気体の性質と溶液

理想気体の状態方程式、蒸気圧・沸点上昇・浸透圧など希薄溶液の性質。

この単元の目標
  • 気体の状態方程式を各場面で使い分けられる
  • 凝固点降下・沸点上昇・浸透圧の計算ができる
📑 目次
  1. 理想気体の状態方程式
  2. 希薄溶液の性質(依数性)
  3. 水蒸気も圧力を分担する:乾いた気体との違い
  4. 沸点と濃度:「何を一定に数えるか」を見分ける

理想気体の状態方程式

pV=nRT,p1V1T1=p2V2T2pV = nRT, \qquad \frac{p_1 V_1}{T_1} = \frac{p_2 V_2}{T_2}

🔍 理想気体の状態方程式 pV = nRT の組み立て方

  1. Step 1: ボイルの法則(温度一定)
    pV=一定pV = \text{一定}

    物質量・温度一定では圧力を2倍にすると体積は半分。分子の平均の速さは変わらないが、単位面積・単位時間あたりの壁への衝突が増えるため。

  2. Step 2: シャルルの法則(圧力一定)
    VT=一定\frac{V}{T} = \text{一定}

    温度上昇 → 分子の運動が激しくなり、同じ圧力を保つには体積が膨らむ必要がある。

  3. Step 3: 両者を1本に統合
    pVT=一定\frac{pV}{T} = \text{一定}

    「pV は T に比例」という形で2つの法則を同時に満たす式。比例定数が残る。

  4. Step 4: 物質量 n まで拡張
    pV=nRTpV = nRT

    比例定数は気体 1 mol あたりの値 R(=8.31 J/(mol·K))に n を掛けたもの。アボガドロの法則「同温同圧では同数の分子が同体積」から R がすべての気体で共通だとわかる。

モル分率を使うと混合気体の分圧は pi=xiPp_i = x_i P(ドルトンの分圧の法則)。気体反応の計算はすべて「mol に直す」のが基本戦略です。

希薄溶液の性質(依数性)

性質式キーワード
蒸気圧降下Δp=pA∘xB\Delta p = p_A^{\circ} x_Bラウールの法則(pA∘p_A^{\circ} は純溶媒の蒸気圧)
沸点上昇・凝固点降下ΔT=km\Delta T = k m(m は質量モル濃度)分子量測定に利用
浸透圧π=cRT\pi = cRT半透膜、植物の細胞
例題

水 100 g に非電解質 18.0 g を溶かしたら凝固点が 1.86 ℃ 下がった。溶質の分子量を求めよ(k = 1.86 K·kg/mol)。

解答・解説

ΔT=km\Delta T = km より m=1.00m = 1.00 mol/kg。水 0.100 kg 中に 18.0/0.100 = 180 g/kg 溶けているので M=180/1.00=M = 180 / 1.00 = **180**

電解質(NaCl など)は水中でイオンに解離するため粒子数が増えます。NaCl の完全解離を仮定した希薄極限では効果は約2倍ですが、倍率は物質や濃度で異なります。係数 i(解離度を含む)を忘れずに。

水蒸気も圧力を分担する:乾いた気体との違い

なぜ水面の上の気体には水蒸気が混ざるのでしょう。液体の分子の一部は気相へ飛び出し、気相の分子の一部は液体へ戻るからです。ふたをした容器で液体の水が残り、温度一定で十分時間がたつと、蒸発と凝縮の速さが等しくなります。このとき水蒸気が分担する圧力が、その温度での飽和蒸気圧です。密閉容器の内側の水滴を思い浮かべると、液相と気相が共存する意味がつかめます。

水にほとんど溶けず反応もしない気体 A と水蒸気が共存する理想混合気体なら、全圧は両者の分圧の和です。A の物質量を求めるときは、全圧ではなく A の分圧を状態方程式へ代入します。一方、液体がすべて蒸発してしまった場合や平衡に達していない場合、水蒸気の分圧を飽和蒸気圧と置くことはできません。

P=pA+pH2O,nA=(P−pH2O)VRTP=p_A+p_{\mathrm{H_2O}},\qquad n_A=\frac{(P-p_{\mathrm{H_2O}})V}{RT}
状態方程式の温度は必ず K。R = 8.31 kPa·L/(mol·K) なら圧力を kPa、体積を L にそろえます。R = 8.31 Pa·m³/(mol·K) なら Pa と m³ です。数値が同じでも、Pa と L を混用すると1000倍の誤差になります。理想気体近似は低圧で、液化から十分離れた温度でよく成り立ちます。
例題:全圧から水蒸気の寄与を引く

架空の平衡データで、300 K、体積2.493 L の気相の全圧は103.5 kPa、水蒸気の分圧は3.5 kPaだった。残りは水に溶けず反応しない気体 A とし、その物質量を求めよ。R = 8.31 kPa·L/(mol·K)、理想気体とする。

解答・解説

まず A の分圧は103.5 − 3.5 = 100.0 kPa。したがって n = 100.0 × 2.493 ÷ (8.31 × 300) = **0.100 mol**。全圧をそのまま使った0.1035 molは、水蒸気も含めた気相全体の物質量である。

沸点と濃度:「何を一定に数えるか」を見分ける

沸騰とは液体内部の気泡が外圧に押しつぶされず成長できる状態です。純液体では蒸気圧が外圧に達する温度が沸点なので、高地で外圧が低いと水は100 ℃未満で沸騰します。非揮発性溶質を含む理想溶液では、混合によって溶媒が気相へ出る傾向が弱まり、同温度での蒸気圧が下がります。同じ外圧に達するにはより高い温度が必要になる、というのが沸点上昇のつながりです。

濃度分母使いどころと注意
質量モル濃度 m溶媒の質量 kg凝固点降下・沸点上昇。溶液の質量ではない
モル濃度 c溶液全体の体積 L浸透圧。体積は温度で変化しうる
モル分率 x混合物中の総物質量 mol分圧・理想溶液の蒸気圧。無次元
ΔT = km は非電解質の希薄溶液での近似です。凝固点降下では溶媒だけが結晶として析出すると仮定します。「非揮発性」と「非電解質」は別の条件で、前者は気相へ出にくいこと、後者はイオンへ電離・解離しないことを表します。また、凝固点が下がるのと沸点が上がるのとで ΔT の符号の読み方を取り違えないようにします。
例題:同じ溶液でも m と c は別々に求める

非電解質の溶質0.0200 molを水0.200 kgに含む溶液の全体積が0.210 Lである。質量モル濃度、モル濃度、凝固点降下を求めよ。凝固点降下定数を1.86 K·kg/molとし、希薄溶液近似を用いる。

解答・解説

m = 0.0200/0.200 = **0.100 mol/kg**。c = 0.0200/0.210 ≈ **0.0952 mol/L**。凝固点降下は1.86 × 0.100 = **0.186 K**で、純水の凝固点を0 ℃とすれば約−0.186 ℃。cを凝固点降下の式に代入してはいけない。

解答つき練習:条件と分母を先に選ぶ
  1. 物質量一定の理想気体を、体積一定のまま300 Kから330 Kにした。初めの圧力が100 kPaなら後の圧力は?

    解答・解説

    **110 kPa**。p/T が一定なので100 × 330/300。摂氏温度の比ではない。

  2. 理想混合気体で窒素0.30 mol、酸素0.10 mol、全圧120 kPaとする。酸素の分圧は?

    解答・解説

    **30 kPa**。酸素のモル分率は0.10/(0.30 + 0.10) = 0.25なので、120 × 0.25。質量割合ではなく粒子数の割合を使う。

  3. 同じ外圧で、純水と非揮発性非電解質の希薄水溶液を比べる。沸点が高いのはどちらか。また、水0.500 kgに溶質0.0500 molを含む場合、沸点上昇は何 Kか。定数を0.512 K·kg/molとする。

    解答・解説

    **水溶液**。同温度で蒸気圧が低いので外圧に達するまで高温が必要。m = 0.0500/0.500 = 0.100 mol/kgより、上昇は **0.0512 K**。

確認クイズ:気体と溶液の条件

問1. 液体の水が残った密閉容器の気液平衡で、水蒸気の分圧を決める主な条件は?

問2. 凝固点降下の式で使う質量モル濃度の分母は?

問3. 同温度の理想混合気体で、分圧の比に等しいものは?

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