交流の実効値・電力と理想変圧器
正弦波の平均電力を導き、力率と変圧器の電力保存から高電圧送電の利点を定量的に考える。
- 正弦波の実効値と平均値を区別し、平均電力 VI cosφ を導ける
- 力率が電流と抵抗損失に与える影響を、同じ有効電力で比較できる
- 理想変圧器の巻数比・電流比を用い、送電線の損失を計算できる
実効値は「同じ発熱を生む直流」の値
正弦波電流の一周期平均はゼロですが、抵抗は正負どちらの電流でも発熱します。そこで二乗の平均の平方根を実効値と呼びます。同じ抵抗に流して同じ平均発熱を生む直流電流が I です。本記事はインピーダンスの計算を繰り返さず、電力とエネルギー輸送に焦点を当てます。
🔍 実効値と平均電力の導出
- 一周期で二乗を平均する
sin² の一周期平均は 1/2。位相をずらしても変わりません。電圧も同様です。
- 正の平方根を取る
瞬時値の平均ではなく、二乗平均平方根です。
- 瞬時電力を積和公式で変形する
瞬時電力は一定ではなく、元の交流の 2 倍の周波数の成分を含みます。
- 振動する項を一周期平均する
余弦の振動項の平均はゼロ。有効電力 P の単位は W です。
力率は電流のうち電力輸送に効く割合
皮相電力 S = VI(単位 VA)に対する有効電力 P の比が力率です。正弦波では P/S = cosφ。受動負荷では 0 ≤ cosφ ≤ 1 です。理想抵抗は同位相で力率 1、理想コイルや理想コンデンサーだけなら位相差が ±90° で平均電力はゼロです。それでもエネルギーは一周期の途中で蓄積・返還され、電流は流れています。
v(t) = 200 sinωt V、i(t) = 5.0 sin(ωt − π/3) A の負荷について、実効電圧・実効電流・皮相電力・平均電力を求めよ。
解答・解説
、。、力率は 。したがって **P = 250 W**。振幅の積 1000 をそのまま平均電力にしてはいけません。
理想変圧器:電圧を上げると電流が下がる
一次巻数 N₁、二次巻数 N₂ のコイルに共通の時間変化する磁束が鎖交すると、誘導電圧は巻数に比例します。理想変圧器では漏れ磁束・巻線抵抗・鉄損を無視し、励磁電流も無視します。以下の比は実効値の大きさの関係で、瞬時電圧の極性は巻き方と端子の取り方によります。
I₁ は一次へ供給する電流、I₂ は二次から負荷へ供給する電流の実効値です。理想変圧器では負荷の力率が一次側にも反映され、V₁I₁ = V₂I₂ と有効電力の保存が両立します。電圧を上げても電力が増えるわけではありません。直流定常状態では磁束が変化しないので、この変圧作用は得られません。
送電線の損失は実効電流の二乗に比例する
送電線の往復合計抵抗を r とすると、発熱による損失は I²r です。受電端へ届ける有効電力 P、受電端実効電圧 V、負荷の力率を指定すれば I = P/(V cosφ)。同じ P・力率・r で V を上げると損失は小さくなります。逆に同じ P・V で力率が下がると、必要な電流と送電損失が増えます。
力率 1 の負荷に 20 kW を届ける。線路の往復合計抵抗は 2.0 Ω。受電端電圧を (a) 1.0 kV、(b) 10 kV に保つとき、電流と送電損失を比較せよ。さらに (b) の受電端で理想変圧器により 200 V に下げる場合の巻数比 N₁:N₂ と二次電流を求めよ。
解答・解説
(a) 、損失は 。(b) 、損失は **8.0 W** で (a) の 1/100。送電端の有効電力はそれぞれ 20.8 kW、20.008 kW。受電変圧器は 、二次電流は です。
実効値 100 V の正弦波交流を 50 Ω の抵抗に加える。電圧の振幅、実効電流、平均電力を求めよ。
ヒント
抵抗では力率 1。振幅は実効値の √2 倍です。
解答・解説
、、。 でも一致します。
理想変圧器の N₁ = 1200、N₂ = 300。一次実効電圧 240 V、二次側の抵抗負荷の消費電力 180 W のとき、二次電圧、二次電流、一次電流を求めよ。
ヒント
まず巻数比から V₂ を求め、力率 1 と電力保存を使います。
解答・解説
、、。電圧比 1/4 に対して電流比は 4 です。
受電端の有効電力 8.0 kW、実効電圧 200 V、線路の往復合計抵抗 0.10 Ω を固定する。負荷の力率が 1 から 0.80 に下がると、電流と送電損失はいくらになるか。
ヒント
。同じ有効電力でも電流は一定ではありません。
解答・解説
力率 1 では 、損失 160 W。力率 0.80 では 、損失 。損失は 倍です。
問1. 理想コイルだけの負荷に正弦波交流が流れるとき、平均電力がゼロなのはなぜ?
問2. 同じ有効電力・力率・線路抵抗で受電端電圧を 5 倍にすると、送電損失は?