遺伝の規則性の応用
中間雑種・共優性・致死遺伝子・複対立遺伝子など、基本の分離比が変わるケースを学ぶ。
- 完全優性でない遺伝(中間雑種・共優性)で分離比がどう変わるか説明できる
- 致死遺伝子が分離比をゆがめる仕組みを計算で説明できる
- ABO式血液型などの複対立遺伝子で遺伝子型と表現型を対応づけられる
中間雑種(不完全優性)
メンデルのエンドウでは、優性遺伝子が劣性遺伝子の効果を完全に覆い隠しました。しかし生物によっては、ヘテロの個体が両親の中間の表現型を示すことがあり、これを中間雑種(不完全優性)と呼びます。オシロイバナでは赤花(RR)と白花(rr)を交配すると F₁ はすべてピンク花になります。これは優性遺伝子 R が 1 個では色素を作る力が足りず、2 個そろって初めて十分な量の色素ができる(遺伝子の用量効果)ためです。遺伝子の分離のしかた自体は分離の法則どおりで、変わるのは遺伝子型と表現型の対応だけです。そのため F₂ では表現型の比が遺伝子型の比(1 : 2 : 1)と一致します。
| 遺伝の型 | F₁ の表現型 | F₂ の表現型の比 | 例 |
|---|---|---|---|
| 完全優性 | 優性形質と同じ | 3 : 1 | エンドウの丸粒 × 皺粒 |
| 中間雑種(不完全優性) | 両親の中間 | 1 : 2 : 1 | オシロイバナの赤花 × 白花 → ピンク花 |
| 共優性 | 両方の形質がともに現れる | 1 : 2 : 1 | ABO式血液型の I^A と I^B → AB型 |
2遺伝子が独立に分離するとき——9 : 3 : 3 : 1 の正体
2つの対立形質がそれぞれ別の染色体上の遺伝子にのっているとき、両方のヘテロ(RrYy 同士)を交配すると F₂ の表現型の比は 9 : 3 : 3 : 1 になります。一見複雑ですが、これは各形質ごとの 3 : 1 を独立に掛け合わせたものにすぎません。片方の形質の分離ともう片方の分離が互いに影響し合わない(独立の法則)ため、確率の積の規則で組み合わせられるからです。
🔍 F₂ の 9 : 3 : 3 : 1 の導出
- まず1つの形質に注目する
丸粒 × 皺粒の F₁(Rr)同士では、F₂ の遺伝子型は RR : Rr : rr = 1 : 2 : 1 なので、表現型は丸粒 : 皺粒 = 3/4 : 1/4。
- 独立なら掛け算でよい
もう1つの形質も同じように 3/4 : 1/4 で分離し、2つの遺伝子は独立に分配されるので積の規則が使える。
- 展開する
すなわち 9 : 3 : 3 : 1。左から「両方優性」「前者だけ優性」「後者だけ優性」「両方劣性」の順。
致死遺伝子による分離比のゆがみ
ある遺伝子型の個体が胚の発生途中などで死んでしまう場合、生き残った個体だけで比を数えることになるので、分離比が普段の値からゆがみます。有名な例がハツカネズミの黄色毛です。黄色は優性遺伝子 A^Y によりますが、ホモの A^Y A^Y は発生初期に死亡するため、黄色(A^Y a)同士を交配しても、生まれてくる子は黄色 : 黒色 = 2 : 1 になります。このように、観察される比が 3 : 1 や 1 : 2 : 1 からずれているときは「どこかの遺伝子型が死んでいるのではないか」と疑うのが遺伝学の定石です。
- 黄色(ヘテロ )同士の交配では、受精の時点の遺伝子型比は
- は発生初期に死亡するため、生まれてくる個体は になる
- ヒトでも同様の例があり、致死遺伝子がホモで発現すると個体が生存できないために 3 : 1 が観察されなくなる
複対立遺伝子——ABO式血液型
対立遺伝子とは同じ遺伝子座にある遺伝子の仲間のことで、普通は2種類を考えますが、3種類以上ある場合を複対立遺伝子といいます。ABO式血液型を決める遺伝子座には ・・ の3種類があります。 は A 型物質を、 は B 型物質を赤血球表面に作り、 はどちらの物質も作らないという機能の違いです。1個体がもてるのはこのうち2個なので、遺伝子型は 6 通り、表現型は A・B・AB・O の4種になります。 と は に対して優性で、 と の間は共優性(両方とも発現する)という関係です。
| 表現型(血液型) | 遺伝子型 | 赤血球表面の抗原 |
|---|---|---|
| A型 | 、 | A物質 |
| B型 | 、 | B物質 |
| AB型 | A物質とB物質(共優性) | |
| O型 | A抗原・B抗原はない(赤血球の抗原すべてがないわけではない) |
血液型 A 型の男性(父は O 型)と B 型の女性(母は O 型)の間に生まれる子の血液型の比を求めよ。
解答・解説
父が O 型()なので、男性は必ず を受け継いでおり遺伝子型は 。同様に女性は 。 の子は となり、**AB型 : A型 : B型 : O型 = 1 : 1 : 1 : 1**。両親が A 型と B 型でも O 型の子が生まれうるのが複対立遺伝子の面白いところ。
練習問題
オシロイバナの赤花(RR)と白花(rr)からできた F₁ 同士を交配した。F₂ の表現型の比を求めよ。
ヒント
中間雑種では F₂ の表現型の比が遺伝子型の比と一致する。
解答・解説
**赤 : ピンク : 白 = 1 : 2 : 1**( がそのまま表現型に現れる)
黄色マウス()同士の交配で生まれてくる子 12 匹について、黄色と黒色はそれぞれ何匹ずつと予想されるか。
ヒント
受精の時点では 1 : 2 : 1 だが、 は出生まで生き残れない。
解答・解説
出生個体は なので **黄色 8 匹、黒色 4 匹**(期待値であり、実際の12匹が必ずこの内訳になるわけではない。受精時には致死ホモ : 黄色ヘテロ : 黒色 = 1 : 2 : 1で、出生個体だけで数え直すと2 : 1)
ABO式血液型で、O 型の女性と AB 型の男性の間に生まれる子の血液型の比を求めよ。
ヒント
O 型の遺伝子型は 、AB 型は 。
解答・解説
の子は で、**A型 : B型 = 1 : 1**(O型もAB型も生まれない)
問1. 中間雑種(不完全優性)の遺伝で、F₁ 同士の交配による F₂ の表現型の比はいくらか。
問2. 黄色マウス(黄色は優性、致死作用はホモ接合のときに現れる)同士の交配で得られる出生個体の表現型の比はいくらか。
問3. ABO式血液型において と の関係はどれか。