条件付き確率とベイズの定理

情報で確率を更新する条件付き確率から、乗法定理・独立・ベイズの定理と偽陽性問題へ。

この単元の目標
  • 条件付き確率の定義に従って確率を計算できる
  • 乗法定理と独立の定義を正しく区別して使える
  • ベイズの定理を導出し、検査の偽陽性などの実問題に適用できる
📑 目次
  1. 条件付き確率の定義
  2. 乗法定理と独立
  3. ベイズの定理
  4. 練習問題
  5. 確認クイズ

条件付き確率の定義

「B が起こった」という情報を得たあとで A の確率を考え直すのが条件付き確率です。情報によって全事象が U から B へ縮むため、分母を P(B)P(B) に取り替えた形が定義になります。確率の見直しという視点は、このあとのベイズ更新の土台になります。

P(A∣B)=P(A∩B)P(B)(P(B)>0)P(A \mid B) = \dfrac{P(A \cap B)}{P(B)} \qquad (P(B) > 0)
記号意味
P(A∣B)P(A \mid B)B が起こったとわかった条件下での A の確率
P(A∩B)P(A \cap B)A と B がともに起こる確率
P(Ac)P(A^c)A が起こらない確率(余事象)

乗法定理と独立

条件付き確率の定義を変形すると、共通部分を「一方の確率 × 条件付き確率」で書く乗法定理が得られます。独立とは、片方の結果を知ってももう片方の確率が変わらないことを式にした概念です。独立と排反(同時に起こらない)は全く別の概念なので、混同しないよう注意しましょう。

P(A∩B)=P(B) P(A∣B)=P(A) P(B∣A),A,B 独立  ⟺  P(A∩B)=P(A) P(B)P(A \cap B) = P(B)\,P(A \mid B) = P(A)\,P(B \mid A), \qquad A, B \text{ 独立} \iff P(A \cap B) = P(A)\,P(B)

ベイズの定理

🔍 ベイズの定理の導出

  1. 乗法定理を2つの順序で書く
    P(A∩B)=P(B) P(A∣B)=P(A) P(B∣A)P(A \cap B) = P(B)\,P(A \mid B) = P(A)\,P(B \mid A)

    同じ共通部分の確率を、条件の向きを変えて2通りで表した等式

  2. P(A|B) について整理
    P(A∣B)=P(A) P(B∣A)P(B)P(A \mid B) = \dfrac{P(A)\,P(B \mid A)}{P(B)}

    右辺の P(A)P(A) は事前確率、左辺は情報 B を得たあとの事後確率と呼ぶ

  3. 分母を全確率の公式で展開
    P(B)=P(B∣A) P(A)+P(B∣Ac) P(Ac)P(B) = P(B \mid A)\,P(A) + P(B \mid A^c)\,P(A^c)

    原因が A と余事象に完全分割されるとき、直接測れない P(B)P(B) を組み立てられる

ベイズの定理が威力を発揮するのが「珍しい事象を検出する問題」です。検査の精度が高くても、対象の病気の保有率(事前確率)が低いと、陽性判定の多くは誤判定になります。これを偽陽性のパラドックスと呼び、数式で確認しないと直感と大きく食い違うことで知られています。

例題: 検査の偽陽性問題

ある病気の保有率は 1%。検査は病気の人を 99% の確率で陽性と判定し、健康な人を 5% の確率で誤って陽性とする。陽性判定を受けた人が実際に病気を持っている確率を求めよ。

解答・解説

D を保有、T を陽性判定とする。全確率の公式より P(T)=0.99×0.01+0.05×0.99=0.0594P(T) = 0.99 \times 0.01 + 0.05 \times 0.99 = 0.0594。ベイズより P(D∣T)=0.00990.0594=P(D \mid T) = \dfrac{0.0099}{0.0594} = **16\dfrac{1}{6}** (約 16.7%)

練習問題

練習問題
  1. サイコロを 1 個投げて、出た目が偶数だとわかった。このとき目が 4 以上である確率を求めよ。

    ヒント

    条件によって全事象が {2, 4, 6} に縮む。

    解答・解説

    **23\dfrac{2}{3}**

  2. 白玉 3 個と黒玉 2 個が入った袋から、各玉を等確率で1個ずつ、戻さずに取り出す。1 個目が白だったとき、2 個目も白である確率を求めよ。

    ヒント

    1 個目を白とした時点で、袋には白 2 黒 2 が残る。

    解答・解説

    24=\dfrac{2}{4} = **12\dfrac{1}{2}**

  3. ある地域で雨の日の割合は 20%。電車の遅延は雨の日に 30%、雨でない日に 10% 起こる。遅延が発生した日が雨の日だった確率を求めよ。(発展)

    ヒント

    全確率の公式で、遅延が起こる確率を先に組み立てる。

    解答・解説

    P(T)=0.3×0.2+0.1×0.8=0.14P(T) = 0.3 \times 0.2 + 0.1 \times 0.8 = 0.14、P(R∣T)=0.060.14=P(R \mid T) = \dfrac{0.06}{0.14} = **37\dfrac{3}{7}**

確認クイズ

確認クイズ

問1. P(A∩B)=0.2P(A \cap B) = 0.2、P(B)=0.5P(B) = 0.5 のとき P(A∣B)P(A \mid B) の値は?

問2. A と B が独立であることの正しい定義はどれか。

問3. 有病率がさらに低い集団で同じ精度の検査を行うと、陽性的中率はどうなるか。

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