電場と電位の重ね合わせ:2点電荷の符号とゼロ点

電場はベクトル、電位はスカラー。同じ2点電荷でも「ゼロになる場所」が異なる理由を、向きと距離から解き明かす。

この単元の目標
  • 各点電荷がつくる電場の向きを判断し、成分ごとに重ね合わせられる
  • 電位の基準を明示し、電荷の符号を含めた代数和を計算できる
  • 電場と電位がゼロになる条件を区別し、解が属する領域を検証できる
📑 目次
  1. 原理:向きを足す電場、符号を足す電位
  2. 導出:等しい異符号電荷の中点
  3. ゼロ点は、式より先に領域を判断する

原理:向きを足す電場、符号を足す電位

以下は真空中で固定された点電荷を扱い、観測点は電荷の位置を除きます。定数は k=1/(4πε0)=9.0×109 N m2/C2k=1/(4\pi\varepsilon_0)=9.0\times10^9\,\mathrm{N\,m^2/C^2} と近似。電位は無限遠を 0 V0\,\mathrm V とします。電場を調べる試験電荷は、もとの電荷分布を変えないほど小さいと考えます。

E⃗=∑ikQiri2r^i,V=∑ikQiri\vec E=\sum_i k\frac{Q_i}{r_i^2}\hat r_i,\qquad V=\sum_i k\frac{Q_i}{r_i}

ri>0r_i>0 は電荷 QiQ_i から観測点までの距離、r^i\hat r_i は電荷から観測点へ向く単位ベクトルです。このベクトル式では QiQ_i の符号を残します。大きさだけの式は Ei=k∣Qi∣/ri2E_i=k|Q_i|/r_i^2。正電荷からは外向き、負電荷へは内向きの矢印を描いてから合成しましょう。

量足し方単位
電場ベクトル和。直交成分ごとに加算するN/C=V/m\mathrm{N/C}=\mathrm{V/m}
電位電荷の符号を含む代数和。距離は常に正V=J/C\mathrm V=\mathrm{J/C}
試験電荷 q の受ける力F⃗=qE⃗\vec F=q\vec E。負電荷の力は電場と逆向きN\mathrm N

斜めの電場も重ね合わせられます。たとえば Ex=3.0 N/CE_x=3.0\,\mathrm{N/C}、Ey=4.0 N/CE_y=4.0\,\mathrm{N/C} なら合成電場の大きさは Ex2+Ey2=5.0 N/C\sqrt{E_x^2+E_y^2}=5.0\,\mathrm{N/C}。単純に 3+4=73+4=7 としてはいけません。一方、電位には空間的な向きがなく、そのまま符号付きで加算します。

導出:等しい異符号電荷の中点

🔍 中点で V=0 でも E≠0 となる理由

  1. 1:配置と距離
    +Q: x=−a,−Q: x=a,Q>0, a>0+Q:\ x=-a,\quad -Q:\ x=a,\quad Q>0,\ a>0

    中点 O は x=0。両電荷からの距離はともに a。+x 方向を右向きとします。

  2. 2:電場の向き
    E+,x=kQa2,E−,x=kQa2E_{+,x}=\frac{kQ}{a^2},\qquad E_{-,x}=\frac{kQ}{a^2}

    +Q から離れる向きも、−Q に近づく向きも右向き。電荷の符号が逆でも、ここでの電場の向きは同じです。

  3. 3:電場を合成
    E⃗O=2kQa2x^≠0⃗\vec E_O=\frac{2kQ}{a^2}\hat x\ne\vec 0

    a の単位は m、Q は C。結果は N/C で、向きは +x です。

  4. 4:電位を合成
    VO=kQa+k(−Q)a=0V_O=\frac{kQ}{a}+\frac{k(-Q)}{a}=0

    無限遠基準での電位は 0 V。一点で V=0 という条件は、周囲で V が変化しないという条件ではありません。

ゼロ点は、式より先に領域を判断する

電場がゼロになるには、2本の電場ベクトルが逆向きで同じ大きさでなければなりません。したがって2点電荷の有限距離の電場ゼロ点は連結直線上に限られます。同符号なら両電荷の間、異符号で絶対値が異なるなら小さい電荷の外側です。等しい異符号電荷には、有限距離の電場ゼロ点はありません。

無限遠基準の電位は、同符号の2電荷なら有限距離ではゼロになりません。異符号なら Q1/r1+Q2/r2=0Q_1/r_1+Q_2/r_2=0、つまり r1/r2=∣Q1∣/∣Q2∣r_1/r_2=|Q_1|/|Q_2| が条件です。等しい異符号電荷なら両電荷から等距離の点、すなわち垂直二等分面全体でゼロです。連結直線に限れば中点だけです。

例題1:同符号で電場が消える点と、その電位

x=0x=0 に +1.0 nC+1.0\,\mathrm{nC}、x=0.30 mx=0.30\,\mathrm m に +4.0 nC+4.0\,\mathrm{nC} を固定する。電場がゼロになる位置と、その位置の電位を求めよ。1 nC=10−9 C1\,\mathrm{nC}=10^{-9}\,\mathrm C とする。

解答・解説

両電荷の間でのみ電場が逆向き。0<x<0.300<x<0.30 として k×10−9/x2=k×4.0×10−9/(0.30−x)2k\times10^{-9}/x^2=k\times4.0\times10^{-9}/(0.30-x)^2。距離は正なので (0.30−x)/x=2(0.30-x)/x=2、よって x=0.10 mx=0.10\,\mathrm m。この点の電位は V=9.0/0.10+36/0.20=270 VV=9.0/0.10+36/0.20=270\,\mathrm V。電場はゼロでも電位はゼロではありません。

例題2:異符号電荷の電場ゼロ点と電位ゼロ点

x=0x=0 に +1.0 nC+1.0\,\mathrm{nC}、x=0.30 mx=0.30\,\mathrm m に −4.0 nC-4.0\,\mathrm{nC} を固定する。連結直線上の有限な位置で、(1) 電場がゼロ、(2) 電位がゼロになる位置をすべて求めよ。

解答・解説

(1) 間では同向。小さい電荷の外側 x=−a<0x=-a<0 で 1/a2=4/(a+0.30)21/a^2=4/(a+0.30)^2 より a+0.30=2aa+0.30=2a。したがって x=−0.30 mx=-0.30\,\mathrm m。右側では強い負電荷により近いため打ち消せません。(2) 1/∣x∣=4/∣x−0.30∣1/|x|=4/|x-0.30|、すなわち ∣x−0.30∣=4∣x∣|x-0.30|=4|x|。間では 0.30−x=4x0.30-x=4x より x=0.060 mx=0.060\,\mathrm m、左側では 0.30−x=−4x0.30-x=-4x より x=−0.10 mx=-0.10\,\mathrm m。右側から得る解は領域を満たさず不適。電場ゼロ点と一致しません。

誤解注意:電荷が逆符号なら電場も必ず逆向き、ではありません。 観測点で矢印を描いて確認します。大きさの等式を立てる前に逆向きか調べ、平方根を取ったら距離の正値条件を使いましょう。V=0V=0 の場所は電位の基準を変えると変わりますが、E⃗=0\vec E=0 の場所は変わりません。Ex=−dV/dxE_x=-dV/dx は電位の値でなく変化率を表します。
練習:向き・距離・符号を確かめる
  1. x=−1.0 mx=-1.0\,\mathrm m に +3.0 μC+3.0\,\mathrm{\mu C}、x=1.0 mx=1.0\,\mathrm m に −3.0 μC-3.0\,\mathrm{\mu C} がある。原点の電場と電位を求めよ。

    ヒント

    1 μC=10−6 C1\,\mathrm{\mu C}=10^{-6}\,\mathrm C。原点では両電場とも +x 向きです。

    解答・解説

    各電場の大きさは 9.0×109×3.0×10−6/1.02=2.7×104 N/C9.0\times10^9\times3.0\times10^{-6}/1.0^2=2.7\times10^4\,\mathrm{N/C}。合成は 5.4×104 N/C5.4\times10^4\,\mathrm{N/C}、+x 向き。電位は 2.7×104−2.7×104=0 V2.7\times10^4-2.7\times10^4=0\,\mathrm V。

  2. x=0x=0 に +2Q+2Q、x=dx=d に +Q+Q を置く(Q>0,d>0Q>0,d>0)。電場ゼロ点の位置を d を使って正確に表せ。

    ヒント

    0<x<d0<x<d で 2/x2=1/(d−x)22/x^2=1/(d-x)^2。正の平方根を取ります。

    解答・解説

    2/x=1/(d−x)\sqrt2/x=1/(d-x) より x=2d/(1+2)=(2−2)d≃0.586dx=\sqrt2d/(1+\sqrt2)=(2-\sqrt2)d\simeq0.586d。小さい +Q に近い点です。電荷比 2 を距離比 2 にしてはいけません。

  3. +x 向きに 200 V/m200\,\mathrm{V/m} の一様電場がある。x=0x=0 から x=0.50 mx=0.50\,\mathrm m へ q=−2.0 μCq=-2.0\,\mathrm{\mu C} を運ぶ。電位差と電場のする仕事を求めよ。

    ヒント

    ΔV=−ExΔx\Delta V=-E_x\Delta x、電場の仕事は W=−qΔVW=-q\Delta V です。

    解答・解説

    ΔV=−200×0.50=−100 V\Delta V=-200\times0.50=-100\,\mathrm V。W=−(−2.0×10−6)(−100)=−2.0×10−4 JW=-(-2.0\times10^{-6})(-100)=-2.0\times10^{-4}\,\mathrm J。負電荷には −x 向きの力がはたらくため、+x への移動に対する電場の仕事は負です。

確認クイズ:ゼロの意味

問1. 等しい大きさの異符号2点電荷について、有限距離の電場ゼロ点はどこか。

問2. すべての点の電位に同じ定数 100 V を加えるとどうなるか。

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