原子の構造と原子核

ボーアの水素原子模型、スペクトル、放射性崩壊と質量欠損。

📑 目次
  1. 光の色が飛び飛びになる理由
  2. 原子番号・質量数・放射能を整理する
  3. ボーアの水素原子
  4. 原子核と放射能
  5. 小ネタ: 半減期を自分の手で体験する

光の色が飛び飛びになる理由

原子がどんな色の光でも出せるのでなく特定の色を出すのは、内部で取りうるエネルギーが飛び飛びだからです。階段の段差だけを一度に下りるように、二つの準位の差に一致するエネルギーの光子を放出します。この比喩はエネルギーの離散性を表すもので、電子が実際の階段を移動するわけではありません。

水素原子の準位でエネルギーが負なのは、電子が原子核から無限に離れて静止する状態を 0 と決めているからです。負の準位から 0 へ上げるにはエネルギーが必要で、それが電離エネルギーです。電子をもつ原子の準位の話と、原子核そのものが変わる崩壊の話は区別しましょう。

Eγ=E上−E下=hν=hcλ>0,E電離,n=13.6n2 eVE_\gamma=E_{\text{上}}-E_{\text{下}}=h\nu=\frac{hc}{\lambda}>0,\qquad E_{\text{電離},n}=\frac{13.6}{n^2}\ \mathrm{eV}
この準位式は水素原子の近似式です。多電子原子へそのまま使えません。準位 −3.4 eV の電子が「負の光子」を出すわけでもなく、光子のエネルギーは必ず二つの準位の正の差です。
例題:水素の可視光の波長

水素原子の電子が n = 3 から n = 2 へ遷移するとき、放出光子のエネルギーと波長を求めよ。hc ≈ 1240 eV·nm とする。

解答・解説

準位差は 13.6(1/4−1/9) = 17/9 ≈ 1.89 eV。波長は 1240/(17/9) ≈ 656 nm。準位の負号を直接引く場合も、−13.6/9−(−13.6/4) と上の準位から下を引けば正になる。

例題:途中の時刻から半減期を数える

ある放射性核種の未崩壊核数について、時刻 0 の期待値が 6400 個、12 時間後が 800 個というモデルを考える。新たな供給はない。半減期と、20 時間後の期待値を求めよ。

解答・解説

800/6400 = 1/8 = (1/2)³ なので12時間は3半減期、半減期は4時間。20時間は5半減期だから 6400/32 = 200 個。12時間後の800個からさらに8時間=2半減期として800/4としても同じ。実際の観測個数は確率的に揺らぐ。

原子番号・質量数・放射能を整理する

原子番号 Z は陽子数、質量数 A は陽子数と中性子数の和です。同じ Z で中性子数が異なるものが同位体で、すべての同位体が放射性とは限りません。質量数は整数の個数であり、原子の質量を kg や u で測った値そのものではありません。

N(t)=N0e−λdt,λd=ln⁡2T,R(t)=λdN(t)N(t)=N_0e^{-\lambda_d t},\qquad \lambda_d=\frac{\ln 2}{T},\qquad R(t)=\lambda_d N(t)

崩壊定数 λd は確率そのものではなく、未崩壊の核が崩壊する確率の率です。時間を秒で測れば単位は s⁻¹。その時点で未崩壊の核1個が、その後の短時間 Δt に崩壊する条件付き確率は、λdΔt が十分小さいとき約 λdΔt です。有限時間では 1−exp(−λdΔt) となり、確率が1を超えることはありません。一定の割合が減るので、一定の個数を毎回引くのではなく指数的に減ります。R は単位時間あたりの崩壊数の期待値で、時間を秒で測れば単位は Bq(1秒あたり1崩壊)。波長 λ と混同しないよう添字を付けています。

半減期で半分になるのは元の核種の未崩壊核数です。崩壊生成物も残るので、容器内の全物質が半分消えるという意味ではありません。また放射能 Bq だけでは人体の影響は決まらず、線種や受けるエネルギーなどが関係します。本節は数理モデルとデータの読解のみを扱います。

質量欠損は結合した分のエネルギー

核を結びついた状態からばらばらの陽子・中性子にするにはエネルギーが必要です。その結合エネルギーの分だけ、結びついた核の質量は構成粒子の質量の和より小さくなります。Δm は「ばらばらの粒子の質量の和−核の質量」と定義する正の差。核の質量と電子を含む原子質量を混ぜず、同じ粒子の数え方で比較する必要があります。

練習:準位・核の個数・確率
  1. 水素原子の n = 2 の電子を電離する最小エネルギーは。基底状態から n = 2 に上げるエネルギーも求めよ。

    解答・解説

    n = 2 は −13.6/4 = −3.4 eV なので、電離に 3.4 eV。基底状態は −13.6 eV だから励起には −3.4−(−13.6) = 10.2 eV が必要。

  2. 原子番号 6、質量数 14 の中性原子について陽子・中性子・電子の個数を答えよ。β⁻崩壊直後の娘核の原子番号と質量数は。

    解答・解説

    陽子6、中性子14−6 = 8、電子6。β⁻崩壊で中性子1個が陽子へ変わるため娘核は Z = 7、A = 14。放出電子は軌道電子を取り出したものではない。

  3. 半減期 10 s、初めの未崩壊核数の期待値 1000 個のモデルで、30 s 後の未崩壊核数と放射能の期待値を求めよ。ln2 ≈ 0.693 とする。

    解答・解説

    3半減期なので N = 1000/8 = 125 個。R = (0.693/10)×125 ≈ 8.66 Bq。核数が半分になるごとに同じ核種の放射能も半分になる。

ボーアの水素原子

  • ボーア模型では電子に特定の円軌道のみを許し、半径は rn=n2a0r_n = n^2 a_0(n は正の整数)。現代の量子力学では電子を決まった円軌道ではなく確率分布で表す
  • エネルギー準位: En=−13.6n2E_n = -\dfrac{13.6}{n^2} eV(基底状態 n=1 で −13.6 eV)
  • 低い準位への遷移で差にあたる光子を放出し輝線をつくる。高い準位への遷移では対応するエネルギーの光を吸収し、吸収線を生む

m > n の高い準位から低い準位へ遷移するとき、放出光子は hν=Em−En>0h\nu = E_m - E_n > 0 を満たします。バルマー系列は n = 2 へ落ちる遷移で、主要な線が可視域にあります(系列の限界は紫外域)。

原子核と放射能

崩壊放出Z(陽子数)A(質量数)
α崩壊ヘリウム核 ⁴₂He−2−4
β⁻崩壊電子 e⁻ と電子反ニュートリノ+1不変
γ崩壊光子不変不変
N=N0(12)t/T,Δmc2=E(質量欠損)N = N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{t/T}, \qquad \Delta m c^2 = E \text{(質量欠損)}
例題

半減期 5 日の放射性同位体が初めに 80 g ある。新たな生成や流入がないとき、20 日後に未崩壊の元の同位体は何 g 残っているか。

解答・解説

20日 = 4半減期。80×(1/2)4=80 \times (1/2)^4 = **5 g**

核反応では電荷と質量数の保存を必ず確認。β⁻崩壊で中性子が陽子になるため Z が増えます(A は不変)。

小ネタ: 半減期を自分の手で体験する

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放射性崩壊は確率的。平均的には半減期ごとに未崩壊の原子数が半分になり、個数が少ないと理論曲線からの揺らぎが目立つ
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