密度・溶解度・再結晶をデータで読む
「何を何で割るか」「水は何 g あるか」を軸に、密度による比較、飽和水溶液の濃度、冷却による結晶の質量を読み解きます。
- 質量と体積のデータから密度を求め、物質を比較するときの条件と限界を説明できる
- 溶解度の基準である水100 gと、水溶液100 gを区別できる
- 飽和・未飽和を判断して、冷却前後の溶質と水の質量を整理できる
- 溶解度の温度変化から再結晶の量を計算し、計算の成立条件を挙げられる
1.三つの数値は、分母が違う
密度は「体積あたりの質量」、溶解度はここでは「水100 gに溶ける溶質の最大質量」、質量パーセント濃度は「水溶液全体に占める溶質の質量の割合」です。単に数字を公式に入れる前に、分母が体積・水の質量・水溶液の質量のどれなのかを確認しましょう。溶かされる物質を溶質、溶かす液体を溶媒といい、この記事の溶媒は水です。
| 量 | 比較の基準 | この記事での表し方 |
|---|---|---|
| 密度 | 物体または液体の体積 | g/cm³(液体ではg/mLも使える) |
| 溶解度 | 水100 g | 水100 gあたりの溶質のg数 |
| 質量パーセント濃度 | 水溶液全体の質量 | % |
2.密度:大きい物体ほど密度も大きい?
質量mをg、体積Vをcm³で表せば、密度ρの単位はg/cm³です。1 mL = 1 cm³なので、mLで示された液体の体積も同じ数値で使えます。同じ温度・圧力で、均一な同じ物質を比べるなら、量を増やしても質量と体積が同じ割合で増えるため密度は変わりません。温度や状態が違う場合や、中空の物体全体を比べる場合には、この説明をそのまま当てはめられません。
| 試料 | 質量(g) | 体積(cm³) |
|---|---|---|
| Pの小片 | 54 | 20 |
| Pの大片 | 81 | 30 |
| Qの小片 | 78 | 10 |
上の表は、同じ温度・圧力での、内部に空洞のない均一な試料の記録である。Pの大小2片とQの密度を求め、最も質量の大きい試料が最も密度も大きいか判断しよう。
解答・解説
Pの小片は54 ÷ 20 = 2.7 g/cm³、大片は81 ÷ 30 = 2.7 g/cm³。Qは78 ÷ 10 = 7.8 g/cm³。質量はPの大片が最大だが、密度はQが最大。同じ体積にそろえた質量を比べる指標なので、試料全体の重さだけでは判断できない。
3.溶解度:水100 gを基準に読み替える
一定温度で、それ以上は溶質が溶けられない状態の水溶液を飽和水溶液といいます。溶解度が30なら、水100 gには最大30 g、水50 gには最大15 gが溶けます。溶質を加えた量がこの上限を超えれば、十分に平衡に達した状態では余りが固体として残ります。透明に見えることだけでは、飽和かどうかは分かりません。
| 温度(℃) | Aの溶解度(水100 gあたりg) | Bの溶解度(水100 gあたりg) |
|---|---|---|
| 10 | 20 | 34 |
| 20 | 30 | 35 |
| 40 | 50 | 36 |
| 60 | 80 | 37 |
この表はそれぞれの物質を単独で水に溶かした場合の値です。Aは温度による変化が大きく、Bは小さいことが分かります。「どの物質も温度が高いほど大幅に溶ける」とは一般化できません。また、この表だけでは30 ℃など未掲載の温度の正確な値は決まりません。グラフの間を直線で結ぶ読み取りは、補間という近似です。
Sはその温度での溶解度の数値(水100 gあたりのg数)、Wは水の質量をgで表した数値、m_maxは最大限溶ける溶質の質量をgで表した数値です。比例計算の基準は水であって、水溶液全体ではありません。以下では水の蒸発や化学反応はなく、平衡に達した状態を考えます。
20 ℃の水50 gにAが25 g加えられたという記録がある。平衡に達したとき、溶けているA、溶け残ったA、水溶液部分の質量パーセント濃度はいくらか。
解答・解説
20 ℃の溶解度は30なので、溶ける上限は30 × 50 ÷ 100 = 15 g。溶け残りは25 − 15 = 10 g。水溶液部分は水50 gと溶けたA 15 gの合計65 gなので、濃度は15 ÷ 65 × 100 ≈ 23.1%(小数第1位まで)。固体10 gは水溶液の質量には含めない。全体の質量は65 + 10 = 75 gで、初めの50 + 25 = 75 gと一致する。
4.再結晶:引き算の前に初めの状態を確認
溶けている物質を再び結晶として取り出すことを再結晶といいます。温度が下がると溶解度が小さくなる物質では、冷却後に溶けられる量を超えた分が結晶になります。ただし、冷やしただけで必ず結晶が出るわけではなく、初めに実際に溶けていた量と、冷却後の上限を比較する必要があります。
Mは冷却前に溶けている溶質の質量(g)、S_lowは冷却後の溶解度の数値です。max(0, …)は、計算結果が負なら0とする意味です。初めから固体が残っていないこと、水の質量Wが一定であること、結晶が水を取り込まないこと、平衡に達することを仮定しています。現実には過飽和のまま結晶がすぐ現れない場合もあり、ここではその時間的な遅れを扱いません。
60 ℃のAの飽和水溶液180 gが、20 ℃で平衡に達した。蒸発はなく、結晶は水を取り込まない。結晶と、残る水溶液の質量を求めよう。
解答・解説
60 ℃では水100 gにA 80 gが溶けるので、飽和水溶液180 gの内訳は水100 g、A 80 g。20 ℃ではAは30 gまで溶けるため、結晶は80 − 30 = 50 g。残る水溶液は100 + 30 = 130 gで、50 + 130 = 180 gと保存が確認できる。180をそのまま水の質量として計算してはいけない。
60 ℃で水50 gにA 20 gがすべて溶けている。この水溶液が20 ℃で平衡に達したとき、結晶は何gになるか。条件は例題3と同じとする。
解答・解説
60 ℃の上限は80 × 50 ÷ 100 = 40 gなので、初めは未飽和。20 ℃の上限は30 × 50 ÷ 100 = 15 g。したがって結晶は実際の溶質量20 − 15 = 5 g。「(80 − 30) × 50 ÷ 100 = 25 g」は初めが飽和の場合だけの計算であり、初めに存在した20 gより多くの結晶を得るという矛盾も生じる。
5.表から言えること、言えないこと
水100 gを含む60 ℃の飽和水溶液をそれぞれ20 ℃にした場合、Aは80 − 30 = 50 g、Bは37 − 35 = 2 gが結晶になります。同じ水の量と温度範囲なら、Aの方が冷却によって多く取り出せるといえます。ただし、混合物の分離で純粋なAが必ず得られるとまでは、この表から言えません。他の物質の混入や、混合による溶け方の変化は別に考える必要があります。
- 質量・体積・温度・溶解度を、単位とともに書き出す。
- 水溶液の質量しかないときは、濃度や飽和条件から水と溶質に分ける。
- 各温度で水の質量に対応する溶解量の上限を計算する。
- 実際の溶質量と比較し、溶けている分・結晶・水に分ける。
- 結晶と残った水溶液の合計が、初めの質量と一致するか確かめる。
同じ温度で、ある均一な液体40 mLの質量は48 gだった。この液体25 mLの質量は何gか。
解答・解説
密度は48 ÷ 40 = 1.2 g/mL。25 mLの質量は1.2 × 25 = 30 g。同じ温度の同じ液体なので密度を共通に使える。
表の40 ℃で、水80 gにA 36 gがすべて溶けている。未飽和か飽和か。また、最大であと何g溶けるか。
解答・解説
上限は50 × 80 ÷ 100 = 40 g。36 gは上限未満なので未飽和で、あと40 − 36 = 4 g溶ける。
20 ℃のAの飽和水溶液65 gに含まれる水とAはそれぞれ何gか。
解答・解説
水:A = 100:30、合計130に対応する水溶液が65 gなので半分。水50 g、A 15 g。65 × 30 ÷ 100では、水溶液を水と取り違えてしまう。
60 ℃で水50 gにA 12 gがすべて溶けている。蒸発なしで20 ℃の平衡状態になったとき、結晶は何gか。
解答・解説
20 ℃での上限は30 × 50 ÷ 100 = 15 g。12 gはすべて溶けたままでいられるので、結晶は0 g。温度が下がっても上限を超えなければ結晶は出ない。
60 ℃のBの飽和水溶液274 gが20 ℃の平衡状態になった。蒸発も結晶への水の取り込みもないとする。結晶の質量と残る水溶液の質量は?
解答・解説
60 ℃では水100 gとB 37 gで計137 g。274 gはその2倍なので水200 g、B 74 g。20 ℃では35 × 200 ÷ 100 = 70 gが溶けるため、結晶4 g、水溶液270 g。4 + 270 = 274 gで一致する。
問1. 水への溶解度がある温度で「30(水100 gあたりg)」とは、どの意味か。
問2. Aの60 ℃の飽和水溶液を20 ℃にしたとき、結晶の質量を(80 − 30) × W ÷ 100で求める。Wが表すものは?(蒸発などはない)
問3. 同じ温度・圧力で測った二つの均一な試料の密度が等しかった。この情報だけで正しく言えるのは?
問4. この表だけを使い、Aの30 ℃の溶解度について最も適切に述べたものは?