 自分で条件をそろえて計算する

練習問題(付加情報を無視する)
  1. 横800画素、縦600画素、8 bit/画素のグレースケール画像の非圧縮データ量をkBで求めよ。1 kB = 1,000 Bとする。

    解答・解説

    800 × 600 × 8 ÷ 8 = 480,000 B = 480 kB。1画素に1 B必要で、色深度の8はbitからBへの換算の8と相殺する。

  2. 24 kHz、16 bit、モノラルで10秒録音する。非圧縮PCMの容量をMBで求めよ。

    解答・解説

    24,000 × 16 × 1 × 10 ÷ 8 = 480,000 B = 0.48 MB。モノラルなのでチャンネル数は1。24 kHzは24,000標本/秒である。

  3. データ本体が非圧縮で6 MB、圧縮後は元の25%になった。圧縮後のデータ本体と削減率を求めよ。

    解答・解説

    6 × 0.25 = 1.5 MB。削減率は1 − 0.25 = 0.75で75%。「25%になった」と「25%減った」は異なる。

  4. ある画像の縦横の画素数をそれぞれ半分にし、色深度を24 bitから32 bitに変えた。付加情報のない非圧縮本体の容量は元の何倍になるか。

    解答・解説

    画素数が1/4倍、1画素当たりのbit数が32/24 = 4/3倍なので、全体は1/3倍。縦横の変化と色深度の変化を別々に倍率で表して掛ける。

条件の読み取りチェック

問1. RGB各8 bit、透明度なしの画像で、1画素当たりのbit数は?

問2. 画素数と色深度を変えず、印刷用ppiの指定だけを300から150に変えた。正しい説明は?

問3. 標本化周波数だけを2倍にし、時間・量子化ビット数・チャンネル数を変えない非圧縮PCMの本体容量は?

問4. 非圧縮データの容量しか分かっていないとき、一般に正しいのは?

計算の根拠:画像は画素の個数と固定長符号の長さ、音声は毎秒の標本数・秒数・チャンネル数と固定長符号の長さを掛け合わせた。標本化の説明は帯域が制限された信号の理想的な復元条件であり、特定機器の性能保証ではない。本記事は実測の圧縮率や特定形式の実ファイル容量を主張せず、ヘッダ等を除く明示的な条件での理論値を扱う。
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