DNAの構造と複製
二重らせんモデル、塩基対合の規則、半保存的複製のしくみを学ぶ。
- DNAの化学構造(ヌクレオチド・塩基)と二重らせんモデルの特徴を説明できる
- 塩基対合の規則とチャーガフの法則から塩基組成を計算できる
- 半保存的複製のしくみとメセルソン・スタールの実験の結果を説明できる
DNAの構造——二重らせんモデル
DNAはヌクレオチドという単位がたくさんつながった高分子です。ヌクレオチドはリン酸とデオキシリボース(五炭糖)そして窒素塩基からなり、塩基には A(アデニン)・G(グアニン)・C(シトシン)・T(チミン)の4種類があります。1953年にワトソンとクリックが提案したモデルでは、DNAは2本のヌクレオチド鎖がより合わさった二重らせん構造をしています。リン酸と糖が交互につながった骨格が外側にあり、塩基が内側で向かい合って、はしごの横棒のように水素結合で対合しています。
塩基の対合には厳密な規則があります。A は T と、G は C とだけ水素結合を作ります(相補的塩基対合)。A と G は大きな環を2つもつプリン塩基、C と T は小さい環を1つもつピリミジン塩基で、必ずプリン × ピリミジンの組み合わせになるため、らせんの太さがどこでも一定に保たれます。水素結合は A-T 間が 2 本、G-C 間が 3 本です。一方の鎖の配列が決まればもう一方の配列も自動的に決まる、という相補性こそが、DNAが自己複製できる秘密になっています。
| 項目 | DNA | RNA |
|---|---|---|
| 五炭糖 | デオキシリボース | リボース |
| 塩基 | A, G, C, T | A, G, C, U(T の代わりに U) |
| 鎖の数 | 多くは二本鎖 | 多くは一本鎖 |
| 主な役割 | 遺伝情報の保存と伝達 | タンパク質合成の仲介(mRNA, tRNA, rRNA) |
🔍 チャーガフの法則から塩基組成を求める
- 法則
二本鎖 DNA では相補的塩基対合の規則により、A の量と T の量、G の量と C の量がそれぞれ等しくなる(チャーガフの法則)。
- A の割合が分かれば
A が全塩基の 15% なら、それと対合している T も 15%。
- 残りは G と C
全体は 100% だから、A と T を除いた残りが G と C の合計。
- G と C は等しいので
G = C だから半分ずつ。つまり A の値だけで全塩基の組成が決まる。
DNAの複製——半保存的複製
細胞が分裂する前に、DNAは自分自身のコピーを作ります(複製)。まず二重らせんの一部がほどけて2本の鎖が分かれ、それぞれの鎖が鋳型(ひながた)になります。塩基対合の規則に従って新しい相補的な鎖が合成されるので、できあがる2個の DNA 分子はどちらも「元あった鎖 1 本 + 新しくできた鎖 1 本」という組み合わせになります。この方式を半保存的複製(セミコンサベーティブ複製)と呼びます。
1958年のメセルソンとスタールの実験がこれを実証しました。重い窒素 ^15N を含む培地で大腸菌を育てて DNA を重くしておき、軽い ^14N の培地に移して増殖させます。密度勾配遠心で調べると、1世代後の DNA はすべて中間の密度(重い鋳型鎖 + 軽い新鎖)を示し、2世代後には中間密度の DNA と軽い DNA が 1 : 1 になりました。もし複製が「元の二本鎖がそのまま残り、別に軽い二本鎖ができる」(保守的複製)なら、1世代後の時点で軽い DNA が現れるはずです。1世代後に中間密度だけだったことは保守的複製を否定しますが、分散的複製でも同様の結果になります。2世代後に中間密度と軽い DNA の2群に分かれた結果まで合わせることで、分散的複製も退けられ、半保存的複製が支持されます。
- らせんの開裂: ヘリカーゼ(らせん開裂酵素)が水素結合をほどいて二本鎖を分ける
- プライマー: DNAポリメラーゼはゼロから合成を始められないため、まず RNA プライマー(開始物)が置かれる
- 伸長: DNAポリメラーゼが鋳型を読みながら、新鎖を 5′ → 3′ の向きにだけ伸ばしていく
- リーディング鎖とラギング鎖: 2本の鋳型鎖は逆向き(逆平行)なので、片側は連続的に、もう片側は断片的(岡崎フラグメント)に合成される
- 連結: DNAリガーゼが岡崎フラグメント同士をつないで新鎖が完成する
なぜ新鎖は 5′ → 3′ 方向にしか伸ばせないのでしょうか。DNAポリメラーゼは新しいヌクレオチドを、伸びかけの鎖の 3′ 末端の OH 基に付加するという化学反応で合成を行うためです。この制約があるからこそ、逆向きに走るもう一方の鋳型鎖では合成が途切れ途切れになり、DNAリガーゼでつなぐ作業が必要になります。
ある二本鎖 DNA の A が全塩基の 20% だった。G の割合を求めよ。
解答・解説
チャーガフの法則より 。残りは で、 だから **G = 30%**。
練習問題
二本鎖 DNA で G が全塩基の 28% のとき、A の割合はいくらか。
ヒント
から G + C の合計を出し、残りを A と T で分ける。
解答・解説
→ → **A = 22%**
塩基配列が 3′-ATGCCT-5′ の一本鎖 DNA がある。これと相補的な鎖の配列を 5′ → 3′ の向きに書け。
ヒント
各塩基の相補塩基(A-T, G-C)を当てはめてから、鎖が逆向きに走っていることに注意する。
解答・解説
各位置の相補塩基は順に T・A・C・G・G・A となるので、**5′-TACGGA-3′**
メセルソン・スタールの実験で、複製が保守的だったとしたら、^14N 培地に移して 1 世代増殖したときのバンドはどうなっていたか。
ヒント
保守的複製では元の重い二本鎖がそのまま残ると考える。
解答・解説
**重い DNA(^15N/^15N)と軽い DNA(^14N/^14N)の 2 本のバンド**が現れるはずである。実際には中間密度 1 本だったので、保守的複製は否定された。
問1. 二重らせん DNA で G と水素結合を作る塩基はどれか。
問2. 半保存的複製とはどれか。
問3. DNAポリメラーゼが新鎖を合成できる向きはどれか。