行列の応用

逆行列で連立一次方程式を解き、点の移動の合成を行列積で処理し、正則性を判定する。

この単元の目標
  • 逆行列を公式と掃き出し法で求め、連立一次方程式の解を行列形式で書ける
  • 点の移動の合成を表現行列の積で計算できる
  • 行列式による正則性の判定と、解が一意に定まる条件を説明できる
📑 目次
  1. 連立一次方程式の行列形式
  2. 逆行列で解く仕組み
  3. 点の移動の合成
  4. 練習問題
  5. 確認クイズ

連立一次方程式の行列形式

2 元連立一次方程式は、係数行列 A・未知数ベクトル x・定数ベクトル b を使って Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} という一つの行列方程式にまとめられます。この形にすると、解く操作が「両辺に A の逆行列を掛ける」という統一的な手続きになり、3 元以上やコンピュータでの計算にもそのまま拡張できます。逆行列が存在しないときは、解なしまたは解が無数にあるケースに分かれていくのが流れです。

対象行列形式
2 元連立方程式A=(abcd)A = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}, x=(xy)\mathbf{x} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}, b=(pq)\mathbf{b} = \begin{pmatrix} p \\ q \end{pmatrix}
解(A が正則)x=A−1b\mathbf{x} = A^{-1}\mathbf{b}
逆行列A−1=1ad−bc(d−b−ca)A^{-1} = \dfrac{1}{ad - bc}\begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \end{pmatrix}

逆行列で解く仕組み

🔍 x = A^(-1)b の導出

  1. 左から A の逆行列を掛ける
    A−1(Ax)=A−1bA^{-1}(A\mathbf{x}) = A^{-1}\mathbf{b}
  2. 結合法則でまとめる
    (A−1A)x=A−1b(A^{-1}A)\mathbf{x} = A^{-1}\mathbf{b}

    行列の積には結合法則が成り立つ。掛ける順序(左右)を守るのが要点

  3. 単位行列に潰す
    x=A−1b\mathbf{x} = A^{-1}\mathbf{b}

    A−1A=EA^{-1}A = E より左辺は x だけが残る。det A = 0 なら A−1A^{-1} が存在しないのでこの手続きは使えない

AB = E となる B は A が正則のときに限り B=A−1B = A^{-1} に一致します。数値を入れる前に対称性や det の値を確認しておくと、逆行列の計算ミスを早めに発見できます。

点の移動の合成

1 次変換 f の表現行列を F、続く g の表現行列を G とすると、合成 g∘f の表現行列は積 GF になります。順序が「後から適用するものが左」なのは、列ベクトルが右側から作用されるためです。回転・対称移動・せん断などの基本移動を組み合わせれば、複雑な図形の変形も行列の積一発で記述でき、逆の移動は逆行列で表せます。

g after f:p′=G(Fp)=(GF)p,undo f:p=F−1p′\text{g after f}: \quad \mathbf{p}' = G(F\mathbf{p}) = (GF)\mathbf{p}, \qquad \text{undo f}: \quad \mathbf{p} = F^{-1}\mathbf{p}'
例題: 回転の合成と逆変換

点 P を原点まわり 90° 回転したあと、y 軸に関する対称移動で点 Q に移した。P(3, 1) に対応する Q の座標を求めよ。

解答・解説

GF=(−1001)(0−110)=(0110)GF = \begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix} なので Q=(1,3)Q = (1, 3)

練習問題

練習問題
  1. A=(2153)A = \begin{pmatrix} 2 & 1 \\ 5 & 3 \end{pmatrix} の逆行列を求めよ。

    ヒント

    ad−bcad - bc を先に計算してから公式に当てはめる。

    解答・解説

    det⁡A=1\det A = 1 より A−1=A^{-1} = **(3−1−52)\begin{pmatrix} 3 & -1 \\ -5 & 2 \end{pmatrix}**

  2. 連立方程式 2x+y=42x + y = 4, 5x+3y=115x + 3y = 11 を逆行列を使って解け。

    ヒント

    A−1b=(3−1−52)(411)A^{-1}\mathbf{b} = \begin{pmatrix} 3 & -1 \\ -5 & 2 \end{pmatrix}\begin{pmatrix} 4 \\ 11 \end{pmatrix}。

    解答・解説

    **(x,y)=(1,2)(x, y) = (1, 2)**

  3. 点 (2, 0) を原点まわり 90° 回転し、さらに原点まわり 90° 回転した点を求めよ。結果を F2F^2 で確かめよ。(発展)

    ヒント

    (0−110)2=−E\begin{pmatrix} 0 & -1 \\ 1 & 0 \end{pmatrix}^2 = -E。

    解答・解説

    90° × 2 = 180° 回転なので **(-2, 0)**。F2=(−100−1)F^2 = \begin{pmatrix} -1 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix} とも一致する

  4. A=(k23k−1)A = \begin{pmatrix} k & 2 \\ 3 & k - 1 \end{pmatrix} が正則でないような k の値を求めよ。(発展)

    ヒント

    正則でない ⟺ 行列式が 0。

    解答・解説

    k(k−1)−6=0k(k-1) - 6 = 0 より **k = 3, -2**

確認クイズ

確認クイズ

問1. A=(1234)A = \begin{pmatrix} 1 & 2 \\ 3 & 4 \end{pmatrix} について正しいのはどれか。

問2. 1 次変換 f のあとに g を施す合成変換の表現行列は?(f, g の表現行列を F, G とする)

問3. Ax=bA\mathbf{x} = \mathbf{b} で det⁡A=0\det A = 0 のとき、解の状況として考えられるものはどれか。

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