自己誘導と磁場のエネルギー
電流そのものではなく電流の変化に注目し、誘導起電力の符号とコイルへのエネルギーの出入りを理解する。
- 電流の正方向と端子電圧の規約を定め、自己誘導起電力の符号を判断できる
- 線形コイルに蓄えられる磁場エネルギーを仕事から導き、計算できる
- 直流定常状態と過渡状態を区別し、発展として RL 回路の時定数を説明できる
自己誘導は「電流の変化」に応答する
コイルの電流が変わると、自分自身を貫く磁束も変わり、ファラデーの法則によって誘導起電力が生じます。これが自己誘導です。電流が大きいか小さいかではなく、単位時間あたりにどれだけ変化するかが起電力を決めます。交流のインピーダンスとは別に、ここでは時間変化とエネルギーの出入りを追います。
起電力と端子電圧の符号を分ける
コイルの端子を A、B とし、電流 i の正方向を A → B と定めます。磁束の正方向はこの電流がつくる向きに合わせます。誘導起電力 ε は A → B に電荷を押す向きを正、一方、端子電圧は v = V_A − V_B と定義します。電流が入る端子を電圧の正端子とするので、コイルが吸収する瞬時電力は p = vi です。
| 符号付き電流の変化 | 誘導起電力 ε | 端子電圧 v |
|---|---|---|
| di/dt > 0(例:+1 A → +3 A) | 負:A → B と逆向き | 正:A の電位が高い |
| di/dt < 0(例:+3 A → +1 A) | 正:A → B 向き | 負:B の電位が高い |
| di/dt = 0 | 0:電流が流れていても誘導しない | 0:理想コイルの直流定常状態 |
L = 0.40 H のコイルで、A → B の電流が 0.020 s の間に 3.0 A から 1.0 A まで一定の割合で減少した。ε と v を求め、どちらの端子の電位が高いか答えよ。
解答・解説
。したがって 、。**B が A より 40 V 高い**。誘導起電力は A → B 向きで、正の電流の減少を妨げます。
磁場に蓄えたエネルギーを回路へ返す
コイルに電流を増やして流すには、誘導起電力に逆らって電源が仕事をする必要があります。理想コイルではその仕事は熱にならず、磁場のエネルギーになります。電流の大きさが減ると、そのエネルギーを外部回路へ返します。直流定常状態で v = 0 でも、電流があれば蓄えたエネルギーはゼロではありません。
🔍 吸収電力から U = Li²/2 を導く
- 端子から入る瞬時電力
p > 0 なら蓄積、p < 0 なら外部へ放出。巻線抵抗による発熱は含めません。
- 微小時間の仕事
一定の L を仮定して積分します。
- 電流 0 をエネルギーの基準にする
電流が負でもエネルギーは非負。単位は H·A² = J です。
L = 0.50 H の理想コイルの電流が 4.0 A から 2.0 A に減った。この間にコイルから放出されるエネルギーを求めよ。
解答・解説
初めは 、後は 。放出量は **3.0 J**。電流は半分でも、エネルギーは 1/4 になります。コイルのエネルギー変化自体は です。
発展:RL 回路の過渡応答
起電力 E の一定電圧源、抵抗 R > 0、理想コイル L を直列接続し、時刻 t = 0 に電流ゼロから通電します。電流の向きに一周すると E − Ri − v = 0。通電直後はコイルに電圧がかかり、その後、電流の増加率が小さくなるにつれて抵抗の電圧降下が増えます。
時定数 τ は変化の速さを表す時間です。t = τ で電流は最終値 E/R の約 63%、十分時間がたつと i = E/R、v = 0 に近づきます。これは過渡現象で、正弦波定常交流の位相や実効値だけでは表せません。
L = 0.20 H。符号付き電流が 0.010 s で −3.0 A から −1.0 A へ直線的に変化した。ε と v の符号・値を求めよ。規約は本文と同じとする。
ヒント
電流の大きさではなく、終値から初値を引きます。
解答・解説
より、、。i < 0、v > 0 なので吸収電力は負で、磁場エネルギーを放出しています。
L = 0.080 H のコイルに蓄えられたエネルギーが 0.36 J だった。電流の大きさを求めよ。
ヒント
を について解きます。
解答・解説
。エネルギーだけから電流の向きは決まりません。
【発展】E = 12 V、R = 6.0 Ω、L = 0.30 H の直列 RL 回路を電流ゼロから通電する。τ と t = τ の電流を求めよ。e⁻¹ = 0.368 とする。
ヒント
最終電流 E/R と時定数 L/R を先に求めます。
解答・解説
。最終電流は 2.0 A なので、。
問1. 理想コイルに正の一定電流が流れる直流定常状態で正しいのは?
問2. 本文の符号規約で i > 0、di/dt < 0 のとき、コイルの吸収電力 p は?