万有引力と惑星の運動

万有引力からケプラーの法則・衛星の軌道・宇宙速度・重力位置エネルギーまでを導く。

この単元の目標
  • 万有引力と重力の関係(GM = gR²)を使いこなせる
  • ケプラーの第3法則を万有引力と向心力から導き、軌道計算に使える
  • 重力位置エネルギーと脱出速度を扱える
📑 目次
  1. 万有引力の法則
  2. 円軌道の運動
  3. 宇宙速度と力学的エネルギー

万有引力の法則

すべての物体のあいだにはたらく引力の大きさは、2つの質量の積に比例し、距離の2乗に反比例します。これがニュートンの万有引力の法則で、リンゴが地上に落ちるのも月が地球のまわりをまわるのも、同じ引力で説明できます。比例定数 G は物体の種類によらない普遍定数です。

F=GMmr2,G=6.67×10−11  N⋅m2/kg2F = G\frac{Mm}{r^2}, \qquad G = 6.67 \times 10^{-11}\;\text{N}\cdot\text{m}^2/\text{kg}^2
この式は質点間、または球対称な天体どうしが重ならない場合に使い、r は中心間距離です。以下の軌道計算では中心天体を球対称、周回する物体の質量 m を M より十分小さいとし、他天体の影響・大気抵抗・中心天体の自転を無視します。GM = gR² の g は自転の遠心効果を含まない地表の重力加速度です。
ケプラーの法則内容力学から見た意味
第1法則(楕円軌道の法則)惑星は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を描く引力が距離の逆二乗であることの証拠
第2法則(面積速度の法則)太陽と惑星を結ぶ直線は等しい時間に等しい面積を掃く中心方向の力だけではたらくので角運動量が保存する
第3法則(調和の法則)公転周期の2乗は軌道長半径の3乗に比例(T² ∝ a³)万有引力が向心力になることから導ける(下参照)

円軌道の運動

円軌道では万有引力がそのまま向心力になります。「引力 = 向心力」という1本の運動方程式を立てるだけで、軌道の速さ・周期・中心天体の質量がすべて決まります。地表の重力加速度 g も同じ式の特別な場合(r = 地球半径 R)なので、G と g は GM = gR² で結ばれます。この置き換えで G の値を使わずに計算できるようになるのが定石です。

🔍 ケプラーの第3法則 T² ∝ r³ の導出

  1. Step 1: 万有引力が向心力としてはたらく
    GMmr2=mv2rG\frac{Mm}{r^2} = \frac{mv^2}{r}

    M: 中心天体の質量、m: 惑星の質量、r: 軌道半径。両辺の m は約分されて消える——つまり軌道のようすは惑星自身の質量によらず、中心天体だけで決まります。

  2. Step 2: 速さを周期で書き換える
    v=2πrT⇒v2r=4π2rT2v = \frac{2\pi r}{T} \quad\Rightarrow\quad \frac{v^2}{r} = \frac{4\pi^2 r}{T^2}

    1周期 T のあいだに周長 2πr を1まわる、というだけの幾何の関係です。

  3. Step 3: 整理する
    GMr2=4π2rT2⇒T2=4π2GM r3\frac{GM}{r^2} = \frac{4\pi^2 r}{T^2} \quad\Rightarrow\quad T^2 = \frac{4\pi^2}{GM}\,r^3

    右辺の係数 4π²/(GM) は中心天体の質量だけで決まる定数。どの惑星についても同じ値になります。

  4. Step 4: 法則として読み替える
    T2r3=4π2GM=一定\frac{T^2}{r^3} = \frac{4\pi^2}{GM} = \text{一定}

    距離の逆二乗則だからこそ周期の2乗と半径の3乗の比例が出ます。衛星なら M を地球の質量に読み替えれば、r と T の観測から地球の質量を測定できます。

宇宙速度と力学的エネルギー

地表すれすれの円軌道の速さを第一宇宙速度と呼びます。一方、無限遠に到達できるために必要な速さが脱出速度(第二宇宙速度)です。重力位置エネルギーは無限遠を基準にとると負の値になり、全力学的エネルギーが負のままでは天体は束縛された軌道から逃げられません。

U=−GMmr,E=12mv2−GMmr,v脱=2GMrU = -\frac{GMm}{r}, \qquad E = \frac{1}{2}mv^2 - \frac{GMm}{r}, \qquad v_{\text{脱}} = \sqrt{\frac{2GM}{r}}
例題

地球の半径を R = 6400 km、地表の重力加速度を g = 9.8 m/s² として、地表近くをまわる人工衛星の速さと脱出速度を求めよ。

解答・解説

**GM = gR²** を使う。円軌道: v=gR=9.8×6.4×106≈7.9×103v = \sqrt{gR} = \sqrt{9.8 \times 6.4 \times 10^6} \approx 7.9 \times 10^3 m/s。脱出速度: v脱=2gR≈1.1×104v_{\text{脱}} = \sqrt{2gR} \approx 1.1 \times 10^4 m/s

練習問題
  1. 地球とある惑星を、太陽のまわりを円軌道でまわる質量の小さい物体とみなす。惑星の軌道半径が地球の 4 倍なら公転周期は何倍か。

    ヒント

    ケプラーの第3法則 T2∝r3T^2 \propto r^3

    解答・解説

    T∝r3/2T \propto r^{3/2} より 43/2=4^{3/2} = **8 倍**。

  2. 半径 r の円軌道を周期 T でまわる衛星の観測から、中心惑星の質量 M を表せ。

    ヒント

    第3法則の導出結果 T2=4π2r3/(GM)T^2 = 4\pi^2 r^3 / (GM)

    解答・解説

    M=4π2r3GT2M = \dfrac{4\pi^2 r^3}{G T^2}。木星の衛星イオのデータ(r ≈ 4.22×10⁸ m、T ≈ 1.77 日)に代入すると約 1.9×10²⁷ kg となります。

  3. 半径 2R(地表から高さ R)の円軌道の衛星の周期は、地表近くの円軌道の周期の何倍か。

    解答・解説

    T∝r3/2T \propto r^{3/2} より 23/2≈2^{3/2} \approx **2.83 倍**。

確認クイズ(万有引力)

問1. 2つの天体の中心間距離を 3 倍にすると、万有引力は何倍になるか。

問2. 惑星が近日点(太陽に最も近い点)で速く、遠日点で遅く動くのはなぜか。

問3. 全力学的エネルギー E = K + U が負ということはどういう意味か。

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