湿度・露点・雲のでき方——水蒸気量の表を読みこなす

「水蒸気量」と「飽和水蒸気量」を区別し、表を使って湿度・露点・凝結する水の質量を計算する。雲ができる理由を、数値の読み替えで確かめよう。

この単元の目標
  • 水蒸気量(実際に含まれる量)と飽和水蒸気量(限界の量)を区別して説明できる
  • 飽和水蒸気量の表から相対湿度・露点を読み取り、計算できる
  • 冷却後の飽和水蒸気量と比較して、凝結する水の質量を求められる
  • 空気の上昇による膨張冷却が雲のでき方につながる理由を説明できる
📑 目次
  1. 1.なぜ冷えると雲ができるのか——コップの例から
  2. 2.飽和水蒸気量の表の読み方
  3. 3.冷やしたときに凝結する水の質量
  4. 4.雲のでき方——冷やすのは地上だけではない

1.なぜ冷えると雲ができるのか——コップの例から

冷たい飲み物を入れたコップの外側に水滴がつくのは、空気中の水蒸気が冷やされて水滴(液体の水)に変わったからです。この変化を凝結といいます。では、空気中の水蒸気は、冷えるとどうして「入りきらなくなる」のでしょう。

イメージとしては、温度ごとに大きさの決まった席数の会場を思い浮かべます。水蒸気は席に座る人です。温度が高いほど会場は広く、温度が低いほど狭くなります。人が(水蒸気が)同じ人数のまま会場が狭くなると、入りきらない人が出ます。この「入りきらなかった水蒸気」が凝結して水滴になる、というのが雲や露のでき方の基本です。この温度ごとの席数の上限を飽和水蒸気量といいます。

ここで大事な区別が2つあります。1つ目は、実際に含まれている水蒸気の質量(水蒸気量)と、その温度で含めることのできる限界(飽和水蒸気量)は別の量だということ。2つ目は、露は液体の水であり、雲は細かい水滴や氷の粒の集まりであって、どちらも水蒸気そのものではないということです。凝結は気体の水蒸気が液体の水に変わる変化です。氷の粒は、水滴が凍ったり(凍結)、氷点下の空気中で水蒸気が直接氷になったり(凝華)してできます。これらは液体を経由するかどうかが違う別の変化ですが、どれも水の姿が変わるだけで、水そのものが消えたりふえたりするわけではありません。

「湿度80%」は「空気の80%が水」という意味ではない。相対湿度は「限界に対して、今どれだけの割合の水蒸気があるか」を示す百分率です。空気の大部分は窒素や酸素で、水蒸気は質量比でも数パーセント以下のことが多いです。百分率の「何に対する割合か」を必ず確認しましょう。
相対湿度[%]=水蒸気量[g/m3]その温度の飽和水蒸気量[g/m3]×100\text{相対湿度}[\%] = \frac{\text{水蒸気量}[\mathrm{g/m^3}]}{\text{その温度の飽和水蒸気量}[\mathrm{g/m^3}]} \times 100

単位は分母・分子とも g/m³ でそろえます。これは「1 m³ の空気に何 g の水蒸気が入るか」という考え方です。湿度が 100% になると、その温度ではもう水蒸気を増やせない飽和の状態です。

2.飽和水蒸気量の表の読み方

次の表は、中学の計算で使う飽和水蒸気量の値です。これはこの教材の学習用の近似表であり、物理的特性の精密な測定値を載せた表ではありません。表の値を与えられた条件として計算しますが、桁数は計算結果の実測精度を保証しません。表の間の露点は範囲で答え、厳密な補間や誤差評価は行いません。気象の実務や精密な計算に使うものではありません。

この表を使う計算全体の共通の約束(条件):①空気の体積 V は変化しない(膨張・圧縮しない)②空気と外部との間で水の出入り(蒸発・降水など)はない ③最初から液体の水や氷は含まれていない ④凝結が起きるときは十分に時間がたって平衡に達し、残る水蒸気はその温度の飽和水蒸気量ちょうどとする。実際の大気では体積は変化するし、降水で水が落ちたりします。これらの条件は地上付近の空気を固定して考えるための単純化で、次の「雲のでき方」で扱う上昇による膨張はこの条件の外なので、あとで別に考えます。
温度(℃)飽和水蒸気量(g/m³)
04.8
56.8
109.4
1512.8
2017.2
2523.0
3030.4

表の読み方は2方向あります。温度から限界を知る(20 ℃なら 17.2 g/m³ まで入る)のと、限界から温度を知る(水蒸気が 9.4 g/m³ なら、飽和になるのは 10 ℃)の2つです。2つ目の読み方がそのまま露点を求める操作になります。露点とは、水蒸気量を増やさずに空気を冷やしていき、初めて飽和する温度のことです。

共通条件のもとで露点に達する前は、水蒸気の質量も1 m³あたりの量も一定なので、冷やすと湿度は上がっていきます。湿度が 100% になる温度、すなわち「水蒸気量=飽和水蒸気量」となる温度が露点です。露点に達するまでは水滴はできません。達してからさらに冷やして初めて、余った分が凝結します。

例題1:表から湿度と露点を読む

体積 1 m³ の空気に水蒸気が 9.4 g 含まれています。この空気の温度が 25 ℃ のとき、相対湿度は何%か。また、この空気の露点は何℃か。表の値を使い、体積変化と外部との水の出入りはないものとします。

解答・解説

25 ℃の飽和水蒸気量は 23.0 g/m³ なので、湿度は 9.4 ÷ 23.0 × 100 ≈ **約41%**(40.9% を四捨五入)。露点は「9.4 g/m³ がちょうど飽和になる温度」で、表から **10 ℃**。確認すると、10 ℃の飽和水蒸気量は 9.4 g/m³ で、湿度は 9.4 ÷ 9.4 × 100 = 100% となり、露点の定義どおりです。

手を動かすときの順路は「①今の水蒸気量を出す → ②表で温度ごとの限界と比べる → ③一致する温度が露点 → ④それ以下まで冷やしたら、差が凝結量」。この4歩を毎回なぞると、取り違えが減ります。

3.冷やしたときに凝結する水の質量

露点より下の温度 T₂ まで冷やすと、水蒸気として残れるのは「T₂ の飽和水蒸気量 × 体積」だけです。それ以上の分が凝結します。冷やす前の水蒸気量を m₀ [g]、冷却後の温度 T₂ の飽和水蒸気量を S(T₂) [g/m³]、空気の体積を V [m³] とすると、凝結する水の質量は次のようになります。

凝結する水の質量[g]=max⁡ ⁣(0,  m0−S(T2) V)\text{凝結する水の質量}[\mathrm{g}] = \max\!\left(0,\; m_0 - S(T_2)\,V\right)

max(0, …) は「0より小さければ0とする」の意味です。まだ露点に達していなければ何も凝結しないので、差をとる前に必ず「冷やした後の温度は露点より低いか」を確かめます。このレッスンの例題では V = 1 m³ と固定してあるので、数値としては m₀ − S(T₂) × 1 を計算しています。単位をそろえるため、m₀ は g、S(T₂)V は g/m³ × m³ = g となり、どちらも水の質量として比べられます。凝結が平衡に達すると、水蒸気として残る質量は S(T₂)V です。水蒸気の質量の減少分は m₀ − S(T₂)V で、その分が液体の水になります。水蒸気+液体の水の合計(全水量)は凝結の前後で変わりません(外部との水の出入りがないため)。時間的な遅れ(過飽和のまま水滴がすぐ現れない場合など)はこの学習では考えません。

例題2:湿度60%の空気を冷やすと何 g 凝結するか

体積 1 m³、温度 20 ℃、相対湿度 60% の空気がある。この空気の露点は何℃以上いくつ未満か(表の値の間で答える)。さらに 5 ℃ まで冷やしたとき、凝結する水の質量を求めよ。表の計算の共通の約束(体積一定・水の出入りなし・凝結後は平衡)に従う。

解答・解説

まず水蒸気量を出します。17.2 × 0.60 = 10.32 g。表で 10.32 g/m³ が飽和になる温度を探すと、10 ℃(9.4)と 15 ℃(12.8)の間なので、**露点は 10 ℃ より高く 15 ℃ 未満**。5 ℃ まで冷やすと 5 ℃ は露点より低いので、凝結します。残れる水蒸気は 6.8 g で、凝結量は 10.32 − 6.8 = **3.52 g(約3.5 g)**。**凝結が平衡に達した後**は、残る水蒸気がその温度の飽和水蒸気量に等しいので湿度は 100% です。この教材では凝結途中の非平衡な状態は計算しません。

湿度の公式は冷却後にも使えますが、分子を冷却前の値に固定してはいけません。まず質量 m₀ と S(T₂)V(どちらも g)を比較します。m₀ が大きければ凝結が起き、平衡後の水蒸気密度は S(T₂) なので湿度は100%。m₀ が小さければ凝結せず、湿度は (m₀/V) ÷ S(T₂) × 100 で100%未満です。等しければ、凝結量0でちょうど飽和しています。

4.雲のでき方——冷やすのは地上だけではない

露や霧ができるのは地面近くの空気が冷えるからですが、空の高いところの雲はどうできるのでしょう。地上で暖められた空気や、山脈を越えるとき押し上げられた空気は上昇します。上空は周囲の気圧が低いので、上昇した空気は周囲を押し広げながら膨張し、膨張のために冷えます(断熱冷却とよばれます。空気が外から熱を得ずに膨張すると温度が下がる、という性質です)。

こうして温度が下がると飽和水蒸気量が小さくなり、やがて露点に達して凝結が始まります。凝結した小さな水滴が集まると雲として見えます。低温の雲には凍結や凝華でできた氷の粒も含まれます。夏の午後の積乱雲が地表付近の強い上昇気流からできるのはこのためです。なお、この「上昇する空気」では前の節の「体積一定」の約束は使えません。上昇に伴って空気は膨張するからです。したがって雲のでき方は、表を使った計算の条件とは別の筋として捉えます(体積変化を含む正確な計算は中学校では扱いません)。ここでは「上昇→膨張→冷却→飽和→凝結」という流れを理解するための単純化した説明をしています。

  • 表計算のまとめ:体積一定・水の出入りなし・初め液体なしの条件では、空気を温めても冷やしても凝結前の水蒸気量は一定
  • 同じ共通条件で、温度を上げると飽和水蒸気量が増え、湿度は下がる
  • 同じ共通条件で、露点まで冷やすと飽和水蒸気量が減って湿度が上がり、露点で100%になる
  • 露点より低い温度まで冷やし平衡に達すると、m₀ − S(T₂)V の分が凝結して液体の水になる。水滴が空中に集まると雲や霧、地物の表面につくと露と呼ぶ
練習:表を読んで、増える・減る・凝結するを判断する
  1. 体積 1 m³、温度 30 ℃、相対湿度 50% の空気がある。水蒸気量を求め、10 ℃ まで冷やしたときに凝結する水の質量を求めよ。表の値を使う。

    ヒント

    まず水蒸気量を出し、露点と 10 ℃ の大小を確かめてから差をとる。

    解答・解説

    水蒸気量は 30.4 × 0.50 = **15.2 g**。露点は 15 ℃(12.8)と 20 ℃(17.2)の間なので、10 ℃ まで冷やすと確実に露点を下回る。10 ℃ の飽和水蒸気量は 9.4 g/m³ なので、凝結量は 15.2 − 9.4 = **5.8 g**。

  2. 体積 1 m³、温度 15 ℃ で飽和している空気を 30 ℃ まで温めた。水蒸気量と相対湿度はどうなるか。

    ヒント

    温めても水蒸気は増えない。増えるのは限界のほう。

    解答・解説

    水蒸気量は **12.8 g のまま**。30 ℃ の飽和水蒸気量は 30.4 g/m³ なので、湿度は 12.8 ÷ 30.4 × 100 ≈ **約42%**。温めると限界が広がるため、同じ水蒸気量でも湿度は下がる。

  3. 体積 1 m³、水蒸気量 6.8 g の空気の露点を表から答えよ。さらに 0 ℃ まで冷やしたときに凝結する水の質量を求めよ。

    解答・解説

    6.8 g/m³ が飽和になる温度は **5 ℃**(5 ℃の飽和水蒸気量 6.8)。0 ℃ の飽和水蒸気量は 4.8 g/m³ なので、凝結量は 6.8 − 4.8 = **2.0 g**。0 ℃ は露点より低いので凝結が起き、平衡に達した後の湿度は 100%。

  4. 「冬の朝、窓ガラスの内側に露がつくのは、部屋の空気に水蒸気が突然ふえたから」という説明を訂正せよ。

    解答・解説

    水蒸気がふえたのではなく、**ガラスで冷やされた空気の温度が下がり、飽和水蒸気量(限界)が減った**ため、限界を超えた分が凝結した。水蒸気を新たに増やさなくても起きる変化であり、凝結した分だけ付近の水蒸気は液体の水に変わる。冷える場所(冷たいガラス面)に露がつくことも、この説明と一致する。

確認クイズ:湿度と露点の考え方

問1. 相対湿度 70% とは何に対する割合か。

問2. 共通条件(体積一定・水の出入りなし・初め液体なし)で、水蒸気量 9.4 g/m³ の空気を 20 ℃から冷やす。表から露点は何℃か。

問3. 表の計算の共通条件(体積一定・水の出入りなし・初め液体なし・凝結後は平衡)のもとで、露点より低い温度まで冷やし終わった空気の相対湿度は何%か。

問4. 空の高いところで雲ができる主なきっかけはどれか。

このレッスンの数値について:飽和水蒸気量の表は、この教材の計算用につくった学習用の近似表であり、実測値の出典を示す表ではありません。計算結果はこの表に基づく近似で、実際の値に対する誤差の大きさは評価していません。例題・練習の空気の体積・湿度・温度の設定は、この計算のためにつくった架空の条件であり、特定の日時・地点の気象観測値ではありません。実際の大気では高度による気圧変化、混合、放射冷却などが加わるため、現実の天気の予測にはこの単純な式をそのまま使えません。
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