測ると数字が違うのはなぜ?——誤差・有効数字・平均の限界Q&A
架空のはかりや定規の記録から、ばらつきと偏り、精度と確度、有効数字を区別し、平均しても消えない誤差を考えます。
- 測定値のばらつきと一定方向の偏りを区別できる。
- 精密さと基準への近さを、架空データから別々に評価できる。
- 有効数字と小数点以下の桁数を区別し、計算結果を適切に丸められる。
- 平均によって減る成分と残る成分を、成立条件とともに説明できる。
📑 目次
Q1.同じ物を測っても、なぜ数字が違うの?
A.置き方や読み取り、周囲の振動などが毎回わずかに変わるからです。一方、何も載せていないはかりが常に2 gを示すように、一定方向のずれが重なる場合もあります。偶然誤差は繰り返しで変動する成分、系統誤差は一定、または予測できる仕方で変化する成分です。誤差は必ずしも不注意という意味ではなく、丁寧に測っても残ります。転記ミスなどは別に点検します。
これは同じ量を繰り返し測る単純なモデルです。Xは測りたい量の値、bは測定中一定とした偏り、εᵢは各回の変動、nは回数、x̄は平均です。各項の単位は同じです。温度で偏りが変わる場合などは、bを一定とするモデル自体を見直します。
Q2.「ぴったり同じ数字が出る」は「正しい」と同じ?
A.違います。ここでは「精度」を繰り返しのばらつきの小ささ(精密さ)、「確度」を基準への近さという日常的な意味で使います。ただし分野や製品では用語が異なります。計量用語ではprecision(精密さ)、trueness(多数回の平均の真値への近さ)、accuracy(測定の真値への近さ)を区別します。「高精度」という広告だけで判断せず、何の指標かを確認しましょう。
| 基準100.0 gの箱 | 5回の表示(g) | 平均(g) | 最大値−最小値(g) |
|---|---|---|---|
| はかりA | 102.0, 102.1, 101.9, 102.0, 102.0 | 102.0 | 0.2 |
| はかりB | 99.6, 100.3, 100.0, 100.4, 99.7 | 100.0 | 0.8 |
上の5回の記録で、ばらつきが小さいのはどちらか。平均が基準に近いのはどちらか。平均の符号付きのずれも求めよう。
解答・解説
範囲はAが102.1 − 101.9 = 0.2 g、Bが100.4 − 99.6 = 0.8 gなので、この記録ではAの方がそろっています。平均−基準はAが+2.0 g、Bが0.0 gで、平均はBの方が基準に近いです。Aは精密でも偏りを疑う記録です。ただし5回だけで将来の性能やBの系統誤差ゼロまでは証明できません。範囲も少数データでの簡便な指標にすぎません。
Q3.なぜ何回も測って平均するの? 偏りも消せる?
A.正負に揺れる成分をならすためです。ただし各回の変動が独立で、平均0、同じ有限の分散をもち、測る量が一定という条件が必要です。そのとき平均の標準偏差は1回分の標準偏差を回数の平方根で割った値になります。これは平均の揺れの大きさについての法則で、毎回必ず真値に近づくという約束ではありません。一定の偏りbは平均してもそのまま残ります。
架空のはかりは、1回の偶然変動の標準偏差が0.80 g、一定の偏りが+0.50 gであると分かっている。上の独立性などの条件のもとで16回の平均を取ると、偶然変動の標準偏差と偏りはどうなるか。
解答・解説
平均の標準偏差は0.80 ÷ √16 = 0.20 g。偏りは+0.50 gのままです。「結果全体の誤差が0.20 g以内」とは言えません。平均の中心自体が基準より0.50 g高いからです。同じ条件で偶然変動をさらに半分の0.10 gにするには64回が必要ですが、偏りの改善にはなりません。
Q4.電卓の桁を全部書いてはいけないのはなぜ?
A.計算の桁数は、測定の確かさを増やさないからです。有効数字は、測定結果をどこまでの桁で表しているかを伝える書き方です。0.00450 mは有効数字3桁で、先頭の0は位置を示すだけ、末尾の0は表した桁を示します。4.50 mmに単位を変えても3桁のままです。1200という表記だけでは末尾の0の意味が曖昧なので、2桁なら1.2×10³、4桁なら1.200×10³と書くと明確です。
| 簡便な丸めの目安 | 例 | 理由・限界 |
|---|---|---|
| 加減算:最も粗い小数の位にそろえる | 12.3 cm + 4.56 cm = 16.86 cm → 16.9 cm | 同じ単位にそろえてから比較する |
| 乗除算:最も少ない有効数字の桁数にそろえる | 12.3 cm × 4.5 cm = 55.35 cm² → 55 cm² | 測定値同士の計算で使う初歩的な目安 |
| 厳密な数は桁数を制限しない | 3本の平均を求める際の除数3 | 数えた個数や定義による単位換算は測定値とは別 |
架空の鉛筆3本の長さを18.2 cm、18.4 cm、18.3 cmと記録した。平均を0.1 cmの位まで示そう。
解答・解説
合計は54.9 cm、平均は54.9 ÷ 3 = 18.3 cmです。3本という個数は厳密な数なので「3が1桁だから平均は20 cm」とはしません。これは異なる3本の平均長さであり、同じ鉛筆を3回測ったときの測定誤差の評価とは区別します。
Q5.最小表示0.1 gなら、誤差は必ず0.1 g以内?
A.いいえ。最小表示は分解能の情報であり、ずれ全体の保証ではありません。理想的に0.1 g刻みへ最も近く丸めるだけなら、丸め前の値との違いの大きさは0.05 g以下です。しかしこれは丸めの成分だけです。ゼロ点のずれ、校正の不確かさ、周囲の影響は別に存在し得ます。たくさんの小数桁が表示されても、その桁まで基準に近いとは限りません。
Q6.「誤差」と「不確かさ」はどう違うの?
A.誤差は測定値と基準値との差で、符号をもちます。真値は通常完全には分からず、誤差そのものも正確には分かりません。不確かさは、利用できる情報から測定結果に伴う値の広がりを評価する非負の指標です。「50.0 ± 0.2 g」だけでは、±が標準不確かさなのか、ある包含確率を意図した拡張不確かさなのか、許容範囲なのか分かりません。意味と評価条件を添える必要があります。
同じ条件・測定範囲で、はかりが基準より一律0.4 g高く表示するという架空の情報がある。表示50.7 gに加える補正値と、補正後の値は?
解答・解説
偏り+0.4 gの逆符号、−0.4 gを加えるので50.3 gです。補正は分かっているずれを取り除く処理で、不確かさをゼロにする処理ではありません。実際には偏りを推定した基準や比較にも不確かさがあり、別の重さでも同じずれかは確認が必要です。
基準20.0 cmに対して20.2、20.3、20.1 cmと測った。平均と、平均−基準のずれは?
解答・解説
平均は60.6 ÷ 3 = 20.2 cm、ずれは+0.2 cmです。ただし3回の平均のずれには偶然変動も含まれるため、これだけで一定の偏りと断定しません。
0.00620 kgの有効数字は何桁か。gに換算して同じ桁数で表そう。
解答・解説
3桁。6.20 gです。先頭の0は数えず、末尾の0は数えます。1 kg = 1000 gは定義による厳密な換算であり、情報量を増減させません。
測定値8.25 cmと1.4 cmの差を、本文の加減算の目安で丸めよう。
解答・解説
8.25 − 1.4 = 6.85 cmを0.1 cmの位に四捨五入して6.9 cm。加減算では有効数字の桁数でなく最も粗い小数の位にそろえます。
独立・平均0・同じ分散の偶然変動のもとで、平均の標準偏差を1回の測定の3分の1にしたい。必要な回数と、一定の偏りへの効果は?
解答・解説
√n = 3なので9回です。一定の偏りは残るため、9回平均しても偏りが3分の1にはなりません。
問1. 基準より常にほぼ2 g高いが、繰り返しのばらつきは小さい。最も適切な評価は?
問2. 0.0300 mの有効数字は?
問3. 独立で同じ分散の平均0の偶然変動を平均するとき、回数を4倍にすると平均の標準偏差は?
問4. 最小表示が0.01 cmの定規型デジタル計測器について、表示だけから言えるのは?
用語の根拠と読み取れる限界
- 計量用語の参照:JCGM 200:2012『International vocabulary of metrology(VIM)』第3版、2.13〜2.21(accuracy、trueness、precision、error等)および2.26(uncertainty)。本文は初学者向けの説明で、精度・確度という日本語だけを厳密な一対一の訳語とは扱いません。
- 平均と不確かさの参照:JCGM 100:2008『Evaluation of measurement data — Guide to the expression of uncertainty in measurement』4.2(繰り返し観測による評価)。本記事の平方根の法則は独立性などの条件を置いたモデルであり、架空の数表からその条件を実証したものではありません。
- 表・例題・練習の数値はすべて本教材で設定した架空値です。実社会の製品性能や母集団の統計を示しません。有効数字だけで測定結果の不確かさを完全に表せるわけではありません。