減衰振動と強制振動——三つの減衰領域と共振条件
速度に比例する抵抗を持つ振動子を微分方程式で解き、不足減衰・臨界減衰・過減衰を分類する。さらに変位振幅と吸収電力では共振周波数が異なることを導く。
- 運動方程式から減衰率・固有角振動数・減衰比を定義し、単位を説明できる。
- 特性方程式の根から三つの減衰領域を判定し、初期条件を使って自由応答を求められる。
- 強制振動の過渡応答と定常応答を区別し、定常振幅と位相遅れを計算できる。
- 変位振幅が最大になる条件と、平均吸収電力が最大になる条件を区別できる。
📑 目次
1.復元力だけでなく、エネルギーを奪う力を入れる
理想的な単振動では振幅は変わりません。しかし実際の振動子では、周囲への散逸により自由振動が弱まります。ここでは平衡位置からの変位xに比例する復元力と、速度に比例して逆向きに働く粘性抵抗を持つ、1自由度の線形モデルを扱います。外力を加えない自由応答と、周期的な外力で振動を維持する強制応答を同じ式から調べます。
| 記号 | 意味 | SI単位 |
|---|---|---|
| m、k | 質量、ばね定数 | kg、N/m |
| b | 粘性抵抗の係数(抵抗力は−b dx/dt) | N·s/m = kg/s |
| x、t | 静的平衡位置からの変位、時刻 | m、s |
| F₀、Ω | 外力の振幅、駆動角振動数 | N、rad/s |
2.自由応答を決める特性方程式
ω₀は抵抗がないときの固有角振動数、γは減衰率(s⁻¹)、ζは無次元の減衰比です。外力を0にすると、質量で割った式は「加速度 + 2γ×速度 + ω₀²×変位 = 0」。γではなく2γが速度項の係数である点に注意します。指数関数を代入すると、2階微分方程式が2次方程式へ変わります。
🔍 指数関数の根で運動を分類する
- 指数関数を仮定
微分するたびにrが掛かるため、微分方程式が代数方程式になる。rの単位はs⁻¹。
- 二つの根
平方根の中が負なら複素共役根、0なら重根、正なら異なる実根になる。
- 実数の変位として書き直す
C、Dは各行ごとに初期変位と初速度で決まる定数。臨界減衰のDだけは単位がm/sで、他の行ではm。
| 分類 | 条件 | 自由応答の特徴 |
|---|---|---|
| 不足減衰 | 0 < ζ < 1 | 包絡線が指数的に減少しながら角振動数ωdで振動する |
| 臨界減衰 | ζ = 1、b = 2√(mk) | 重根に対応するtの項を含む。周期的な振動はしない |
| 過減衰 | ζ > 1 | 二つの負の実指数の和。周期的な振動はしない |
| 無減衰(境界例) | ζ = 0 | ωd = ω₀、振幅一定の自由振動 |
3.初期条件と減衰する振幅を計算する
m = 1.0 kg、k = 25 N/m、b = 6.0 N·s/m。外力はなく、x(0) = 0.10 m、初速度は0。減衰の種類、変位x(t)、減衰振動の周期を求めよ。
解答・解説
ω₀ = 5 rad/s、γ = 3 s⁻¹、ζ = 0.60なので**不足減衰**。ωd = √(25 − 9) = 4 rad/s。初期変位からC = 0.10 m、初速度は−γC + ωdD = 0なのでD = 0.075 m。tを秒の数値として書くと、。周期は 。包絡線の係数は√(0.10² + 0.075²) = 0.125 mで、初期変位そのものとは異なります。
m = 1 kg、k = 4 N/m、x(0) = 0.10 m、初速度0、外力0とする。b = 4 N·s/mとb = 5 N·s/mの自由応答を求めよ。
解答・解説
前者はω₀ = 2 rad/s、γ = 2 s⁻¹で臨界減衰。初期条件より 。後者はγ = 2.5 s⁻¹で過減衰、根は−1、−4 s⁻¹。C + D = 0.10、−C − 4D = 0より 。ここではtを秒の数値とした。過減衰には遅い減衰因子e⁻ᵗが残り、長時間では臨界減衰より戻りが遅い。bを大きくするほど早く戻るわけではありません。
4.自由振動のエネルギーはどう減るか
🔍 運動方程式に速度を掛ける
- 力学的エネルギー
復元力が線形なので、ばねの位置エネルギーはkx²/2。
- 外力のない場合の変化率
これは厳密な散逸則。単位はWであり、抵抗がエネルギーを供給することはない。
不足減衰の振幅包絡線は厳密にe⁻ᵞᵗに比例しますが、瞬間のエネルギーは一般に単純な指数関数ではありません。弱い減衰γ ≪ ω₀で1周期の間に包絡線がほとんど変わらなければ、周期平均エネルギーをおよそe⁻²ᵞᵗに比例するとみなせます。包絡線の時定数1/γと平均エネルギーの時定数1/(2γ)を区別しましょう。
5.強制振動:過渡応答が消えたあと
ここからはb > 0、F₀ > 0とします。全体の解は自由応答と定常応答の和です。自由応答は初期条件を満たす役割を持ち、時間が十分たつと消えます。残る定常応答の角振動数は、自由振動のωdではなく外力のΩです。以下はm、b、kと外力振幅F₀を一定に保ち、Ωだけを変えた比較です。
🔍 振幅と位相を一緒に求める
- 複素振幅を用いる
微分をiΩの掛け算に置き換え、最後に実部を取る。
- 絶対値と偏角
Ω > 0なら0 < δ < π。atan2(y,x)は点(x,y)の偏角。tan δだけでは象限が決まらない。Ω = 0ではδ = 0。
Ω → 0ではA → F₀/kとなり、ばねをゆっくり引いたときの静的変位に一致します。Ω = ω₀ではばねと慣性の項が相殺し、変位は外力よりπ/2遅れます。Ωが非常に大きいとA ≈ F₀/(mΩ²)、δ → πとなります。これらの極限は式の符号を点検する方法にもなります。
6.何を最大にするかで共振条件が変わる
🔍 変位振幅のピークを微分で探す
- 分母の2乗を最小にする
分子一定なので、Aの最大はDの最小に対応する。
- 停留点
Ω ≥ 0で調べる。Ω = 0という端点も忘れない。
- 正の周波数にピークがある条件
ζが1/√2以上ではAはΩ > 0で単調に減少し、最大は静的なΩ = 0。自由振動が不足減衰でも変位共振のピークがあるとは限らない。
定常状態では1周期後にエネルギーが元へ戻るため、外力からの平均入力電力は抵抗による平均散逸と等しくなります。上式の分母の平方項はΩ = √(k/m) = ω₀で0となるので、平均吸収電力は減衰の大きさによらずΩ = ω₀で最大です(一定のF₀、一定の正のbのモデル)。速度振幅ΩAも同じ周波数で最大です。したがって「共振は固有振動数で起こる」という文は、変位か速度か電力かを指定しなければ不十分です。
例題1のm = 1 kg、k = 25 N/m、b = 6 N·s/mの振動子を、振幅F₀ = 1 Nの周期外力で駆動する。変位振幅が最大のΩとその振幅、電力が最大のΩとその電力を求めよ。
解答・解説
ω₀ = 5 rad/s、γ = 3 s⁻¹、ζ = 0.60 < 1/√2なので変位ピークがあります。Ωr = √(25 − 18) = √7 ≈ **2.65 rad/s**。分母は√[(25 − 7)² + 36×7] = √576 = 24 N/mだから、最大変位振幅は **1/24 m ≈ 0.0417 m**。平均電力はΩ = **5 rad/s**で最大、このときA = 1/(6×5) = 1/30 m、電力は(1/2)×6×25×(1/30)² = **1/12 W ≈ 0.0833 W**。自由振動のωd = 4 rad/sとも異なります。
7.三つの角振動数を整理する
| 記号 | 何を表すか | 条件・位置づけ |
|---|---|---|
| ω₀ = √(k/m) | 無減衰固有角振動数、定常の速度・電力ピーク | 電力ピークはb > 0で一定F₀の場合 |
| ωd = √(ω₀² − γ²) | 自由な不足減衰運動の角振動数 | 0 < γ < ω₀ |
| Ωr = √(ω₀² − 2γ²) | 定常変位振幅のピーク | 0 < γ < ω₀/√2 |
弱減衰なら三つは近い値になりますが、同じ式ではありません。運動を与えられたら「自由か強制か」「過渡か定常か」「観測する量は変位・速度・電力のどれか」の順で確認すると、使う角振動数を選べます。本文の結果の根拠は、一定係数のニュートンの運動方程式の解、初期条件、エネルギー収支、振幅関数の微分です。測定データや特定装置の性能を示すものではありません。
m = 2 kg、k = 18 N/m。bが6、12、18 N·s/mのときの減衰比と分類を求めよ。
解答・解説
臨界値は2√(2×18) = 12 N·s/m。ζはb/12なので順に **0.5(不足減衰)、1(臨界減衰)、1.5(過減衰)**です。抵抗係数の絶対値だけでなくmとkとの比で分類します。
不足減衰振動の包絡線が2.0 sで半分になる。γと、m = 0.50 kgの場合のbを求めよ。
解答・解説
e⁻²ᵞ = 1/2より **γ = ln 2/2 ≈ 0.347 s⁻¹**。b = 2mγより **b ≈ 0.347 N·s/m**。これは瞬間の変位ではなく、包絡線の大きさの比を使った計算です。
ω₀ = 10 rad/s、γ = 8 s⁻¹の系は自由に振動するか。また正の駆動角振動数で定常変位振幅のピークを持つか。F₀は一定とする。
解答・解説
γ < ω₀なので自由応答は**不足減衰**で、ωd = √(100 − 64) = **6 rad/s**。しかしω₀² − 2γ² = −28 s⁻² < 0なので正のΩに変位ピークは**ありません**。自由に振動する条件と変位共振の条件は異なります。
m = 1 kg、k = 9 N/m、b = 2 N·s/m、F₀ = 0.60 N。Ω = 3 rad/sにおける定常変位振幅、位相遅れ、平均吸収電力を求めよ。
解答・解説
k − mΩ² = 0なので **A = F₀/(bΩ) = 0.10 m**、位相遅れは **π/2 rad**。平均電力はbΩ²A²/2 = 2×9×0.01/2 = **0.090 W**。ここは電力のピークであり、変位ピークは√7 rad/sです。
問1. 自由応答の特性方程式が重根を持つのはどの場合か。m、k、bは正とする。
問2. ζ = 0.80の振動子を一定振幅の周期外力で駆動する。正しい説明はどれか。
問3. m、k、b > 0と外力振幅F₀を固定すると、平均吸収電力が最大になる駆動角振動数はどれか。
問4. 自由振動における粘性抵抗のエネルギー散逸則として厳密に正しいものはどれか。