芳香族化合物と高分子
ベンゼンの性質、置換基の配向性、付加重合・縮合重合。
ベンゼンの特徴
- 安定な六員環(共鳴による)。付加よりも置換が起きやすい
- ニトロ化(HNO₃ + H₂SO₄)→ ニトロベンゼン → 還元 → アニリン
- スルホン化(発煙硫酸)→ ベンゼンスルホン酸
高分子
| 種類 | 例 | モノマー |
|---|---|---|
| 付加重合 | ポリエチレン / ポリ塩化ビニル | エチレン / 塩化ビニル |
| 縮合重合 | ナイロン6,6 | アジピン酸 + ヘキサメチレンジアミン |
| 縮合重合 | PET(ポリエステル) | テレフタル酸 + エチレングリコール |
| 天然高分子 | でんぷん・セルロース | グルコース(構成単位のもと。完全加水分解でも得られる) |
ナイロン6,6が縮合重合であることを、生成する副産物から説明せよ。
解答・解説
ジカルボン酸とジアミンの間で **H₂O が1分子ずつ離れて** アミド結合(−CONH−)ができるため縮合重合。付加重合(二重結合が開いてつながる)との違いがポイント。
ベンゼン環からPETへ:環と結合の役割を分ける
なぜ芳香族化合物と高分子を同じ節で学ぶのでしょう。PETのように、ベンゼン環を部品として鎖の中に組み込んだ高分子が身近にあるからです。ベンゼン環ではπ電子が環全体に広がり、6本の炭素間結合は等価です。この比較的剛直な部品と、回転しやすい結合をもつ部品をつなぐと、鎖の動きやすさや並びやすさが変わります。ペットボトルと繊維に同じPETが使われても、加工で鎖の配向や結晶性が異なり、材料の性質も変わります。
芳香族性は「香りがある」という日常語の意味ではありません。ここではベンゼン環の安定な電子状態を出発点にします。また、PETの環が残ったまま鎖がつながるのは、重合に使われるのが環の外側のカルボキシ基やヒドロキシ基だからです。環の性質と、官能基が作る結合を別々に見ると構造式が読みやすくなります。
| 着目点 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 置換基の位置 | 環の1位に対して2位がオルト、3位がメタ、4位がパラ | テレフタル酸は1,4位にCOOH |
| 反応する官能基 | COOHとOHからエステル結合ができる | PETの主鎖に−COO− |
| 繰り返し単位 | 鎖を繰り返して構成する最小の構造単位 | 単量体そのものとは組成が異なる場合がある |
ベンゼンのHを2個ともCH₃に置き換えたキシレンの位置異性体は何種類か。1つ目のCH₃を1位に固定し、2つ目の位置を整理せよ。
解答・解説
候補の2〜6位のうち、環を裏返して重ねると2位と6位、3位と5位が等価で、4位だけが独立。よって **3種類**、1,2-(オルト)、1,3-(メタ)、1,4-(パラ)。紙の上の見た目の向きではなく、結合関係が同じかを判定する。
重合の質量収支:何が鎖に残り、何が外れるか
付加重合では、代表的には単量体の炭素間二重結合が開いて炭素鎖が延び、単量体の原子はほぼすべて鎖に残ります。一方、ジカルボン酸とジオールの縮合重合では、エステル結合を1本作るごとに水が1分子分外れます。ビーズの「つなぎ目」を数えるように、原子が残る場所と小分子として離れる場所を追うと、繰り返し単位のモル質量を暗記せず求められます。ここでは構造と理論収支だけを扱い、製造や実験の手順は扱いません。
上式はPETの鎖内部の繰り返し単位の組成収支であり、左辺をそのまま有限本の鎖を作る反応式と読んではいけません。数字はC=12、H=1、O=16を用いたモル質量(g/mol)です。テレフタル酸とエチレングリコールの1組から水2分子分を引くと、繰り返し単位は192 g/molになります。ただし、一直線の有限の鎖には末端があり、末端補正が必要です。
テレフタル酸100分子とエチレングリコール100分子が、交互に連なった環のない1本の直鎖になる理想モデルを考える。各つなぎ目で水1分子が外れるとき、水の分子数と鎖のモル質量を求めよ。各モル質量は166、62、水18 g/molとする。
解答・解説
部品200個を1本にする結合は200−1 = **199本**なので、水は **199分子**。鎖のモル質量は100×166 + 100×62 −199×18 = **19218 g/mol**。繰り返し単位だけなら100×192=19200 g/molで、末端の分として18 g/mol多い。これは指定した両末端と理想直鎖のモデルでの結果。
ベンゼン環の1位と3位に同じ置換基がある二置換体は、オルト・メタ・パラのどれか。1位と5位に描いたものは別の位置異性体か。
解答・解説
**メタ**。1,5位は環を反転して1,3位と重なるため別の位置異性体ではない。位置の番号だけでなく環の対称性を考える。
エチレンC₂H₄の付加重合で、繰り返し単位を1000個含む鎖のモル質量を末端の寄与を無視して求めよ。C=12、H=1とする。
解答・解説
単位のモル質量は2×12+4×1=28 g/molなので **28000 g/mol**。付加重合では水が外れないため、18を引かない。
上のPET直鎖モデルで、テレフタル酸10分子とエチレングリコール10分子から1本の鎖ができる場合、水の分子数と鎖のモル質量は?
解答・解説
つなぎ目は20−1=**19本**なので水は **19分子**。10×166+10×62−19×18 = **1938 g/mol**。192×10+18でも検算できる。
問1. PETの主鎖に含まれる結合はどれか。
問2. 1,4-二置換ベンゼンの位置の名称は?
問3. 環のない1本の直鎖で、単量体由来の部品20個の間のつなぎ目はいくつか。