物質の量(モル)

モルという「数の単位」を使って化学変化を量的に扱う。

この単元の目標
  • モルの概念を使い質量と粒子数を換算できる
  • 化学量論係数から反応の量的関係を計算できる
📑 目次
  1. なぜ粒子を「ひとまとめ」で数えるのか
  2. 換算をつなぐ例題:濃度と余る物質
  3. モルとは
  4. 化学変化の量的計算
  5. 練習問題

なぜ粒子を「ひとまとめ」で数えるのか

原子や分子は小さすぎて、料理の材料のように一つずつ数えられません。しかし反応では、粒子同士が決まった個数の比で組み合わされます。そこで「粒子の個数」と、はかりで測れる「質量」を結ぶ橋が必要です。卵を 1 ダース=12 個で数えるのと同じ発想で、決まった個数を 1 mol とまとめます。1 ダースの卵と鉛筆で重さが違うように、1 mol の物質の質量も物質ごとに違います。

知りたい量換算の考え方確認する単位
粒子数 N物質量 n にアボガドロ定数をかけるmol × mol⁻¹ → 個数
質量 m物質量 n にモル質量 M をかけるmol × g/mol → g
モル濃度 c溶質の物質量 n を溶液の体積 V で割るmol ÷ L → mol/L
N=nNA,m=nM,c=nVN=nN_{\mathrm A},\qquad m=nM,\qquad c=\frac{n}{V}

モル濃度は「溶液 1 L あたりに溶質が何 mol あるか」です。ここで V は水だけの体積ではなく、溶けたものを含む溶液全体の体積を L で表します。たとえば乗客 20 人の車両が 2 両なら 1 両あたり 10 人と割るように、総量を基準の大きさで割って比較できる量にします。粒子数の計算では以下、アボガドロ定数を 6.02 × 10²³ mol⁻¹ と近似します。

「水が 1 mol」と「水に含まれる水素原子が 1 mol」は別です。H₂O 分子 1 個に H 原子は 2 個あるため、水 1 mol 中の H 原子は 2 mol。反応式の係数は物質量の比であって質量の比ではありません。単位を消して数だけ扱う前に、何を数えているかを名前とともに書きましょう。

換算をつなぐ例題:濃度と余る物質

例題:質量からモル濃度へ

塩化ナトリウム 5.85 g を含む溶液の全体積が 500 mL である。モル質量を 58.5 g/mol として、溶質の物質量とモル濃度を求めよ。

解答・解説

まず n = 5.85 ÷ 58.5 = 0.100 mol。500 mL = 0.500 L なので c = 0.100 ÷ 0.500 = **0.200 mol/L**。500 のまま割ると mol/mL という別の単位になる。これは与えられた溶液データの計算であり、溶媒の体積から溶液体積を推測してはいけない。

例題:反応できる量は不足する側で決まる

机上の量的計算として、2H₂ + O₂ → 2H₂O を考える。H₂ が 3.0 mol、O₂ が 2.0 mol あり、副反応なく不足する物質を使い切るとする。できる水と残る酸素はそれぞれ何 mol か。

解答・解説

H₂ 3.0 mol に必要な O₂ は 3.0 × 1/2 = 1.5 mol。酸素は 2.0 mol あるので水素が先になくなる。水は 3.0 × 2/2 = **3.0 mol**、酸素の残りは 2.0 − 1.5 = **0.50 mol**。「全部の物質が使い切られる」とは限らず、係数比と実際の量を比較する。

追加練習:単位と数える対象
  1. 水 0.25 mol に含まれる水素原子は何 mol、約何個か。

    解答・解説

    H 原子は分子 1 個あたり 2 個なので 0.25 × 2 = **0.50 mol**。個数は 0.50 × 6.02 × 10²³ = **約 3.0 × 10²³ 個**。分子数そのものを答えない。

  2. 溶質 0.060 mol を含む溶液 300 mL のモル濃度を求めよ。

    解答・解説

    300 mL = 0.300 L。c = 0.060 ÷ 0.300 = **0.20 mol/L**。溶液 1 L あたりに直した値である。

  3. 2H₂ + O₂ → 2H₂O で H₂ 2.0 mol、O₂ 0.75 mol があり、不足する側が完全に反応するという計算上の条件では、水と残る水素は何 mol か。

    解答・解説

    O₂ 0.75 mol に必要な H₂ は 1.5 mol で、酸素が不足する。水は **1.5 mol**、水素の残りは 2.0 − 1.5 = **0.50 mol**。

確認クイズ:モルの使い分け

問1. 水 1 mol と二酸化炭素 1 mol で等しいのはどれか。

問2. モル濃度の分母として用いるのはどれか。

問3. 2H₂ + O₂ → 2H₂O の係数比が直接示すものはどれか。

モルとは

物質の量 n [mol]=質量 m [g]モル質量 M [g/mol]\text{物質の量 } n \,[\mathrm{mol}] = \frac{\text{質量 } m \,[\mathrm{g}]}{\text{モル質量 } M \,[\mathrm{g/mol}]}

1 mol は、指定した粒子を厳密に 6.02214076 × 10²³ 個含む物質量です。アボガドロ定数はこの数に単位 mol⁻¹ を付けたもので、計算では通常 6.02 × 10²³ mol⁻¹ と近似します。原子・分子・イオンのどれを数えるのかを明示しましょう。学校の計算では、モル質量 [g/mol] は原子量・分子量・式量と同じ数値として扱います。

例題

水 H₂O(分子量 18)36 g は何 mol ですか。また分子は何個ですか。

解答・解説

n=36÷18=2n = 36 \div 18 = 2 mol。分子数は 2×6.02×1023=1.2×10242 \times 6.02 \times 10^{23} = 1.2 \times 10^{24} 個。

化学変化の量的計算

係数の比=モル数の比。たとえば 2H2+O2→2H2O2H_2 + O_2 \rightarrow 2H_2O では、H₂ : O₂ : H₂O = 2 : 1 : 2 [mol] で反応します。

理想気体は 0 ℃・1 気圧(101325 Pa)で 1 mol あたり約 22.4 L です。実在気体には近似として使います。標準状態という語の圧力の定義には違いがあるため、温度と圧力を必ず確認します。液体や固体にはこの体積の関係は使えません。

練習問題

練習問題
  1. 二酸化炭素 CO₂(分子量 44)88 g は何 mol か。

    解答・解説

    n=88÷44=n = 88 \div 44 = **2 mol**

  2. 水素原子 H の原子量を 1 とするとき、水素分子 H₂ 0.5 mol の質量は何 g か。

    ヒント

    H₂ の分子量は 2。

    解答・解説

    m=nM=0.5×2=m = nM = 0.5 \times 2 = **1.0 g**

  3. メタン CH₄(分子量 16)16 g を完全燃焼させるとき(CH4+2O2→CO2+2H2O\text{CH}_4 + 2\text{O}_2 \rightarrow \text{CO}_2 + 2\text{H}_2\text{O})、必要な酸素は何 mol か。また発生する二酸化炭素の質量は何 g か。

    ヒント

    係数比=モル比。CH₄ : O₂ : CO₂ = 1 : 2 : 1。

    解答・解説

    CH₄ は 16/16=116/16 = 1 mol なので酸素は **2 mol**、CO₂ も 1 mol → 質量 1×44=1 \times 44 = **44 g**

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