生物間相互作用とニッチ

競争・捕食・共生の分類、ニッチと競争排除則、捕食者-被食者の変動を学ぶ。

この単元の目標
  • 種間関係を、それぞれの種にとっての利益・損失の符号で分類できる
  • ニッチの重なりと競争排除の関係を説明できる
  • 捕食者と被食者の個体数が位相をずらして変動する理由を説明できる
📑 目次
  1. 種間関係の分類
  2. ニッチと競争排除則
  3. 捕食者と被食者の個体数変動

種間関係の分類

2種の間の関係は、それぞれの種にとってプラスかマイナスかで整理できます。競争は資源を奪い合うので双方マイナス、捕食と寄生は一方が得をして他方が損、相利共生は双方が利益を受けます。大切なのは、これらの区別が絶対ではないことです。たとえばアリとアブラムシは蜜を介した相利共生ですが、状況しだいで利害の傾きは変わりえます。関係の符号は固定的な性質ではなく、環境や密度の条件の中で決まると考えるのが生態学的です。

相互作用種A種B例
種間競争−−同じ木の実を食べるリスとネズミ
捕食+−ヘビとネズミ
寄生+−宿主体内の回虫、植物病原菌
相利共生++マメ科植物と根粒菌、藻類と菌類(地衣類)
片利共生+0サメのそばを離れない小魚(残りを拾って得をする)

ニッチと競争排除則

ニッチとは、ある種が群落の中で占める位置的・機能的な地位のことで、どこに住むか(空間)、いつ活動するか(時間)、何を食べるか(食性)などの組で決まります。ガウスのゾウリムシ実験では、環境も餌も同じ条件下で2種を混ぜて飼育すると、競争に勝つ種が負ける種を絶滅させました。ここから競争排除則——ニッチが完全に一致する2種は同じ環境に共存できない——が導かれます。逆に、自然界でよく似た種が共存している場合は、食べる餌のサイズや活動時間帯をずらすニッチの分割が起きていると解釈できます。

捕食者と被食者の個体数変動

dNdt=rN−aNP,dPdt=bNP−mP\frac{dN}{dt} = rN - aNP, \qquad \frac{dP}{dt} = bNP - mP

これはロトカ=ヴォルテラの捕食モデルです。被食者 N は捕食者 P と出会うほど減り、捕食者 P は被食者 N に出会うほど増えます。その結果、被食者が増える → 遅れて捕食者が増える → 被食者が減る → 遅れて捕食者が減る、という時間差のある連鎖が生じ、両者の個体数は位相をずらした周期的変動を描きます。北米の毛皮取引の記録に残るカナダオオヤマネコ(捕食者)とアメリカユキウサギ(被食者)の約10年周期の変動は有名な実例です。

  • 競争排除則: 安定した環境で同じ制限資源を同じように利用する2種は、長期的に安定共存しにくい。ニッチ分割は共存を助けるが、わずかなずれだけで共存が保証されるわけではない
  • ニッチの分割の軸:食性(餌のサイズ)、時間(昼行・夜行)、空間(生息高度・層)の3つが代表格
  • 捕食変動の位相ずれ: この基本モデルでは捕食者のピークは被食者より遅れる。自然界では他の餌や気候なども影響するため、常に同じ周期や順序になるとは限らない
例題

同じ培養液で2種のゾウリムシを一緒に飼うと片方が絶滅した。しかし自然界ではよく似た2種が共存していることがある。この矛盾をニッチの観点から説明せよ。

解答・解説

単純な培養液では2種のニッチが完全に重なるため、競争排除が起きます。自然界は環境が複雑で、餌のサイズ・生息場所・活動時間などが微妙にずれているためニッチは完全には重ならず、共存できるのです。

競争排除則は「よく似た2種は共存できない」という意味ではありません。環境が安定し、同じ制限資源をめぐる競争が続くことなどが前提です。ニッチ分割や環境の不均一さが共存を支える場合があります。
練習問題
  1. 次の関係を分類せよ。(1) 栄養やすみかを交換して双方が利益を得るヒトと腸内細菌 (2) 枯れ木を分解して養分を得る木材腐朽菌 (3) 同じ池で不足している同じ餌を奪い合うコイとフナ。

    ヒント

    各種にとって利益(+)か不利益(−)か無関係(0)かを考える。

    解答・解説

    (1) 相利共生。(2) 菌は分解者として腐生している。枯れ木はすでに死んでいるため、生きた宿主に不利益を与える寄生とは区別する。(3) 種間競争。単に餌が同じだけでなく、餌が不足する条件が重要です。

  2. 捕食者と被食者の変動グラフで、捕食者のピークは被食者のピークより遅れて現れる。その理由を説明せよ。

    ヒント

    捕食者が増えるためには、まず何が増えていなければならないか。

    解答・解説

    捕食者は被食者を食べることでしか増やせないため、被食者の増加に遅れて増えます。同様に被食者の減少も、捕食者による捕食圧の上昇に遅れて反映されます。この時間差が位相のずれです。

  3. ニッチの分割の具体例を1つ挙げ、どんなずれが生じやすいかを述べよ。

    ヒント

    ガラパゴスフィンチの嘴のサイズと餌の関係などが有名。

    解答・解説

    例:ガラパゴスフィンチでは、嘴(くちばし)のサイズが違う種が異なる大きさの種子を食べる(食性の分割)。ほかに活動時間の昼夜のずれ、生息高度のずれなどもあります。

確認クイズ

問1. 相利共生の例として正しい組合せはどれ?

問2. 競争排除則が正しく成り立つのはどんなとき?

問3. ロトカ=ヴォルテラの捕食モデルで、被食者 N の増加を抑える項はどれ?

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