運動量と力積

力積=運動量変化、衝突における運動量保存則を学ぶ。

この単元の目標
  • 力積と運動量の関係を使える
  • 衝突問題を運動量保存則で解ける
📑 目次
  1. 止める時間と、二物体をまとめる意味
  2. 力積と運動量
  3. 運動量保存則
  4. 反発係数とエネルギーの区別

止める時間と、二物体をまとめる意味

同じボールを受け止めるとき、手を少し引きながら受けると平均の力が小さくなるのはなぜでしょう。止まるまでの速度変化は同じでも、それを長い時間に分けられるからです。一定質量では ma = F の両辺に時間を掛けた mΔv = F平均Δt が、この直感を数量化します。

二台の台車が押し合う場面をまとめて一つの「系」と見ると、台車どうしの力は作用反作用で常に相殺されます。各台車の運動量は変わっても、系全体の運動量を変えられるのは外部からの力積だけです。保存則を使う前に、どの物体まで系に入れるかを言葉で指定します。

Δp⃗1=I⃗21+I⃗外,1,Δp⃗2=−I⃗21+I⃗外,2⇒ΔP⃗=I⃗外\Delta\vec p_1=\vec I_{21}+\vec I_{\text{外},1},\quad \Delta\vec p_2=-\vec I_{21}+\vec I_{\text{外},2}\quad\Rightarrow\quad\Delta\vec P=\vec I_{\text{外}}
作用反作用の力が相殺されるのは二物体をまとめた式の中だけです。一つの物体に二つとも描いてはいけません。また「衝突が短時間」でも外力の力積が十分小さいか確認が必要で、固定壁に当たる球だけの運動量は保存しません。
例題:受け止める時間を比較

質量 0.15 kg の球が右向き 8.0 m/s から静止した。水平方向の合力の平均を、停止時間が 0.020 s と 0.10 s の場合で比較せよ。

解答・解説

右を正として、どちらも I = 0.15(0−8.0) = −1.2 N·s。平均合力は順に −60 N、−12 N。停止時間が5倍なので力の大きさは1/5になる。比較しているのは最大の力ではなく平均である。

例題:静止していた二台が離れる

滑らかな水平面で、質量 1.0 kg の台車 A と 3.0 kg の台車 B が静止していた。間の軽いばねの作用で離れ、A は左向き 6.0 m/s となった。B の速度と全運動エネルギーを求めよ。

解答・解説

右を正にして初めの全運動量は 0。−1.0×6.0+3.0vB = 0 より B は右向き 2.0 m/s。運動エネルギーは 18+6 = 24 J。初めは 0 J だったが、ばねの位置エネルギーが変換されたので運動量保存と矛盾しない。

保存する向きを選ぶ

運動量保存はベクトルの式です。水平な台の上の衝突なら鉛直方向に重力・垂直抗力があっても、水平外力の力積が無視できれば水平方向について保存則を使えます。符号を決める→衝突前後の質量×速度を並べる→外力の条件を確認する、の順に整理しましょう。

練習:系と力積を選び直す
  1. 質量 0.40 kg の物体に右向きの力積 1.2 N·s が加わった。初速度が左向き 1.0 m/s なら終速度は。

    解答・解説

    右を正として 0.40v−0.40(−1.0) = 1.2。v = 2.0 m/s、右向き。初めの運動量が負であることに注意。

  2. 質量 2.0 kg、右向き 4.0 m/s の台車と、質量 2.0 kg、左向き 2.0 m/s の台車が一体になった。水平外力の力積を無視して終速度を求めよ。

    解答・解説

    右を正として全運動量は 8−4 = 4 kg·m/s。全質量 4.0 kg で割って右向き 1.0 m/s。速さの平均でなく符号つき速度を使う。

  3. 水平合力が最初の 0.20 s は +6.0 N、次の 0.10 s は −4.0 N。全力積と、質量 0.20 kg の物体の速度変化を求めよ。

    解答・解説

    I = 6.0×0.20−4.0×0.10 = +0.80 N·s。Δv = I/m = +4.0 m/s。F–t グラフの負の面積は引く。

力積と運動量

I⃗=∫t0t1F⃗ dt=mv⃗1−mv⃗0\vec{I} = \int_{t_0}^{t_1} \vec{F}\,dt = m\vec{v}_1 - m\vec{v}_0

力積 = 運動量の変化。質量が一定の物体に働く合力 F を考えます。一定の力なら I = FΔt、時間変化する力なら F–t グラフの符号つき面積が力積です。負の領域の面積は引き、単位は N·s = kg·m/s。速度も力積も向きをもつので、まず正方向を決めましょう。

運動量保存則

m1v1+m2v2=m1v1′+m2v2′m_1 v_1 + m_2 v_2 = m_1 v_1' + m_2 v_2'

系全体に働く外力の力積が 0 なら、全運動量は保存します。短時間の衝突では外力の力積を無視できる場合もあります。上の式は一直線上の運動で、v は符号つきの速度です。弾性衝突では衝突前後の運動エネルギーも保存しますが、くっつく衝突では運動量が保存しても運動エネルギーの一部が熱や変形に変わります。

例題

質量 m の球Aが速さ v で静止した質量 m の球Bに正面衝突し、完全弾性衝突した。衝突後の両者の速さを求めよ。

解答・解説

衝突中の外力の力積を無視する。運動量保存:v=vA′+vB′v = v_A' + v_B'、弾性条件:v2=vA′2+vB′2v^2 = {v_A'}^2 + {v_B'}^2。衝突後に互いに離れる解を選び、**vA′=0v_A' = 0, vB′=vv_B' = v**(同質量の正面弾性衝突では速度が入れ替わる)。

反発係数とエネルギーの区別

一直線上で左の A が右の B に追いつく衝突(v_A > v_B)では、反発係数 e は「離れる相対速度 ÷ 近づく相対速度」です。通常の衝突では 0 ≤ e ≤ 1。e = 1 は弾性衝突、e = 0 は衝突直後の速度が共通になる完全非弾性衝突を表します。運動量保存だけでは未知の速度が2つ残るので、この条件を組み合わせます。

e=vB′−vA′vA−vBe = \frac{v_B' - v_A'}{v_A - v_B}
例題:くっつく衝突

滑らかな水平面上で、質量 2.0 kg、右向き 3.0 m/s の台車が、静止した質量 1.0 kg の台車に衝突して一体になった。衝突後の速度と運動エネルギーの減少を求めよ。

解答・解説

右向きを正にして 2.0×3.0=(2.0+1.0)V2.0\times3.0=(2.0+1.0)V より V=2.0V=2.0 m/s(右向き)。衝突前は Ki=12×2.0×3.02=9.0K_i=\tfrac12\times2.0\times3.0^2=9.0 J、後は Kf=12×3.0×2.02=6.0K_f=\tfrac12\times3.0\times2.0^2=6.0 J。減少量は **3.0 J**。このエネルギーは消えたのでなく熱や変形などに変わった。

練習問題:向きと保存条件を確認
  1. 質量 0.20 kg の球が右向き 5.0 m/s で壁に当たり、左向き 3.0 m/s ではね返った。壁から受ける水平方向の力積と、接触時間 0.010 s の間の平均の力を求めよ。

    解答・解説

    右を正にすると I=0.20(−3.0−5.0)=−1.6I=0.20(-3.0-5.0)=-1.6 N·s。平均の力は I/Δt=−160I/\Delta t=-160 N。どちらも左向き。球単独では壁から外力の力積を受けるため運動量は保存しない。

  2. 質量が等しい A、B が滑らかな水平面上にある。右向き 6.0 m/s の A が静止した B に正面衝突する。反発係数 e = 0.50 のとき衝突後の速度を求めよ。

    解答・解説

    右を正にして vA′+vB′=6.0v_A'+v_B'=6.0、vB′−vA′=0.50×6.0=3.0v_B'-v_A'=0.50\times6.0=3.0。加減して **A は右向き 1.5 m/s、B は右向き 4.5 m/s**。B の方が速くなり、衝突後に離れる。

  3. 物体に働く合力の F–t グラフが、t = 0 で 0 N、0.10 s で 40 N、0.20 s で 0 N を結ぶ三角形である。この間の力積を求めよ。

    解答・解説

    面積から I=12×0.20×40=4.0I=\tfrac12\times0.20\times40=4.0 N·s。最大の力を全時間に掛けた 8.0 N·s ではない。

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