粒子性と波動性

光も電子も「粒子」と「波」の両面をもつことを、実験事実から学ぶ。

この単元の目標
  • 光電効果を光子説で説明し仕事関数の計算ができる
  • ドブロイ波長を求めることができる
📑 目次
  1. 光電効果と光子
  2. 阻止電圧で最大エネルギーを測る
  3. 物質波
  4. 小ネタ: 光速度不変がもたらす「時間の遅れ」

光電効果と光子

金属に光を当てると電子が飛び出す光電効果。通常の1光子による光電効果では、振動数が限界振動数より低い光は、強くしても電子を放出させられません。アインシュタインは「光はエネルギー hνh\nu の粒(光子)として電子とエネルギーをやりとりする」と説明しました。1個の電子が受け取るエネルギー hν のうち、金属の外へ出るために必要な最小のエネルギー W を仕事関数といいます。

Kmax⁡=hν−W(hν≥W),ν0=Wh,λ0=hcWK_{\max}=h\nu-W \quad (h\nu\ge W), \qquad \nu_0=\frac{W}{h}, \quad \lambda_0=\frac{hc}{W}
E=hν=hcλ,p=hλE = h\nu = \frac{hc}{\lambda}, \qquad p = \frac{h}{\lambda}

光子の式の λ は真空中の波長です。ν₀ は放出のしきい値、λ₀ は限界波長。ν < ν₀(λ > λ₀)なら電子は出ず、負の運動エネルギーが生じるわけではありません。電子が金属内で失うエネルギーには差があるため、放出電子すべてが Kmax をもつわけでもありません。電子の速さが光速より十分小さいなら Kmax = mvmax²/2 と書けます。

入射光を変える操作電子の最大運動エネルギー放出される電子の数
振動数一定で光を強くする(しきい値より上)変わらない通常は単位時間あたりの数が増える
光子1個のエネルギーを大きくするhν − W に従って増える光子数や放出効率にも依存する
限界振動数より低い光を強くする放出自体が起こらない通常の1光子過程では放出されない

阻止電圧で最大エネルギーを測る

飛び出した電子を押し戻す向きに電圧をかけ、光電流がちょうど 0 になる電圧の大きさを阻止電圧 Vₛ といいます。最も速い電子も届かなくなる条件は eVₛ = Kmax(e は電気素量)。Vₛ と ν のグラフは傾き h/e、横軸との交点 ν₀ の直線になるので、仕事関数とプランク定数の測定につながります。

eVs=hν−W,Vs=heν−WeeV_s=h\nu-W, \qquad V_s=\frac{h}{e}\nu-\frac{W}{e}

物質波

逆に、電子線が結晶で回折・干渉する(デビッション–ガーマーの実験)ことから、粒子にも波動性があることが示されました。ドブロイの式:

λ=hp≈hmv(v≪c)\lambda = \frac{h}{p} \approx \frac{h}{mv} \quad (v\ll c)

物質波の一般式は λ = h/p。電子の速さが光速より十分小さいときだけ p = mv と置けます。静止していた電子を電位差 V で加速すると K = eV = p²/(2m) なので、λ = h/√(2meV)。加速電圧を 4 倍にすると運動量は 2 倍、波長は半分です。光子には静止質量を使った mv を当てはめません。

例題

仕事関数 2.0 eV の金属に、エネルギー 4.0 eV の光子を当てた。飛び出す電子の最大運動エネルギーを求めよ。

解答・解説

4.0−2.0=4.0 - 2.0 = **2.0 eV**

例題:波長から光電効果を判定する

仕事関数 2.0 eV の金属に波長 400 nm の光を当てる。hc = 1240 eV·nm として、光子のエネルギー、電子の最大運動エネルギー、阻止電圧を求めよ。

解答・解説

E=1240/400=3.1E=1240/400=3.1 eV。仕事関数より大きいので放出され、Kmax⁡=3.1−2.0=1.1K_{\max}=3.1-2.0=1.1 eV。eVₛ = Kmax より阻止電圧は **1.1 V**。eV はエネルギーの単位、V は電圧の単位であり区別する。

練習問題:光子と電子の波長
  1. 仕事関数 2.0 eV の金属の限界波長を求めよ(hc = 1240 eV·nm)。波長 700 nm の光を強くすると電子は出るか。通常の1光子による光電効果を考える。

    解答・解説

    λ0=1240/2.0=620\lambda_0=1240/2.0=620 nm。700 nm は限界波長より長く、1光子のエネルギーは約 1.77 eV なので仕事関数に足りない。強くして光子数を増やしても電子は放出されない。

  2. ある金属に光を当てると阻止電圧が 0.80 V だった。入射光の振動数を 2.0×10¹⁴ Hz 増やすと阻止電圧はいくらか。h/e = 4.14×10⁻¹⁵ V·s とする。

    解答・解説

    ΔVs=(h/e)Δν=4.14×10−15×2.0×1014=0.828\Delta V_s=(h/e)\Delta\nu=4.14\times10^{-15}\times2.0\times10^{14}=0.828 V。新しい阻止電圧は 0.80+0.828≈0.80+0.828\approx **1.63 V**。同じ金属なので仕事関数は変わらない。

  3. 運動量 3.3×10⁻²⁴ kg·m/s の電子のドブロイ波長を求めよ(h = 6.6×10⁻³⁴ J·s)。また非相対論的な範囲で運動エネルギーを 4 倍にすると波長はどうなるか。

    解答・解説

    λ=h/p=2.0×10−10\lambda=h/p=2.0\times10^{-10} m = **0.20 nm**。K=p2/(2m)K=p^2/(2m) より K が 4 倍なら p は 2 倍、波長は半分の **0.10 nm**。

プランク定数 h ≈ 6.6 × 10⁻³⁴ J·s。日常の物体では運動量が大きく物質波の波長が極めて短いため、回折は目立ちません。電子のように波長が原子間隔と同程度になると、結晶による回折などの量子性が観測できます。

小ネタ: 光速度不変がもたらす「時間の遅れ」

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速く動く時計はゆっくり進む。v を光速に近づけるとローレンツ因子 γ が発散する
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