交流回路とインピーダンス

コイルとコンデンサーのリアクタンスから RLC 直列回路のインピーダンス・共振・位相を導く。

この単元の目標
  • リアクタンスの周波数依存性(XL = ωL、XC = 1/ωC)を説明し計算できる
  • RLC 直列回路のインピーダンスと電流を位相図から導ける
  • 共振の条件 f₀ = 1/(2π√LC) とその応用を説明できる
📑 目次
  1. 交流でコイルとコンデンサーがはたす役割
  2. RLC 直列回路のインピーダンス
  3. 共振——回路が最も電流を通す瞬間

交流でコイルとコンデンサーがはたす役割

直流では単なる巻線にすぎないコイルも、交流では電流の変化を妨げる誘導起電力をつくるので抵抗のように振る舞います。この「交流に対する妨げ」をリアクタンスと呼びます。逆にコンデンサーは直流を通しませんが、交流では充放電を繰り返すことで電流が「流れているように」なり、やはりリアクタンスをもちます。重要なのは、両者の大きさが周波数で変わること。コイルは高周波ほど通しにくく、コンデンサーは高周波ほど通りやすくなります。

XL=ωL=2πfL,XC=1ωC=12πfCX_L = \omega L = 2\pi f L, \qquad X_C = \frac{1}{\omega C} = \frac{1}{2\pi f C}
以下では過渡状態が終わった正弦波定常交流を扱います。L、C は理想素子、R > 0 は回路全体の抵抗で、各値は周波数によらず一定とします。V と I は実効値です。共振で電流が最大という比較は、電源の実効電圧を一定に保って周波数を変える場合です。
素子周波数を上げると電流と電圧の位相
抵抗 R変わらない同位相
コイル L(X_L)リアクタンスが増える(通しにくい)電流が電圧より 90° 遅れる
コンデンサー C(X_C)リアクタンスが減る(通りやすい)電流が電圧より 90° 進む

RLC 直列回路のインピーダンス

R、L、C を直列にして正弦波交流電圧 V(実効値)を加えます。各素子の電圧はそれぞれ V_R = RI、V_L = X_L I、V_C = X_C I ですが、V_L と V_C の位相は互いに逆向きなので、単純に大きさの和にはできません。そこで回転ベクトル(フェーザ)図を使います。横軸に V_R、縦軸に V_L − V_C をとると合成電圧 V は斜辺になり、三平方の定理でインピーダンス Z が出ます。

🔍 インピーダンス Z = √(R² + (X_L − X_C)²) の導出

  1. Step 1: 各素子の電圧の位相関係を確認する
    VR=RI  (I と同相),VL=XLI  (+90∘),VC=XCI  (−90∘)V_R = RI \;\text{(I と同相)}, \qquad V_L = X_L I \;(+90^\circ), \qquad V_C = X_C I \;(-90^\circ)

    コイルの誘導起電力は電流の変化を妨げる向きなので電流は遅れ、コンデンサーでは先に充電電流が流れるため電流は進みます。

  2. Step 2: 位相が同じものは足せる
    縦方向の合計=VL−VC=(XL−XC) I\text{縦方向の合計} = V_L - V_C = (X_L - X_C)\,I

    V_L と V_C は常に逆向きなので、差し引いたぶんだけが残ります。これが「直列でも電圧の大きさは足せない」理由です。

  3. Step 3: 三平方の定理で合成する
    V2=VR2+(VL−VC)2=[R2+(XL−XC)2]I2V^2 = {V_R}^2 + (V_L - V_C)^2 = \left[ R^2 + (X_L - X_C)^2 \right] I^2

    V_R と (V_L − V_C) は 90° の角度をなすので、ベクトル合成はピタゴラスの定理になります。

  4. Step 4: インピーダンスを定義する
    Z=VI=R2+(XL−XC)2Z = \frac{V}{I} = \sqrt{R^2 + (X_L - X_C)^2}

    Z は実効値の関係 V = ZI を与えます。R > 0 とし、電圧の位相から電流の位相を引いた φ は tanφ = (X_L − X_C)/R。RLC 直列回路の直流定常状態ではコンデンサーが電流を遮断するので、Z = R にはなりません。

共振——回路が最も電流を通す瞬間

X_L は周波数とともに増え、X_C は減るので、どこかで必ず X_L = X_C となる周波数があります。ここでは V_L と V_C がちょうど打ち消し合い、回路は抵抗だけがあるのと同じになります。この状態を共振といい、Z が最小(= R)、電流が最大、しかも電流と電圧の位相差が 0 になります。ラジオの同調回路は、受信したい局の周波数で共振させて電流を最大にする仕組みです。

🔍 共振周波数 f₀ = 1/(2π√LC) の導出

  1. Step 1: 共振の条件を立てる
    XL=XC⇒ω0L=1ω0CX_L = X_C \quad\Rightarrow\quad \omega_0 L = \frac{1}{\omega_0 C}

    誘導性と容量性のリアクタンスが等しくなるとき、位相の遅れと進みが完全に相殺されます。

  2. Step 2: ω₀² について解く
    ω02=1LC⇒ω0=1LC{\omega_0}^2 = \frac{1}{LC} \quad\Rightarrow\quad \omega_0 = \frac{1}{\sqrt{LC}}
  3. Step 3: 周波数に翻訳する
    f0=ω02π=12πLCf_0 = \frac{\omega_0}{2\pi} = \frac{1}{2\pi\sqrt{LC}}

    この形はばね振り子の T = 2π√(m/k) とそっくりです。L が「質量」、1/C が「ばね定数」に対応する、電気系と力学系の美しい対応関係になっています。

例題

R = 30 Ω、L = 0.10 H、C = 25 μF の直列回路に実効値 60 V・周波数 50 Hz の正弦波交流を加えた。インピーダンスと電流の実効値を求めよ(π = 3.14 として X_L ≈ 31 Ω、X_C ≈ 127 Ω とする)。また共振周波数を求めよ。

解答・解説

XL−XC=−96X_L - X_C = -96 Ω より Z=302+962≈Z = \sqrt{30^2 + 96^2} \approx **100 Ω**、I=60/100=I = 60/100 = **0.60 A**。共振周波数は f0=1/(2π0.10×25×10−6)≈f_0 = 1/(2\pi\sqrt{0.10 \times 25 \times 10^{-6}}) \approx **100 Hz**

練習問題
  1. 自己インダクタンス 0.20 H のコイルに周波数 50 Hz の交流を加えたときのリアクタンスを求めよ(π = 3.14)。

    ヒント

    XL=2πfLX_L = 2\pi f L

    解答・解説

    XL=2×3.14×50×0.20≈X_L = 2 \times 3.14 \times 50 \times 0.20 \approx **63 Ω**。周波数が 2 倍になれば X_L も 2 倍になります。

  2. 容量 8 μF のコンデンサーに周波数 50 Hz の交流を加えたときのリアクタンスを求めよ(π = 3.14)。

    ヒント

    XC=1/(2πfC)X_C = 1/(2\pi f C)

    解答・解説

    XC=1/(2×3.14×50×8×10−6)≈X_C = 1/(2 \times 3.14 \times 50 \times 8 \times 10^{-6}) \approx **400 Ω**。コンデンサーは低い周波数ほど通しにくい。

  3. 例題の R = 30 Ω、L = 0.10 H、C = 25 μF の RLC 直列回路が共振しているとき、電源の実効電圧 60 V に対してコイルの実効電圧 V_L は何 V になるか。

    解答・解説

    共振時 I=V/R=60/30=2.0I = V/R = 60/30 = 2.0 A、VL=XLI=63×2.0≈V_L = X_L I = 63 \times 2.0 \approx **126 V**。電源電圧 60 V より大きな電圧が素子に現れます(V_L と V_C が逆向きに打ち消し合っているため矛盾しない)。

確認クイズ(交流回路)

問1. 交流の周波数を上げたとき、コイルとコンデンサーのリアクタンスはどう変わるか。

問2. RLC 直列回路で V_R = 40 V、V_L = 90 V、V_C = 30 V のとき、電源電圧 V はいくらか。

問3. RLC 直列回路が共振しているとき、回路のようすとして正しいのはどれか。

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