エントロピーとギブズエネルギー
自発変化を全エントロピーとギブズエネルギーから判定し、標準状態と実際の状態を区別する。
- 第一法則・第二法則を区別して説明できる
- 一定温度・一定圧力での ΔG の判定条件を導ける
- 反応商を用いて標準状態以外での反応の向きを判定できる
二つの法則と符号の約束
- 第一法則: 閉じた系では ΔU = q + w。q は系が受け取る熱、w は外界が系にする仕事。膨張仕事は負になる。
- 第二法則: 系と外界を合わせた孤立全体系では ΔS全体 ≥ 0。不可逆変化で増加し、可逆変化では一定。系だけのエントロピーは減少してもよい。
- エントロピーは単なる見た目の乱雑さではなく、エネルギーの分配や取り得る微視的状態の数に関係する状態量。可逆経路では dS = δq可逆/T。
なぜ一定温度・一定圧力では ΔG を使えるのか
閉じた系が一定温度 T の熱浴と熱を交換し、一定圧力のもとで体積仕事だけを行う場合を考えます。始状態・終状態は同じ T、p にあるとします。温度は必ず絶対温度 K です。
🔍 第二法則からギブズエネルギーへの変換
- 定圧での熱の出入り
系が受け取った熱と同じ量だけ熱浴は失う。定圧熱とエンタルピー変化の等置は体積仕事だけの場合。
- 全体のエントロピーを足す
ここで ΔH と ΔS は系の変化。系の ΔS だけでは自発性を判定できない。
- G = H − TS を定義
一定 T、p で自発変化は G を減少させる方向。化学平衡では反応進行度に対する G の微分である反応ギブズエネルギー ΔrG が 0 となる。
| ΔH | ΔS | ΔG < 0 の条件(T > 0) |
|---|---|---|
| − | + | すべての温度 |
| − | − | T < ΔH/ΔS |
| + | + | T > ΔH/ΔS |
| + | − | 該当なし |
標準反応ギブズエネルギーと反応商
Q は各成分の無次元の活量から作る反応商です。平衡で Q = K、ΔrG = 0。Q < K なら正方向、Q > K なら逆方向へ進むと G が減ります。ΔrG° の符号だけでは任意の組成における向きは決まりません。
一定温度の純水と水蒸気を考える。水蒸気の分圧 p が飽和蒸気圧 p飽和 より小さいとき、蒸発の向きを化学ポテンシャルから説明せよ。気体は理想気体、液体の圧力依存性は無視する。
解答・解説
液体と飽和水蒸気は平衡なので μ液 = μ気(p飽和)。理想気体では μ気(p) − μ気(p飽和) = RT ln(p/p飽和)。したがって蒸発のモルギブズエネルギー変化は 。未飽和なら負なので蒸発が有利で、飽和なら正味の蒸発は止まる。常温での乾燥は温度だけでなく湿度にも依存する。熱浴から吸熱して温度を維持するという前提にも注意。
1 atm での氷の融解を考える。融解エンタルピーを 6.01 kJ/mol、融解エントロピーを 22.0 J/(mol·K) として一定と近似し、平衡温度と 280 K での ΔG を求めよ。
ヒント
エンタルピーを J/mol に揃える。
解答・解説
平衡では ΔG = 0 より T = 6010/22.0 = 約 273 K。280 K では ΔG = 6010 − 280×22.0 = −150 J/mol なので融解が有利。融点ちょうどでは固液が平衡であり、「0℃以上なら必ず融解」とは言えない。
ある状態変化で ΔH = −100 kJ/mol、ΔS = −200 J/(mol·K) とする。これらを一定として、自発になる温度の条件を求めよ。
解答・解説
ΔS = −0.200 kJ/(mol·K) なので ΔG = −100 + 0.200T < 0。したがって **0 < T < 500 K**。500 K では ΔG = 0。この判定は一定 T、p、体積仕事のみという条件下でのもの。
298 K で ΔrG° = +5.70 kJ/mol、Q = 0.0100 とする。R = 8.314 J/(mol·K) として ΔrG と K を求め、正方向が有利か判定せよ。
解答・解説
ΔrG = 5700 + 8.314×298×ln(0.0100) = 約 −5710 J/mol = −5.71 kJ/mol。K = exp(−5700/(8.314×298)) = 約 0.100。Q < K なので正方向が有利。標準値が正でも、実際の組成では反応が正方向に進み得る。