減衰振動と強制振動——三つの減衰領域と共振条件

速度に比例する抵抗を持つ振動子を微分方程式で解き、不足減衰・臨界減衰・過減衰を分類する。さらに変位振幅と吸収電力では共振周波数が異なることを導く。

この単元の目標
  • 運動方程式から減衰率・固有角振動数・減衰比を定義し、単位を説明できる。
  • 特性方程式の根から三つの減衰領域を判定し、初期条件を使って自由応答を求められる。
  • 強制振動の過渡応答と定常応答を区別し、定常振幅と位相遅れを計算できる。
  • 変位振幅が最大になる条件と、平均吸収電力が最大になる条件を区別できる。
📑 目次
  1. 1.復元力だけでなく、エネルギーを奪う力を入れる
  2. 2.自由応答を決める特性方程式
  3. 3.初期条件と減衰する振幅を計算する
  4. 4.自由振動のエネルギーはどう減るか
  5. 5.強制振動:過渡応答が消えたあと
  6. 6.何を最大にするかで共振条件が変わる
  7. 7.三つの角振動数を整理する

1.復元力だけでなく、エネルギーを奪う力を入れる

理想的な単振動では振幅は変わりません。しかし実際の振動子では、周囲への散逸により自由振動が弱まります。ここでは平衡位置からの変位xに比例する復元力と、速度に比例して逆向きに働く粘性抵抗を持つ、1自由度の線形モデルを扱います。外力を加えない自由応答と、周期的な外力で振動を維持する強制応答を同じ式から調べます。

mx¨+bx˙+kx=F0cos⁡(Ωt),m>0, k>0, b≥0m\ddot x+b\dot x+kx=F_0\cos(\Omega t),\qquad m>0,\ k>0,\ b\ge0
記号意味SI単位
m、k質量、ばね定数kg、N/m
b粘性抵抗の係数(抵抗力は−b dx/dt)N·s/m = kg/s
x、t静的平衡位置からの変位、時刻m、s
F₀、Ω外力の振幅、駆動角振動数N、rad/s
m、b、kは一定とし、ばねの線形性と速度比例抵抗が成り立つ範囲に限定します。乾性摩擦、速度の2乗に比例する抵抗、大振幅の非線形振動は別のモデルです。鉛直ばねなら重力を含む静的平衡位置をx = 0に取ります。以下の数値はモデルを理解するための架空の計算条件です。角振動数Ωと周波数fはΩ = 2πfで関係し、rad/sとHzを混同しません。

2.自由応答を決める特性方程式

ω0=km,γ=b2m,ζ=γω0=b2mk\omega_0=\sqrt{\frac{k}{m}},\qquad \gamma=\frac{b}{2m},\qquad \zeta=\frac{\gamma}{\omega_0}=\frac{b}{2\sqrt{mk}}

ω₀は抵抗がないときの固有角振動数、γは減衰率(s⁻¹)、ζは無次元の減衰比です。外力を0にすると、質量で割った式は「加速度 + 2γ×速度 + ω₀²×変位 = 0」。γではなく2γが速度項の係数である点に注意します。指数関数を代入すると、2階微分方程式が2次方程式へ変わります。

🔍 指数関数の根で運動を分類する

  1. 指数関数を仮定
    x=Cert⇒r2+2γr+ω02=0x=Ce^{rt}\quad\Rightarrow\quad r^2+2\gamma r+\omega_0^2=0

    微分するたびにrが掛かるため、微分方程式が代数方程式になる。rの単位はs⁻¹。

  2. 二つの根
    r±=−γ±γ2−ω02r_\pm=-\gamma\pm\sqrt{\gamma^2-\omega_0^2}

    平方根の中が負なら複素共役根、0なら重根、正なら異なる実根になる。

  3. 実数の変位として書き直す
    x(t)={e−γt(Ccos⁡ωdt+Dsin⁡ωdt),0≤γ<ω0(C+Dt)e−ω0t,γ=ω0Cer+t+Der−t,γ>ω0ωd=ω02−γ2x(t)=\begin{cases}e^{-\gamma t}\bigl(C\cos\omega_d t+D\sin\omega_d t\bigr),&0\le\gamma<\omega_0\\(C+Dt)e^{-\omega_0t},&\gamma=\omega_0\\C e^{r_+t}+D e^{r_-t},&\gamma>\omega_0\end{cases}\qquad \omega_d=\sqrt{\omega_0^2-\gamma^2}

    C、Dは各行ごとに初期変位と初速度で決まる定数。臨界減衰のDだけは単位がm/sで、他の行ではm。

分類条件自由応答の特徴
不足減衰0 < ζ < 1包絡線が指数的に減少しながら角振動数ωdで振動する
臨界減衰ζ = 1、b = 2√(mk)重根に対応するtの項を含む。周期的な振動はしない
過減衰ζ > 1二つの負の実指数の和。周期的な振動はしない
無減衰(境界例)ζ = 0ωd = ω₀、振幅一定の自由振動
「振動しない」は「どの初期条件でも平衡位置を一度も横切らない」という意味ではありません。臨界減衰でも初速度次第では1回横切ります。「臨界減衰が振動せず最も速く戻る」は、同じm、kで静止状態から変位を与えるなど、初期条件と戻り方の評価をそろえた比較です。有限時間で完全に静止するという意味でもありません。過減衰では、一般に遅い根r₊が長時間の応答を支配しますが、その係数が0の特殊な初期条件は例外です。

3.初期条件と減衰する振幅を計算する

例題1:不足減衰の初期値問題

m = 1.0 kg、k = 25 N/m、b = 6.0 N·s/m。外力はなく、x(0) = 0.10 m、初速度は0。減衰の種類、変位x(t)、減衰振動の周期を求めよ。

解答・解説

ω₀ = 5 rad/s、γ = 3 s⁻¹、ζ = 0.60なので**不足減衰**。ωd = √(25 − 9) = 4 rad/s。初期変位からC = 0.10 m、初速度は−γC + ωdD = 0なのでD = 0.075 m。tを秒の数値として書くと、x(t)=(0.10 m)e−3t[cos⁡(4t)+0.75sin⁡(4t)]x(t)=(0.10\,\mathrm{m})e^{-3t}[\cos(4t)+0.75\sin(4t)]。周期は Td=2π/ωd≈1.57 sT_d=2\pi/\omega_d\approx1.57\,\mathrm{s}。包絡線の係数は√(0.10² + 0.075²) = 0.125 mで、初期変位そのものとは異なります。

例題2:臨界減衰と過減衰を同じばねで比較

m = 1 kg、k = 4 N/m、x(0) = 0.10 m、初速度0、外力0とする。b = 4 N·s/mとb = 5 N·s/mの自由応答を求めよ。

解答・解説

前者はω₀ = 2 rad/s、γ = 2 s⁻¹で臨界減衰。初期条件より x(t)=0.10(1+2t)e−2t mx(t)=0.10(1+2t)e^{-2t}\,\mathrm{m}。後者はγ = 2.5 s⁻¹で過減衰、根は−1、−4 s⁻¹。C + D = 0.10、−C − 4D = 0より x(t)=[(2/15)e−t−(1/30)e−4t] mx(t)=[(2/15)e^{-t}-(1/30)e^{-4t}]\,\mathrm{m}。ここではtを秒の数値とした。過減衰には遅い減衰因子e⁻ᵗが残り、長時間では臨界減衰より戻りが遅い。bを大きくするほど早く戻るわけではありません。

4.自由振動のエネルギーはどう減るか

🔍 運動方程式に速度を掛ける

  1. 力学的エネルギー
    E=12mx˙2+12kx2E=\frac12m\dot x^2+\frac12kx^2

    復元力が線形なので、ばねの位置エネルギーはkx²/2。

  2. 外力のない場合の変化率
    dEdt=x˙(mx¨+kx)=−bx˙2≤0\frac{dE}{dt}=\dot x(m\ddot x+kx)=-b\dot x^2\le0

    これは厳密な散逸則。単位はWであり、抵抗がエネルギーを供給することはない。

不足減衰の振幅包絡線は厳密にe⁻ᵞᵗに比例しますが、瞬間のエネルギーは一般に単純な指数関数ではありません。弱い減衰γ ≪ ω₀で1周期の間に包絡線がほとんど変わらなければ、周期平均エネルギーをおよそe⁻²ᵞᵗに比例するとみなせます。包絡線の時定数1/γと平均エネルギーの時定数1/(2γ)を区別しましょう。

5.強制振動:過渡応答が消えたあと

ここからはb > 0、F₀ > 0とします。全体の解は自由応答と定常応答の和です。自由応答は初期条件を満たす役割を持ち、時間が十分たつと消えます。残る定常応答の角振動数は、自由振動のωdではなく外力のΩです。以下はm、b、kと外力振幅F₀を一定に保ち、Ωだけを変えた比較です。

xst=A(Ω)cos⁡(Ωt−δ),A(Ω)=F0(k−mΩ2)2+(bΩ)2x_{\rm st}=A(\Omega)\cos(\Omega t-\delta),\qquad A(\Omega)=\frac{F_0}{\sqrt{(k-m\Omega^2)^2+(b\Omega)^2}}

🔍 振幅と位相を一緒に求める

  1. 複素振幅を用いる
    xst=Re⁡(XeiΩt),(k−mΩ2+ibΩ)X=F0x_{\rm st}=\operatorname{Re}(Xe^{i\Omega t}),\qquad (k-m\Omega^2+ib\Omega)X=F_0

    微分をiΩの掛け算に置き換え、最後に実部を取る。

  2. 絶対値と偏角
    X=Ae−iδ,δ=atan2⁡(bΩ, k−mΩ2)X=Ae^{-i\delta},\qquad \delta=\operatorname{atan2}(b\Omega,\ k-m\Omega^2)

    Ω > 0なら0 < δ < π。atan2(y,x)は点(x,y)の偏角。tan δだけでは象限が決まらない。Ω = 0ではδ = 0。

Ω → 0ではA → F₀/kとなり、ばねをゆっくり引いたときの静的変位に一致します。Ω = ω₀ではばねと慣性の項が相殺し、変位は外力よりπ/2遅れます。Ωが非常に大きいとA ≈ F₀/(mΩ²)、δ → πとなります。これらの極限は式の符号を点検する方法にもなります。

6.何を最大にするかで共振条件が変わる

🔍 変位振幅のピークを微分で探す

  1. 分母の2乗を最小にする
    D(Ω)=(ω02−Ω2)2+4γ2Ω2,A=F0/mDD(\Omega)=(\omega_0^2-\Omega^2)^2+4\gamma^2\Omega^2,\qquad A=\frac{F_0/m}{\sqrt{D}}

    分子一定なので、Aの最大はDの最小に対応する。

  2. 停留点
    D′(Ω)=4Ω(Ω2−ω02+2γ2)D'(\Omega)=4\Omega(\Omega^2-\omega_0^2+2\gamma^2)

    Ω ≥ 0で調べる。Ω = 0という端点も忘れない。

  3. 正の周波数にピークがある条件
    Ωr=ω02−2γ2,0<γ<ω02(0<ζ<12)\Omega_r=\sqrt{\omega_0^2-2\gamma^2},\qquad 0<\gamma<\frac{\omega_0}{\sqrt2}\quad\left(0<\zeta<\frac1{\sqrt2}\right)

    ζが1/√2以上ではAはΩ > 0で単調に減少し、最大は静的なΩ = 0。自由振動が不足減衰でも変位共振のピークがあるとは限らない。

P‾=Fx˙‾=12bΩ2A2=F022b(k/Ω−mΩ)2+b2(Ω>0)\overline P=\overline{F\dot x}=\frac12b\Omega^2 A^2=\frac{F_0^2}{2}\frac{b}{(k/\Omega-m\Omega)^2+b^2}\qquad(\Omega>0)

定常状態では1周期後にエネルギーが元へ戻るため、外力からの平均入力電力は抵抗による平均散逸と等しくなります。上式の分母の平方項はΩ = √(k/m) = ω₀で0となるので、平均吸収電力は減衰の大きさによらずΩ = ω₀で最大です(一定のF₀、一定の正のbのモデル)。速度振幅ΩAも同じ周波数で最大です。したがって「共振は固有振動数で起こる」という文は、変位か速度か電力かを指定しなければ不十分です。

例題3:自由振動数・変位共振・電力共振を分ける

例題1のm = 1 kg、k = 25 N/m、b = 6 N·s/mの振動子を、振幅F₀ = 1 Nの周期外力で駆動する。変位振幅が最大のΩとその振幅、電力が最大のΩとその電力を求めよ。

解答・解説

ω₀ = 5 rad/s、γ = 3 s⁻¹、ζ = 0.60 < 1/√2なので変位ピークがあります。Ωr = √(25 − 18) = √7 ≈ **2.65 rad/s**。分母は√[(25 − 7)² + 36×7] = √576 = 24 N/mだから、最大変位振幅は **1/24 m ≈ 0.0417 m**。平均電力はΩ = **5 rad/s**で最大、このときA = 1/(6×5) = 1/30 m、電力は(1/2)×6×25×(1/30)² = **1/12 W ≈ 0.0833 W**。自由振動のωd = 4 rad/sとも異なります。

b = 0、Ω = ω₀では定常振幅の式の分母が0になります。これは有限振幅の周期定常解が存在しないことを示し、駆動開始直後から変位が無限大になるという意味ではありません。理想的な線形無減衰モデルでは振幅が時間に比例して成長します。実際には非線形性や散逸などが重要になるため、この理想式を無制限に外挿できません。

7.三つの角振動数を整理する

記号何を表すか条件・位置づけ
ω₀ = √(k/m)無減衰固有角振動数、定常の速度・電力ピーク電力ピークはb > 0で一定F₀の場合
ωd = √(ω₀² − γ²)自由な不足減衰運動の角振動数0 < γ < ω₀
Ωr = √(ω₀² − 2γ²)定常変位振幅のピーク0 < γ < ω₀/√2

弱減衰なら三つは近い値になりますが、同じ式ではありません。運動を与えられたら「自由か強制か」「過渡か定常か」「観測する量は変位・速度・電力のどれか」の順で確認すると、使う角振動数を選べます。本文の結果の根拠は、一定係数のニュートンの運動方程式の解、初期条件、エネルギー収支、振幅関数の微分です。測定データや特定装置の性能を示すものではありません。

練習問題:分類から共振条件まで
  1. m = 2 kg、k = 18 N/m。bが6、12、18 N·s/mのときの減衰比と分類を求めよ。

    解答・解説

    臨界値は2√(2×18) = 12 N·s/m。ζはb/12なので順に **0.5(不足減衰)、1(臨界減衰)、1.5(過減衰)**です。抵抗係数の絶対値だけでなくmとkとの比で分類します。

  2. 不足減衰振動の包絡線が2.0 sで半分になる。γと、m = 0.50 kgの場合のbを求めよ。

    解答・解説

    e⁻²ᵞ = 1/2より **γ = ln 2/2 ≈ 0.347 s⁻¹**。b = 2mγより **b ≈ 0.347 N·s/m**。これは瞬間の変位ではなく、包絡線の大きさの比を使った計算です。

  3. ω₀ = 10 rad/s、γ = 8 s⁻¹の系は自由に振動するか。また正の駆動角振動数で定常変位振幅のピークを持つか。F₀は一定とする。

    解答・解説

    γ < ω₀なので自由応答は**不足減衰**で、ωd = √(100 − 64) = **6 rad/s**。しかしω₀² − 2γ² = −28 s⁻² < 0なので正のΩに変位ピークは**ありません**。自由に振動する条件と変位共振の条件は異なります。

  4. m = 1 kg、k = 9 N/m、b = 2 N·s/m、F₀ = 0.60 N。Ω = 3 rad/sにおける定常変位振幅、位相遅れ、平均吸収電力を求めよ。

    解答・解説

    k − mΩ² = 0なので **A = F₀/(bΩ) = 0.10 m**、位相遅れは **π/2 rad**。平均電力はbΩ²A²/2 = 2×9×0.01/2 = **0.090 W**。ここは電力のピークであり、変位ピークは√7 rad/sです。

確認クイズ:似た条件を区別する

問1. 自由応答の特性方程式が重根を持つのはどの場合か。m、k、bは正とする。

問2. ζ = 0.80の振動子を一定振幅の周期外力で駆動する。正しい説明はどれか。

問3. m、k、b > 0と外力振幅F₀を固定すると、平均吸収電力が最大になる駆動角振動数はどれか。

問4. 自由振動における粘性抵抗のエネルギー散逸則として厳密に正しいものはどれか。

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