日本の自然環境と産業 — 山がちな国土のくらし
山地が多い国土、気候区分、川と平野の特徴を、農林水産業との関係から学ぶ。
- 日本の国土が山地中心であることを、平野・盆地・海岸平野の分布と結びつけて説明できる
- 日本の主な気候区分とその特色を、風と海流の影響から説明できる
- 地形と気候が農業・林業・水産業のかたちに与える影響を考察できる
山地が多い国土
日本の国土は約37.8万km²で、その約7割が山地・丘陵地です。これはドイツやフランスなどのヨーロッパ諸国に比べて非常に高い割合で、世界有数の「山の国」といえます。四つの主要な島(北海道・本州・四国・九州)を縦断するように山地が走り、飛騨山脈・赤石山脈・木曽山脈の「日本アルプス」では3000m級の山々が連なります。土地が狭く起伏が激しいため、人々のくらしと農地は平野に集中しています。関東平野(最大)、大阪平野、濃尾平野などの大平野には大都市が発達しました。山間部には盆地(甲府・京都など)があり、寒暖の差が大きい気候を生かした特産物(ぶどう・米どころ)が育っています。
- 山地・丘陵地: 約7割。糸魚川―静岡構造線は、本州中央部の大きな地質構造であるフォッサマグナの西縁にあたる
- 平野: 人口と都市の集中。沖積平野は稲作の中心(新潟平野など)
- 盆地: 夏は暑く冬は寒い。昼夜の寒暖差を生かす果樹栽培(山梨のぶどう)
- 海岸: 砂浜海岸とリアス式海岸(三陸沿岸)。漁港の条件が異なる
気候区分 — 日本列島の6つの顔
| 気候区分 | 分布地域 | 特色 | くらし・産業との関係 |
|---|---|---|---|
| 日本海側気候 | 北陸・東北日本海側 | 夏はフェーン現象で高温、冬は季節風が雪雲を落とす豪雪 | 屋内作業(工業・手工業)、スキー観光 |
| 太平洋側気候 | 関東〜九州の太平洋側 | 夏に雨が多く、冬は乾燥した晴れの日が続く | 稲作と麦などの二毛作、柑橘類の栽培 |
| 中央高地式気候 | 長野・山梨などの内陸 | 山に囲まれ寒暖の差が大きい。盆地的気候 | 高原野菜・果樹、避暑地 |
| 南西諸島の気候 | 奄美〜沖縄 | 年間を通じて温暖。台風の通路 | サトウキビ、亜熱帯作物(パインアップル) |
| 瀬戸内式気候 | 瀬戸内海沿岸 | 雨が少なく温暖。日照時間が長い | 塩田(昔)・造船・石油化学 |
| 北海道型気候 | 北海道 | 冬の寒さが厳しく、梅雨の影響が小さい。日本海側には雪が多く、太平洋側では夏に海霧が出やすい | 大規模畑作・酪農、冷害への備え |
川と平野 — 水の恵みと災害
日本の河川は短く流れが急です。最長の信濃川でも約367km、利根川は約322km。ヨーロッパの大河(ライン川約1230km、ドナウ川約2850km)に比べると非常に短いのです。これは国土が細長く山地が海に近いためです。急流であることは、高低差は水力発電に利用できますが、農業用水には取水・貯水の工夫が必要です。また、梅雨前線や台風による洪水・土石流の危険をはらみます。川が運ぶ土砂は、山地の出口に扇状地、下流に自然堤防や三角州などをつくります。扇状地は水はけがよく果樹園に、低地は用排水の整備によって水田などに利用されてきました。
新潟県の越後平野が日本有数の米どころになった理由を、地形と気候の両面から説明せよ。
解答・解説
**① 地形**: 信濃川・阿賀野川などがつくった広い平野がある。もともと水害や排水不良の土地も多く、治水・排水工事で水田利用が進んだ。**② 気候**: 山地の雪解け水などを農業用水に利用でき、夏の温暖な気候が稲の生育を支える。自然条件に加え、人々の改良の努力も重要である。
地形と気候が生む「農林水産業」
| 産業 | 成立した自然的条件 | 代表的な地域・事例 |
|---|---|---|
| 稲作 | 夏季に高温多雨。平野・盆地に水田が開ける | 新潟・秋田・山形(日本海側の稲作地帯) |
| 果樹園芸 | 盆地の寒暖差、斜面の日当たりと排水 | 山梨のぶどう、和歌山のみかん、青森のりんご |
| 林業 | 国土の約7割が森林。人工林(杉・ひのき)が拡大 | 岐阜・宮崎の杉、熊野のひのき |
| 漁業 | 黒潮と親潮が交わる「潮目」。大陸棚が広い | 三陸沖・北海道沖(さんま・さけ・かに) |
| 養殖業 | 静穏な内湾(リアス式海岸・瀬戸内海) | 愛媛・鹿児島のブリ養殖、宮城のカキ |
このように日本の農林水産業は、それぞれの地域の自然条件を生かした特色ある地域づくりの歴史といえます。ただし近年は、輸入品との競争、就業者の高齢化、耕作放棄地の増加という課題も抱えています。2018年度の食料自給率(カロリーベース)は37%であり、食料安全保障が国の重要課題になっています。
練習問題
日本の国土のうち山地・丘陵地が占める割合はおよそ何%か。
ヒント
「約7割」を百分率に直そう。
解答・解説
約70%。山地だけでなく丘陵地も含む割合です。
日本海側で冬季に大雪が降るしくみを、季節風と海流の言葉を使って説明せよ。
ヒント
大陸から吹く風が、温かい海の上を通るときに何を得るだろう。
解答・解説
シベリアからの北西季節風が、対馬暖流で温まった日本海の上を通る際に大量の水蒸気を受け取り、山地にぶつかって上昇し雪雲となって降る。
瀬戸内海沿岸に造船所が多い理由を2つ挙げよ。
ヒント
自然条件と、海運との関係を考える。
解答・解説
①波が比較的穏やかな内海で、港や造船施設を設けやすい場所がある。②古くから海上交通が盛んで、船の建造・修理の需要や関連産業・技術が蓄積した。雨の少なさだけで立地を説明しない。
三陸沿岸が世界有数の漁場になった理由を説明せよ。
ヒント
二つの海流がぶつかる場所に注目。「潮目」という言葉を使う。
解答・解説
暖流の黒潮と寒流の親潮が交わる潮目で、プランクトンが豊かに繁殖するため魚が集まる。さらにリアス式海岸の入り江が良港・養殖場になる。
確認クイズ
問1. 日本で最も長い川は次のうちどれ。
問2. 山梨県の甲府盆地がぶどう栽培に適しているのはなぜか。
問3. 日本の食料自給率(カロリーベース、2018年度)はおよそいくらか。