この単元の目標- 隣り合う差を足すと途中の項が消える理由を説明できる
- 部分分数分解を通分で確かめ、有限和の計算に使える
- 和の開始番号とずれ幅に応じて、残る端項を正しく書ける
- 小さい項数での直接計算と差分によって和の式を検算できる
📑 目次
- 1 合計なのに、途中を計算しなくてよいのはなぜ?
- 2 階差を足す向き、和を差に直す向き
- 3 例題1:多項式も「前後の差」になる
- 4 分数の積を、引き算にほどく
- 5 2つ先と消えるなら、端にも2項残る
- 6 答えを疑うための二つの検算
- 練習:まず端項だけを予想しよう
1 合計なのに、途中を計算しなくてよいのはなぜ?
歩数計が朝120歩、昼450歩、夕方730歩を示したとします。朝から昼は330歩、昼から夕方は280歩なので、朝から夕方は610歩です。同じ結果は730−120でも求められます。昼の450は一度足され、一度引かれるからです。「変化の合計は最後と最初の差」という仕組みを、数列の和にも使います。
以下では実数の数列と有限和を扱います。n,m は正の整数で m≤n とし、∑k=mn は k=m,m+1,…,n を代入した項を足す記号です。項数は n−m+1 個。以後の抽象的な数値には単位はなく、すべて近似でない等式です。
2 階差を足す向き、和を差に直す向き
数列 ak の隣り合う差 ak+1−ak が階差です。差を足すときには、まず3項を書いてみましょう。真ん中の am+1,am+2 は正負の組になりますが、最初の負の項 −am と最後の正の項は組を持ちません。
🔍 途中が消える様子を省略せずに見る
同じ番号の項どうしだけが消える。
最終の k は n。そこで現れる正の項は a_n ではなく a_{n+1}。
引き算の向きを逆にした形も使う。右辺の符号も逆になる。
このように中間の項が相殺されて短くなる和を、伸縮する望遠鏡になぞらえて「望遠鏡和」と呼びます。既知の階差から数列を復元するだけでなく、足したい式を「何かの差」に作り替えるのがこのレッスンの中心です。
「全部消える」のではありません。∑k=1n−1(ak+1−ak)=an−a1 ですが、上限が n なら an+1−a1 です。上限を見て最後の括弧を実際に書く習慣をつけましょう。空の和を0とする約束を使えば、前者は n=1 にも対応します。 3 例題1:多項式も「前後の差」になる
立方数の差を展開すると二次式になります。次数が一つ下がるので、二次式の和に立方数の差が隠れていないか探せます。まず (k+1)3−k3 を手元で展開し、次の式と比べてください。
例題1 開始番号が1とは限らない
S=∑k=25(3k2+3k+1) を、平方数の和の公式を使わずに求めよう。
解答・解説
各項は (k+1)3−k3。したがって S=(33−23)+(43−33)+(53−43)+(63−53)=63−23=208。最初の負の端項は −13 ではなく −23。独立に元の式へ代入すると 19+37+61+91=208 で一致します。
4 分数の積を、引き算にほどく
分母が k(k+1) だと、そのまま多数の分数を通分するのは大変です。ところが 1/k と 1/(k+1) を引くと、分子に残るのは (k+1)−k=1。この逆向きの見方が部分分数分解です。分数を小さな分数の和や差に分け、隣の項と消せる形にします。
🔍 差の間隔が係数を決める
ここでは k は正の整数なので、どちらの分母も0ではない。
一般に d が0でなく、k と k+d が0でない範囲で成り立つ。
以下の和では d も正の整数とする。前に掛ける 1/d を忘れない。
例題2 1項ずつずらして、両端を拾う
Tn=∑k=2nk(k+1)1 を求めよう。ただし n≥2 とする。
解答・解説
分解すると Tn=∑k=2n(k1−k+11)=21−n+11=2(n+1)n−1。正の分数の分母は2からn、負の分数の分母は3からn+1。共通の3からnが消え、正の1/2と負の1/(n+1)が残ります。最小の n=2 では共通部分は空で、T2=1/6=1/2−1/3。n=4 なら直接計算で 1/6+1/12+1/20=3/10、式でも 1/2−1/5=3/10 です。
5 2つ先と消えるなら、端にも2項残る
1/k−1/(k+2) では隣の括弧とはすぐ消えません。正の分母の列と負の分母の列を上下に並べると、2つずれているとわかります。小さい側で二つ、大きい側で二つが共通部分からはみ出すのです。
| 和の部分 | 分母の範囲(k=1からn、n≥2) | 相殺後に残るもの |
|---|
| 正の部分 | 1, 2, …, n | 1 と 1/2 |
| 負の部分 | 3, 4, …, n+2 | −1/(n+1) と −1/(n+2) |
| 共通部分 | 3からn(n=2なら空) | 正負で相殺される |
例題3 ずれ幅2の望遠鏡和
Un=∑k=1nk(k+2)1 を求め、n=3 で確かめよう。n は正の整数とする。
解答・解説
分解には係数1/2が必要です。n≥2 では Un=21∑k=1n(k1−k+21)=21(1+21−n+11−n+21)。n=3 の括弧は (1−31)+(21−41)+(31−51) で、消えるのは −1/3 と +1/3。結果は 21(23−41−51)=4021。元の和も 1/3+1/8+1/15=21/40 です。n=1 は別に確認すると、公式の括弧の +1/2 と −1/2 が消えて 21(1−1/3)=1/3 となり、同じ式が使えます。
例題3を 21(1−n+21) とすると、+1/2 と −1/(n+1) を落としています。分解の係数と、相殺されない端項の数は別々に確認します。また分解は分母が0の項を救済しません。たとえば 1/{k(k−1)} の和に k=1 を含めることはできません。 6 答えを疑うための二つの検算
長い式をもう一度同じ方法で計算するより、別の角度で調べましょう。初めの和 Sm が元の1項と合うか、次に増えた量 Sn−Sn−1 が元の第n項と合うかを確認します。この二つが全範囲で成り立てば、1項ずつ積み上げた和と一致します。
🔍 例題3の答えを差分で検証
初めの和は元の第1項に一致。
共通の定数と 1/(n+1) が消え、増えた分が元の第n項になる。
作業の順番は「通分して分解を確認→最初と最後の括弧を書く→正負で共通する番号を探す→端項を残す→小さい項数と差分で検算」。ここで扱ったのは有限和です。項数を無限に増やす話には、別に極限の検討が必要です。
練習:まず端項だけを予想しよう
練習問題
∑k=37{(k+1)2−k2} を求めよう。
ヒント
最初の括弧と最後の括弧を書く。
解答・解説
82−32=55。最初は 42−32、最後は 82−72 なのでこの二つの端が残ります。展開した各項を足しても 7+9+11+13+15=55 です。
∑k=3nk(k+1)2 を求めよう。n≥3 とする。
解答・解説
2∑k=3n(k1−k+11)=2(31−n+11)=3(n+1)2(n−2)。始点が3なので正の端項は 2/3。n=3 で元の1項と同じ 1/6 になります。
∑k=24k(k+2)1 を求めよう。
解答・解説
21{(21−41)+(31−51)+(41−61)}=21(21+31−51−61)=307。正負の 1/4 だけが相殺されます。直接計算も 1/8+1/15+1/24=7/30 です。
a1=2、ak+1−ak=1/{k(k+1)}(k≥1)のとき、an を求めよう。
解答・解説
n≥2 で an=2+∑k=1n−1(k1−k+11)=3−n1。第n項に到着するには階差をn−1個足します。n=1 でも 3−1=2 で初項と一致するので、すべての正の整数nで使えます。
確認クイズ:何が残る?
問1. ∑k=4n(bk−bk+1)(n≥4)の値は?
問2. 正の整数kについて、1/{k(k+3)} の正しい分解は?
問3. ∑k=1n(k1−k+21)(n≥2)で相殺後に残るものは?
問4. ある有限和の候補式を、最初の項から順に正しいと確認する方法は?