ハロゲンと希ガスの性質・反応

17族の酸化力の順序とその理由、ハロゲン間の置換反応、18族の閉殻構造と利用を学ぶ。

この単元の目標
  • ハロゲン単体の性質が族の下ほどどう変化するかを説明できる
  • 酸化力の順序を根拠に、ハロゲン間の置換反応の可否を判定できる
  • 希ガスが単原子分子で反応性が低い理由を電子配置から説明できる
📑 目次
  1. ハロゲン(17族)の単体
  2. ハロゲン間の置換反応
  3. 希ガス(18族)の性質

ハロゲン(17族)の単体

ハロゲンは最外殻の電子があと1個そろえば閉殻になる元素で、2原子分子 X₂ として存在し、電子を1個受け取ってハロゲン化物イオン X⁻ になろうとします。この「電子を受け取る力」が酸化力で、F₂ > Cl₂ > Br₂ > I₂ の順に弱くなります。この順序は原子半径だけでは説明できず、単体の結合を切るエネルギー、電子親和力、陰イオンの水和などを合わせた結果です。特に電子親和力は F より Cl のほうが大きいため、酸化力と混同しないようにします。単体の常温での状態も、気体(F₂, Cl₂)→ 液体(Br₂)→ 固体(I₂)と規則的に変化します。

単体常温での状態・色おもな性質・反応
F2\mathrm{F_2}淡黄色の気体最強の酸化剤。水とも激しく反応する
Cl2\mathrm{Cl_2}黄緑色の気体水に溶けて塩素水。漂白・殺菌作用
Br2\mathrm{Br_2}赤褐色の液体揮発しやすい。酸化力は塩素より弱い
I2\mathrm{I_2}黒紫色の固体昇華する。デンプンと青紫色を呈する

ハロゲン間の置換反応

Cl2+2Br−→2Cl−+Br2,Br2+2I−→2Br−+I2\mathrm{Cl_2 + 2Br^- \rightarrow 2Cl^- + Br_2}, \qquad \mathrm{Br_2 + 2I^- \rightarrow 2Br^- + I_2}

🔍 なぜ酸化力は F₂ > Cl₂ > Br₂ > I₂ の順なのか

  1. Step 1: 酸化力=電子を受け取る力
    X2+2e−→2X−\mathrm{X_2 + 2e^- \rightarrow 2X^-}

    ハロゲン単体が相手から電子を奪う能力が酸化力。水溶液中では単体から水和した陰イオンになるまでの全体のエネルギー変化を考える。

  2. Step 2: 周期が下がるほど原子は大きい
    r(F)<r(Cl)<r(Br)<r(I)r(\mathrm{F}) < r(\mathrm{Cl}) < r(\mathrm{Br}) < r(\mathrm{I})

    最外殻がひとつずつ遠ざかるため、原子半径は単調に増大する。

  3. Step 3: 原子半径だけでなく水和も考える
    酸化力:結合解離・電子親和力・水和などの総合結果\text{酸化力:結合解離・電子親和力・水和などの総合結果}

    F₂ の結合が比較的弱く、F⁻ の水和による安定化が大きいことなどが F₂ の強い酸化力に寄与する。電子親和力だけの大小とは一致しない。

  4. Step 4: 結果としての酸化力の順序
    F2>Cl2>Br2>I2\mathrm{F_2} > \mathrm{Cl_2} > \mathrm{Br_2} > \mathrm{I_2}

    通常の水溶液中では Cl₂、Br₂、I₂ のこの順序から置換反応を予測できる。F₂ は水とも反応するため同じ水溶液の実験としては扱わない。この一方通行性が反応の可否を判定する最大の武器になる。

実験的にも確かめられます。塩素水をヨウ化カリウム水溶液に加えると溶液は黄褐色になり、デンプン溶液で青紫色を示すのでヨウ素 I2\mathrm{I_2} が生じたとわかります。逆にヨウ素水を塩化ナトリウム水溶液に加えても何も起こりません。反応の可否から酸化力の順序を実験的に「逆照射」できるのがポイントです。

例題

塩素水を臭化ナトリウム水溶液に加えると、溶液の色はどうなるか。イオン反応式とともに説明せよ。

解答・解説

**赤褐色(黄褐色)**を帯びる。酸化力の強い塩素が臭化物イオンを酸化し、Cl2+2Br−→2Cl−+Br2\mathrm{Cl_2 + 2Br^- \rightarrow 2Cl^- + Br_2} により臭素 Br2\mathrm{Br_2} が遊離するため。色の濃さは濃度にも依存する。

希ガス(18族)の性質

ヘリウムは最外殻に2個、それ以外の希ガスは8個の電子をもつ閉殻構造です。電子を失いにくく、通常の条件では他の原子と結合してさらに安定化しにくいため、反応性が低く単原子分子として存在します。原子間の弱い分散力は低い沸点の理由であり、単原子で存在する理由とは区別します。とくにヘリウムは沸点が最も低く、超伝導磁石の冷媒に利用されます。

He:1s2,Ne:1s22s22p6,Ar:1s22s22p63s23p6\text{He}: 1s^2, \qquad \text{Ne}: 1s^2 2s^2 2p^6, \qquad \text{Ar}: 1s^2 2s^2 2p^6 3s^2 3p^6
元素特色利用例
He沸点が最も低い。燃えない浮揚ガス気球・MRI の超伝導磁石の冷媒
Ne放電すると赤橙色に光るネオンサイン
Ar不活性で希ガスの中では大気中に最も豊富アーク溶接の保護ガス・電球の充填
Xe放電で強い白色光キセノンランプ・車のヘッドライト
希ガスは「絶対に反応しない」わけではありません。1962 年に XePtF6\mathrm{XePtF_6} が報告されて以来、XeF2\mathrm{XeF_2} や XeF4\mathrm{XeF_4} などキセノンのフッ化物が知られています。「反応しにくい」の理由を閉殻構造から説明できるようにしておきましょう。
練習問題
  1. 塩素水をヨウ化カリウム水溶液に加えたときのイオン反応式を書き、確認方法を添えよ。

    ヒント

    酸化力の強いほうが弱いほうのイオンを酸化する。

    解答・解説

    Cl2+2I−→2Cl−+I2\mathrm{Cl_2 + 2I^- \rightarrow 2Cl^- + I_2}。遊離したヨウ素により溶液は黄褐色となり、デンプン溶液で青紫色を示すことで確認できる。

  2. ヨウ素は水にほとんど溶けないのに、ヨウ化カリウム水溶液にはよく溶ける。I3−\mathrm{I_3^-}(三ヨウ素イオン)の生成から説明せよ。

    ヒント

    I₂ が I⁻ と結合して大きなイオンをつくる。

    解答・解説

    I2+I−⇄I3−\mathrm{I_2 + I^- \rightleftarrows I_3^-} により水に溶けやすい三ヨウ素イオンが生じるため。ヨウ素液の調製にヨウ化カリウムを加えるのはこのため。

  3. 希ガスが単原子分子として存在する理由を、電子配置の観点から2文程度で説明せよ。

    ヒント

    最外殻電子の数に注目。

    解答・解説

    最外殻が閉殻(He は 2 個、その他は 8 個)で電子的に安定なため、電子を失いにくく、通常は共有結合でさらに安定化しにくいため、常温では独立した原子として存在する。分子間力が弱いことは低い沸点の説明になる。

確認クイズ(ハロゲンと希ガス)

問1. 常温で液体として存在するハロゲン単体はどれか。

問2. 臭化物イオンを酸化して臭素を遊離できるのはどれか。

問3. 希ガスについて誤っている記述はどれか。

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