放物運動

水平投射・斜方投射を「水平方向の等速直線運動」と「鉛直方向の加速度運動」に分解して扱う。

この単元の目標
  • 放物運動を2つの独立な運動に分解できる
  • 射程・到達高さ・飛行時間を計算できる
  • 射程・飛行時間の公式の成立条件(発射点と着地点が同じ高さ)を説明できる
📑 目次
  1. 運動の分解
  2. 重要な結果
  3. 例題
  4. 練習問題
以下は空気抵抗を無視し、重力加速度 g が一定のモデルです。発射点を原点、水平右向きを x の正、鉛直上向きを y の正、発射時を t = 0 とします。初速の大きさは v₀、水平から上向きの発射角は θ です。

運動の分解

放物運動の鍵は、水平方向と鉛直方向を独立に考えること。水平方向は力を受けないので等速直線運動、鉛直方向は重力だけ受けるので初速 v₀sinθ の等加速度運動になります。重力は鉛直下向きなので水平運動に影響しない——これが「独立性」の根拠です。

x=v0cos⁡θ⋅t,y=v0sin⁡θ⋅t−12gt2x = v_0\cos\theta \cdot t, \qquad y = v_0\sin\theta \cdot t - \frac{1}{2}gt^2
方向運動の種類使う式
水平(x)等速直線運動(力 0)x=(v0cos⁡θ) tx = (v_0\cos\theta)\,t
鉛直(y)初速 v0sin⁡θv_0\sin\theta の等加速度運動y=(v0sin⁡θ) t−12gt2y = (v_0\sin\theta)\,t - \tfrac{1}{2}gt^2
vx=v0cos⁡θ,vy=v0sin⁡θ−gtv_x = v_0\cos\theta, \qquad v_y = v_0\sin\theta - gt
t = 0.00 s射程 R = 40.8 m / 最高高さ H = 10.2 m
頂点では水平速度のみ(v_y = 0)v·cosθ(一定)v·sinθ(毎秒 g ずつ減る)合成速度 v₀運動を「水平」と「鉛直」の独立な運動に分解する

緑が水平方向の速度(一定)、オレンジが鉛直方向の速度(重力 g = 9.8 m/s² で減少)。 水平方向は等速直線運動、鉛直方向は自由落下——この2つを独立に扱うのが放物運動のコツです。

プレイグラウンド: 初速と角度を変えて射程・最高高さの変化を見よう

重要な結果

表の飛行時間と射程は、発射点と着地点が同じ高さで、0° < θ ≤ 90° のときの式です。着地点が違う高さなら、その座標 y を鉛直方向の式に入れて着地時刻を求めます。一方、最高高さ H は発射点からの上昇量で、頂点まで妨げられずに上昇できれば着地点の高さによらず使えます。
量式導き方の要点
飛行時間t=2v0sin⁡θgt = \dfrac{2v_0\sin\theta}{g}着地点で y=0y = 0 を解く(t=0t = 0 は発射時)
射程R=v02sin⁡2θgR = \dfrac{{v_0}^2 \sin 2\theta}{g}R=(v0cos⁡θ) tR = (v_0\cos\theta)\,t に飛行時間を代入
最高高さH=v02sin⁡2θ2gH = \dfrac{{v_0}^2 \sin^2\theta}{2g}頂点で鉛直速度が 0 になる

🔍 射程 R = v₀² sin2θ / g の導出と「45° が最遠」の理由

  1. Step 1: 鉛直方向から飛行時間を出す
    0=v0sin⁡θ⋅t−12gt2⇒t=2v0sin⁡θg0 = v_0\sin\theta \cdot t - \frac{1}{2}gt^2 \quad\Rightarrow\quad t = \frac{2v_0\sin\theta}{g}

    地面に戻った瞬間 y = 0。t = 0(発射時)以外の解が着地の時刻です。ここで「発射点と着地点が同じ高さ」を使いました。

  2. Step 2: 水平方向に代入する
    R=(v0cos⁡θ) t=2v02sin⁡θcos⁡θg=v02sin⁡2θgR = (v_0\cos\theta)\,t = \frac{2{v_0}^2\sin\theta\cos\theta}{g} = \frac{{v_0}^2\sin 2\theta}{g}

    倍角公式 sin⁡2θ=2sin⁡θcos⁡θ\sin 2\theta = 2\sin\theta\cos\theta を使用。

  3. Step 3: 最大条件を調べる
    sin⁡2θ=1(2θ=90∘)⇒θ=45∘,Rmax⁡=v02g\sin 2\theta = 1 \quad (2\theta = 90^\circ) \quad\Rightarrow\quad \theta = 45^\circ, \quad R_{\max} = \frac{{v_0}^2}{g}

    sin は 1 が最大。射程が最大になるのは 45°、空気抵抗がなければ R=v02/gR = {v_0}^2/g まで飛びます。

初速の大きさが同じ・発射と着地が同じ高さ・空気抵抗なしなら、45° で射程が最大です。また θ と 90° − θ で sin⁡2θ\sin 2\theta が等しいので、30° と 60° の射程は同じ。ただし 60° の方が高く上がり、飛行時間も長くなります。

例題

例題1(斜方投射の基本)

初速 20 m/s、角度 30° で小球を打ち上げ、発射点と同じ高さに着地させた。飛行時間・射程・発射点からの最高高さを求めよ(g = 10 m/s²、空気抵抗は無視)。

解答・解説

v0x=20cos⁡30∘=103≈17.3v_{0x} = 20\cos 30^\circ = 10\sqrt{3} \approx 17.3 m/s、v0y=20sin⁡30∘=10v_{0y} = 20\sin 30^\circ = 10 m/s。飛行時間は t=2×1010=t = \dfrac{2 \times 10}{10} = **2.0 秒**、射程は R=103×2≈R = 10\sqrt{3} \times 2 \approx **35 m**(v02sin⁡60∘g=203\dfrac{{v_0}^2\sin 60^\circ}{g} = 20\sqrt{3} と一致)、最高高さは H=1022×10=H = \dfrac{10^2}{2 \times 10} = **5.0 m**。

例題2(水平投射——公式が使えないケース)

高さ 80 m のビルの屋上から、小球を水平方向に初速 50 m/s で投げた。地面に落ちるまでの時間と落下地点の水平距離、地面に達する直前の速さを求めよ(g = 10 m/s²、空気抵抗は無視)。

解答・解説

θ = 0 だが着地点の座標は y = −80 m。−80=−12×10×t2-80 = -\tfrac{1}{2} \times 10 \times t^2 より **t = 4.0 秒**。水平距離は x=50×4=x = 50 \times 4 = **200 m**。着地直前は vx=50v_x = 50 m/s、vy=−gt=−40v_y = -gt = -40 m/s なので、速さは v=502+(−40)2=4100≈v = \sqrt{50^2 + (-40)^2} = \sqrt{4100} \approx **64 m/s**。速度の符号と速さの大きさを区別しましょう。

練習問題

練習問題
  1. 初速 15 m/s、角度 45° で小球を打ち上げ、発射点と同じ高さに着地させた。飛行時間・射程・発射点からの最高高さを求めよ(g = 10 m/s²)。

    ヒント

    水平・鉛直の初速成分を分けて、飛行時間を先に求める

    解答・解説

    v0y=15/2v_{0y} = 15/\sqrt{2} m/s より t=3/2≈t = 3/\sqrt{2} \approx **2.1 秒**。射程は R=152/10=R = 15^2/10 = **22.5 m**。最高高さは H=(15/2)2/20=5.625≈H = (15/\sqrt{2})^2/20 = 5.625 \approx **5.6 m**。途中で丸めずに計算すると誤差が小さくなります。

  2. 高さ 45 m の塔の上から、小球を水平方向に初速 30 m/s で投げた。落下までの時間、水平距離、着地直前の速さを求めよ(g = 10 m/s²)。

    ヒント

    鉛直方向は初速 0 の落下。上向き正なので着地時の vy=−gtv_y = -gt を出してから水平速度と合成する

    解答・解説

    −45=−12×10×t2-45 = -\tfrac{1}{2} \times 10 \times t^2 より **t = 3.0 秒**、水平距離 x=30×3=x = 30 \times 3 = **90 m**。着地時 vy=−30v_y = -30 m/s なので v=302+(−30)2=302≈v = \sqrt{30^2 + (-30)^2} = 30\sqrt{2} \approx **42 m/s**(方向は水平から 45° 下方)。

  3. ある小球を地上から斜方投射したところ、最高点に達するまでに 1.2 秒かかった。初速の鉛直成分と最高到達高さを求めよ(g = 10 m/s²)。

    ヒント

    最高点では vy=0v_y = 0。v0y=gtmax⁡v_{0y} = gt_{\max} を使う

    解答・解説

    v0y=gt=10×1.2=v_{0y} = gt = 10 \times 1.2 = **12 m/s**、最高高さは H=v0y22g=14420=H = \dfrac{{v_{0y}}^2}{2g} = \dfrac{144}{20} = **7.2 m**。

確認クイズ(放物運動)

問1. 0° < θ < 90° の斜方投射で、最高点での物体の速度と加速度は?

問2. 初速の大きさ一定のとき、射程が最大になる発射角は?(空気抵抗なし・発射点と着地点は同じ高さ)

問3. 斜方投射の公式 R=v02sin⁡2θ/gR = v_0^2 \sin 2\theta / g がそのまま使えないのはどの場合?

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