剛体のつり合いと重心
力のモーメント、つり合いの2条件、重心の求め方をはりや棒の問題で習得する。
- 力のモーメントを計算し、回転のつり合いの式を立てられる
- つり合いの2条件(合力 0、モーメントの和 0)で未知の力を求められる
- 重心の意味を説明し、その位置を計算できる
合力がゼロでも回転できるのはなぜか
ふたをひねる指のように、離れた場所を逆向きに押すと、物体の中心を動かさず回そうとできます。等しい大きさで逆向きの平行な二力を偶力といい、作用線が離れていると合力は 0 でもモーメントは残ります。静止を保つには並進と回転を別々に止める必要があるのです。
力を加える点までの距離 r をそのまま腕にできるのは力が半径方向に垂直なときだけです。斜めに引くなら力の垂直成分を取るか、作用線までの最短距離を使います。偶力の場合、作用線の間隔を d とすればモーメントの大きさは Fd で、基準点を変えても同じです。
長さ 2.0 m、重さ 100 N の一様な棒を、左端の摩擦のないヒンジと右端のひもで水平に支える。ひもは右端から左上へ、棒と 30° をなす。ひもの張力とヒンジの力を求めよ。
解答・解説
左端まわりで 2.0T sin30° = 100×1.0 より T = 100 N。ひもの成分は左へ 50√3 N、上へ 50 N。力のつり合いからヒンジは右へ 50√3 N(約 86.6 N)、上へ 50 N を及ぼす。水平成分は左端まわりのモーメントを作らない。
幅 0.60 m、高さ 1.0 m、重さ 200 N の一様な直方体を水平床に置く。上端を幅 0.60 m の方向へ水平に押す力を、静止状態からゆっくり増やす。奥行き方向へのねじれはなく、摩擦が十分大きく滑らないとすると、転倒し始める力は。
解答・解説
転倒直前は押す側と反対の底の端が支点になる。重力の腕は幅の半分 0.30 m、押す力の腕は 1.0 m。F×1.0 = 200×0.30 より 60 N。このときに滑らないという条件付きであり、摩擦が小さければ先に滑る。静止摩擦係数を μs とすると、滑り出しの限界は μs×200 N。μs > 0.30 なら転倒が先に始まり、μs = 0.30 では滑り出しと転倒の限界が一致する。
支持範囲と重心の関係
重心の鉛直下が底面の内側にあれば、重力は転倒端の内側に戻すモーメントを作れます。傾けて重心の鉛直下が底面の外に出ると、重力がさらに倒す向きになります。重心が低く底面が広い物体ほど倒れにくい理由を、見かけの形だけでなく作用線で説明できます。
支点から 0.40 m の点に、支点からその点へ向かう線と 30° をなす 10 N の力を加える。モーメントの大きさは。
解答・解説
0.40×10×sin30° = 2.0 N·m。腕は 0.40 m ではなく 0.20 m。
大きさ 8.0 N の互いに逆向きの平行な二力の作用線が 0.30 m 離れている。合力と偶力のモーメントの大きさは。
解答・解説
合力は 0 N、モーメントは 8.0×0.30 = 2.4 N·m。一方の作用線上を基準点にすると、他方の力だけで計算できる。
長さ 2.0 m、質量 2.0 kg の一様な棒の右端に 1.0 kg のおもりをつける。左端から測った全体の重心は。
解答・解説
(2.0×1.0+1.0×2.0)/(2.0+1.0) = 4/3 m(約 1.33 m)。棒の全質量は中央の 1.0 m にあると置き換える。
力のモーメント
ドアはヒンジの近くより、ヒンジから遠い取っ手を押すほうが小さい力で開きます。物体を回そうとする効果は、力の大きさと、支点から力の作用線までの垂直距離(腕の長さ)の積で決まります。これが力のモーメントで、単位は N·m。以下では平面内の静止した剛体のつり合いを考え、時計まわり・反時計まわりで符号を区別します。
| つり合いの条件 | 式 | 運動で言い換えると |
|---|---|---|
| 並進のつり合い | 重心が静止または等速直線運動を続ける | |
| 回転のつり合い | 初めに静止している剛体が回転し始めない(合力も 0 のとき基準点は任意) |
重心
物体の各部分に働く重力は無数の平行な力ですが、それらをひとつの合力で置き換えたときの作用点を重心といいます。均質で形が対称な物体では幾何学的な中心に一致します。つり合い問題では「全重量が重心にかかる1本の力」と置き換えることで、計算がぐっと簡単になります。
🔍 重心の位置の導出——なぜ「質量で加重平均」なのか
- Step 1: 重力を1本の合力に置き換える
座標 x₁ にある m₁ と x₂ にある m₂ を、1点 x_G にかかる全重量で代表させます。
- Step 2: 任意の点 O のまわりでモーメントを等置
合力のモーメント = 各力のモーメントの和、が成り立つ点——これが重心の定義そのものです。
- Step 3: g で割って整理
- Step 4: 多くの質点へ拡張
質量を重みとした平均位置です。均一な棒なら真ん中、棒とおもりを組み合わせた物体でも各部分の重心座標で同じ式が使えます。
長さ 4 m、重さ 200 N の均一なはりを両端 A、B で支えている。A 端から 1 m の位置に 300 N の荷物を吊るしたとき、A、B それぞれがはりを支える力を求めよ。
解答・解説
はりの重心は中央(B から 2 m)、荷物は B から 3 m。B のまわりのモーメントのつり合い: より N。鉛直方向のつり合いから N
重さ W、長さ l の均一な棒の一端を小さな支点で下から支え、他端を鉛直のひもで吊って水平に静止させる。他の接触はないとき、ひもの張力を求めよ。
ヒント
下から支えた端のまわりのモーメントを考える
解答・解説
より ****(残りの半分は支点が支える)。
ヒンジから 0.80 m の取っ手に垂直な方向 15 N の力で押すとドアが開き始めた。ヒンジのまわりに必要なモーメントはいくらか。また取っ手が 0.50 m の位置にしかないドアなら、同じモーメントを得るには何 N 必要か。
解答・解説
**12 N·m**。取っ手が 0.50 m なら **24 N**。
長さ 4 m の軽い棒の一端に質量 2 kg、他端に質量 6 kg のおもりをつけた。重心は 2 kg のおもりから何 m の位置か。
解答・解説
**3.0 m**(重い側に寄る)。
問1. 力のモーメントの単位はどれか。
問2. 剛体がつり合っているための条件として正しいのはどれか。
問3. 不倒翁(倒しても起き上がるおもちゃ)が元に戻るのはなぜか。