1次変換と行列

行列で表される平面の1次変換(回転・対称移動・せん断)を学ぶ。

この単元の目標
  • 1次変換を行列で表し計算できる
  • 回転・対称移動の表現行列を使いこなせる
📑 目次
  1. 1次変換の定義
  2. 重要な変換の表現行列
  3. 行列式と面積
  4. 2本の矢印の行き先だけで、すべての点が決まる理由
  5. せん断:面積が変わらなくても、形は変わる

1次変換の定義

(x′y′)=(abcd)(xy)\begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}

ベクトルの和と実数倍を保つ変換を1次変換といいます。原点は原点に移り、直線の像は直線または1点です。合成は行列の積、繰り返しは行列の冪で表されます。回転角の正の向きは反時計回りとします。

重要な変換の表現行列

変換行列
原点まわり θ 回転(cos⁡θ−sin⁡θsin⁡θcos⁡θ)\begin{pmatrix} \cos\theta & -\sin\theta \\ \sin\theta & \cos\theta \end{pmatrix}
x軸に関する対称移動(100−1)\begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}
直線 y = x に関する対称移動(0110)\begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}
原点に関して対称移動(−100−1)\begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}

行列式と面積

det⁡A=ad−bc,S′=∣det⁡A∣ S\det A = ad - bc, \qquad S' = |\det A| \, S
例題

点 (1, 0) を原点まわり 90° 回転した点を求めよ。

解答・解説

(0−110)(10)=(0,1)\begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} = (0, 1)

det A = 0 のとき、平面全体の像は1本の直線または原点だけになります(零行列なら原点だけ)。このとき A は正則でなく、逆変換は存在しません。

2本の矢印の行き先だけで、すべての点が決まる理由

方眼紙を一様に引き伸ばしたり、横にずらして平行四辺形の網目にしたりする場面を考えます。右へ1歩の矢印と上へ1歩の矢印の行き先が決まれば、「右へ2歩、上へ3歩」の行き先も、移った矢印を2本と3本つないで決まります。この「足し算と実数倍を保つ」という規則が1次変換の本体です。曲げたり、一部分だけ伸ばしたりする変形は、この規則を満たすとは限りません。

🔍 行列の各列は単位の矢印の像

  1. 座標を2方向の矢印に分ける
    e1=(10),e2=(01),(xy)=xe1+ye2\mathbf e_1=\begin{pmatrix}1\\0\end{pmatrix},\quad \mathbf e_2=\begin{pmatrix}0\\1\end{pmatrix},\quad \begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=x\mathbf e_1+y\mathbf e_2
  2. 和と実数倍を保つ性質を使う
    T(xe1+ye2)=xT(e1)+yT(e2)T(x\mathbf e_1+y\mathbf e_2)=xT(\mathbf e_1)+yT(\mathbf e_2)

    Tは1次変換、xとyは任意の実数。

  3. 像を列として並べる
    T(e1)=(ac), T(e2)=(bd) ⟹ T(xy)=(abcd)(xy)T(\mathbf e_1)=\begin{pmatrix}a\\c\end{pmatrix},\ T(\mathbf e_2)=\begin{pmatrix}b\\d\end{pmatrix}\ \Longrightarrow\ T\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a&b\\c&d\end{pmatrix}\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}

    1列目が右への単位矢印、2列目が上への単位矢印の像。行として並べない。

原点が固定されることは必要条件ですが、それだけで1次変換とはいえません。たとえば(x,y)→(x²,y)は原点を固定しても、(2,0)の像が(1,0)の像の2倍になりません。また原点を動かす平行移動は、ここで扱う2×2行列だけの1次変換ではありません。
例題:2本の矢印から行列を復元する

1次変換Tが(1,0)を(2,1)へ、(0,1)を(−1,3)へ移す。Tの表現行列と、点(3,−2)の像を求めよ。

解答・解説

像を列に並べて A=(2−113)A=\begin{pmatrix}2&-1\\1&3\end{pmatrix}。点の像は 3(2,1)−2(−1,3)=(8,−3)3(2,1)-2(-1,3)=(8,-3)。行列で計算しても x′=2⋅3+(−1)(−2)=8x'=2\cdot3+(-1)(-2)=8、y′=1⋅3+3(−2)=−3y'=1\cdot3+3(-2)=-3 となる。

せん断:面積が変わらなくても、形は変わる

積み重ねたカードを、上のカードほど横に大きくずらす様子がせん断の直感です。変換(x,y)→(x+ky,y)は、高さyに比例して横にkyだけ動かします。実数kがせん断の強さを表し、x軸上の点は動きません。単位正方形の上辺は横にずれますが、底辺1、高さ1の平行四辺形になるので面積は1のままです。

Sk=(1k01),det⁡Sk=1,Sk−1=S−kS_k=\begin{pmatrix}1&k\\0&1\end{pmatrix},\qquad \det S_k=1,\qquad S_k^{-1}=S_{-k}

行列式の絶対値は面積の倍率であって、辺の長さの倍率ではありません。せん断でも角度や斜めの辺の長さは一般に変わります。また、行列式が負なら向きが反転しますが、面積自体が負になるわけではないので、面積には絶対値を使います。

例題:せん断後の頂点と面積を確かめる

三角形OABの頂点をO(0,0)、A(2,0)、B(0,3)とする。せん断(x,y)→(x+2y,y)の後の頂点と面積を求めよ。

解答・解説

O′(0,0)、A′(2,0)、B′(6,3)。底辺O′A′は2、高さは3なので面積は2×3÷2=3で、元の面積3と同じ。一方、OBは長さ3からO′B′の長さ√45へ変わるので、面積保存と長さ保存は別の性質である。

  1. 原点、(1,0)、(0,1)の像を調べ、列の意味をつかむ。
  2. 点は列ベクトルとして右側に置き、各行と掛け合わせる。
  3. せん断なら高さ、対称移動なら対称軸上の点など、変わらない量を検算に使う。
  4. 面積を求めるなら行列式の絶対値を掛け、長さの変化と混同しない。
像・行列・図形を行き来する練習
  1. 1次変換が(1,0)を(1,2)、(0,1)を(3,−1)へ移す。(−1,2)の像を求めよ。

    解答・解説

    和と実数倍を保つので−1×(1,2)+2×(3,−1)=(5,−4)。行列の列はそれぞれ(1,2)、(3,−1)となる。

  2. せん断(x,y)→(x−3y,y)で(4,2)はどこへ移るか。元に戻す式も書け。

    解答・解説

    像は(4−6,2)=(−2,2)。高さyは不変なので、逆変換は(x′,y′)→(x′+3y′,y′)。実際に(−2+6,2)=(4,2)。

  3. 行列 A=(200−3)A=\begin{pmatrix}2&0\\0&-3\end{pmatrix} によって、面積5の三角形は面積いくつになるか。

    解答・解説

    det A=−6で絶対値は6。面積は6×5=30。x方向2倍、y方向3倍と反転が起きるので、面積の倍率は正の6倍となる。

行列を図形として読む

問1. 2×2行列Aの第2列が表すのは?

問2. どの変換が1次変換か?

問3. 行列式が−2の1次変換で正しいのは?

📝 メモこの端末のみに保存
メモ欄はページ読み込み後に使えるようになります。