仕事とエネルギー
力による仕事、位置エネルギー・運動エネルギーの変換を学ぶ。
- 仕事の大きさを計算できる
- 仕事の原理と仕事率の違いを説明できる
- 位置エネルギーと運動エネルギーの関係を説明できる
疲れた量ではなく、物体へ渡したエネルギーを数える
重いかばんを持ってじっと立つと疲れます。それでも、静止したかばんに手の力がした力学的な仕事は0です。物理の仕事は人の苦労の尺度ではなく、力を加えた物体が移動することで受け渡されるエネルギーを数えます。体内では筋肉の活動にエネルギーが使われるため、「かばんへの仕事が0」と「体がエネルギーを使わない」は同じ意味ではありません。
仕事を求める前に、①どの物体に、②どの力が、③どちら向きの移動に対して働いたかを決めます。水平に運ぶかばんに対する上向きの支持力なら、力と移動が垂直なので仕事は0です。一方、同じ物体に摩擦力が働く場合には、摩擦力の仕事は別に考えます。すべての力を一括りにしないことが大切です。
重さ30 Nのかばんを一定の速さで0.80 m持ち上げ、その後同じ高さで水平に5.0 m運ぶ。手の力はかばんを支える上向き30 Nだけとして、各区間の手の力の仕事を求めよ。区間のつなぎ目の加速は考えない。
解答・解説
持ち上げる区間は力と移動が同じ向きなので30×0.80=**24 J**。水平区間は上向きの力と移動が垂直なので**0 J**。30×5.0としない。合計は24 Jで、水平距離を長くしてもこのモデルの支持力の仕事は増えない。
位置エネルギーは基準面をそろえる
棚の上の本の位置エネルギーは、机の面を高さ0にするか床を0にするかで数値が変わります。しかし同じ場所から同じ場所へ下がるときの高さの差は変わりません。エネルギー変換で使うのは、この位置エネルギーの減少分です。重力加速度を一定とし、空気抵抗・摩擦・回転を無視したモデルでは、その減少分が運動エネルギーの増加分になります。
質量2.0 kgの物体が、床からの高さ3.0 mの位置で静止している。空気抵抗を無視して1.25 mまで落ちたとき、減った位置エネルギー、運動エネルギー、速さを求めよ。g=10 m/s²と近似する。
解答・解説
落下距離は3.0−1.25=1.75 m。位置エネルギーの減少は2.0×10×1.75=**35 J**で、運動エネルギーも**35 J**。(1/2)×2.0×v²=35よりv=√35≒**5.9 m/s**。床を基準とすれば位置エネルギーは60 Jから25 Jになり、25+35=60 J。床まで落ちたものとして3.0 m全部を使わない。
重さ20 Nの物体を上向き20 Nの力で支え、同じ高さで水平に4 m運んだ。この支持力の仕事は何Jか。
解答・解説
**0 J**。力は上向き、移動は水平で垂直。20×4を使う条件を満たさない。
質量1.0 kgの物体が静止状態から2.0 m落下した。空気抵抗を無視し、g=10 m/s²とすると、落下後の運動エネルギーは何Jか。
解答・解説
減った位置エネルギー1.0×10×2.0=**20 J**が運動エネルギーになる。高さ0の選び方によらず、落下距離2.0 mを使う。
ある装置は荷物を持ち上げるのに100 Jのエネルギーを受け取り、荷物の位置エネルギーは75 J増えた。装置自身の運動・位置エネルギーは変わらず、残りはすべて熱などとして周囲へ移った。周囲へ移った量と効率を求めよ。
解答・解説
周囲へは100−75=**25 J**。効率を有用な出力÷入力と定めると75÷100×100=**75%**。残りの25 Jも消滅したのではなく、別の形で周囲へ移った。
問1. 上向きの力で物体を支えながら水平に運ぶとき、その上向きの力の仕事は?
問2. 位置エネルギーの基準面を変えても変わらないのは?
問3. 摩擦で物体が止まったとき、エネルギーはどうなる?
仕事
上の式は、一定の力と移動が同じ向きのときの仕事を表します。重さ W [N] の物体を一定の速さで高さ h [m] 持ち上げると、持ち上げる力の仕事は です。力と移動が垂直ならその力の仕事は 0、逆向きなら負の仕事になります(負の仕事は高校への発展)。
仕事の原理と仕事率
摩擦や道具の重さを無視すると、滑車や斜面で必要な力を小さくしても、その分だけ力を加えて動かす距離が長くなり、必要な仕事は変わりません(仕事の原理)。一方、仕事率は「仕事 ÷ かかった時間」で、単位は W(ワット)、1 W = 1 J/s です。同じ仕事を短い時間で行うほど仕事率は大きくなります。
重さ 40 N の荷物を、1 個の動滑車で一定の速さで 0.50 m 持ち上げる。荷物と動滑車を支える 2 本のひもは鉛直で、ひもと滑車の重さ・摩擦は無視する。引く力、ひもを引く距離、した仕事を求めよ。4 秒かかったときの仕事率も求めよ。
解答・解説
2 本のひもで支えるので引く力は 40 ÷ 2 = **20 N**。ひもは荷物の移動の 2 倍の **1.0 m** 引く。仕事は 20 × 1.0 = **20 J** で、直接持ち上げたときの 40 × 0.50 と同じ。仕事率は 20 ÷ 4 = **5 W**。
摩擦のない斜面に沿って、重さ 60 N の台車を一定の速さで高さ 1 m まで引き上げた。斜面に沿う移動距離は 3 m。斜面に平行な引く力と、その仕事を求めよ。
解答・解説
必要な仕事は直接持ち上げるときと同じで 60 × 1 = **60 J**。引く力は 60 ÷ 3 = **20 N**。力が 3 分の 1 でも距離が 3 倍になる。
A さんは 120 J の仕事を 6 秒、B さんは同じ仕事を 4 秒で行った。仕事率はそれぞれ何 W か。
解答・解説
A さんは 120 ÷ 6 = **20 W**、B さんは 120 ÷ 4 = **30 W**。仕事の量は同じでも、B さんの仕事率が大きい。
振り子が空気抵抗や支点の摩擦で次第に止まるとき、エネルギーそのものが消えたといえるか。
解答・解説
**消えたとはいえない。**力学的エネルギーの一部が空気や支点などの熱エネルギーなどに変わる。力学的エネルギーは減るが、周囲まで含めたエネルギー全体は保存される。
位置エネルギーと運動エネルギー
次の定量式は高校への発展です。m は質量 [kg]、g は重力加速度 [m/s²]、h は基準面からの高さ [m]、v は速さ [m/s] で、エネルギーの単位は J です。摩擦や空気抵抗を無視すると、位置エネルギーと運動エネルギーの和(力学的エネルギー)が保存されます。
- 高いところにある物体ほど位置エネルギーが大きい
- 速く動く物体ほど運動エネルギーが大きい
- 振り子:最も高い位置で位置エネルギー最大 → 最も低い位置で運動エネルギー最大(互いに変換される)
重さ 20 N のおもりを一定の速さで 3 m 持ち上げるとき、持ち上げる力の仕事を求めよ。
解答・解説
**60 J**
水平方向に一定の 50 N の力を加え、荷物を力と同じ向きに 10 m 動かした。この力の仕事を求めよ。
解答・解説
**500 J**
床に置いたままの荷物を 100 N の力で押しても動かなかった。した仕事は?
解答・解説
**0 J**(動いていないため仕事は 0)。
鉄球とゴムボールを静かに放し、同じ距離だけ自由落下させた。落下直後ではなく、その距離を落ちた時点での速さの大小はどうか(空気抵抗を無視)。
ヒント
落ちる加速度は質量によらない。
解答・解説
**同じ速さ**。静かに放した物体の速さは、重力加速度と落下距離が同じなら質量によらない(発展:)。
問1. 仕事の単位はどれか。
問2. 振り子が最も低い位置に来たとき、何が最大になるか。