コンデンサーの電池接続と切離し

電池につないだままか、充電後に切り離すかで「不変量」が変わる。誘電体・極板間距離を変えたときの Q, V, E, エネルギーの変化を整理する。

この単元の目標
  • 電池接続(V 一定)と切離し(Q 一定)のどちらが不変かを即座に判定できる
  • 誘電体の挿入・極板間距離の変化に対し Q, V, E, エネルギーの増減を説明できる
  • エネルギー変化を電池の仕事や外力の仕事と含めて収支で検証できる
📑 目次
  1. どちらが不変? — 場面の見分け方
  2. 誘電体を挿入すると(比誘電率 εr > 1)
  3. 極板間距離 d を変える(C = εS/d)

どちらが不変? — 場面の見分け方

端の電場を無視した平行板を扱います。S(m²)は面積、d(m)は間隔、ε(F/m)は誘電率。Q(C)は正極板の自由電荷の大きさ、負極板は −Q、V(V)は正極板から負極板への電位差、E(V/m)は電場の大きさです。容量 C の単位は F、U の単位は J。線形・無損失の誘電体、理想電池、電荷漏れなしを仮定し、操作はゆっくり行います。

平行板コンデンサー(容量 C=εS/dC = \varepsilon S/d、電荷 Q=CVQ = CV、電圧 VV、極板間電場 E=V/dE = V/d、エネルギー U=12CV2=Q2/(2C)U = \tfrac{1}{2}CV^2 = Q^2/(2C))の状態を変える問題では、何が保存されるかを最初に確定させる。これが全ての増減判定の出発点です。

状況不変量理由
電池に**つないだまま**極板を動かす・誘電体を挿入する電圧 V(電池の起電力)導線で電池の両端子に接続されているので、極板間電位差は電池電圧に固定される
**充電後に電池から切り離して**から操作する電荷 Q電荷の逃げ場がなく、電荷保存則により極板上の電荷は不変
誤解注意:「切離したから電圧が変わらない」と考えてしまうのが典型ミス。切離し後は C が変わると V = Q/C が変わります(V は従属量)。逆に電池接続では C が変わると Q = CV が変わります(Q は従属量)。V 一定か Q 一定かを文脈から必ず確認する。

誘電体を挿入すると(比誘電率 εr > 1)

🔍 容量の増加と各量の変化

  1. Step 1: 自由電荷 Q を同じにして真空と比較する
    E内=E0εr=E0−E分極E_{\text{内}} = \frac{E_0}{\varepsilon_r} = E_0 - E_{\text{分極}}

    誘電体の表面には分極電荷(束縛電荷)が現れ、その電場が外部電場を打ち消す向きに重なる。中間の導体板とは異なり、誘電体内部にも電場は残る(0 にはならない)点に注意。

  2. Step 2: 電場が弱まった分、同じ電荷でも電位差は小さくなる
    V内=E内d=V0εr(Q が同じ場合)V_{\text{内}} = E_{\text{内}} d = \frac{V_0}{\varepsilon_r} \quad (Q \text{ が同じ場合})
  3. Step 3: 容量の定義から C は εr 倍
    C=QV=εrC0=εrε0Sd  (完全に満たす場合)C = \frac{Q}{V} = \varepsilon_r C_0 = \varepsilon_r \varepsilon_0 \frac{S}{d} \;(\text{完全に満たす場合})

    誘電体が極板間の一部(厚み t < d)だけのときは、直列合成 C=ε0Sd−t+t/εrC = \dfrac{\varepsilon_0 S}{d - t + t/\varepsilon_r} となる。

操作(比誘電率 εr の誘電体を満たすように挿入)V 一定(電池接続)Q 一定(切離し後)
容量 Cεr 倍に増加εr 倍に増加
電荷 QQ = CV で εr 倍に増加(電池が追加充電)不変
電圧 V不変V = Q/C で 1/εr 倍に減少
電場 EE = V/d で不変E = Q/(εS) で 1/εr 倍に減少
エネルギー UU = ½CV² で εr 倍に増加U = Q²/(2C) で 1/εr 倍に減少
Q 一定で誘電体を挿入するとエネルギーが減る。これは誘電体がコンデンサー内に吸い込まれる(引力をうける)ことに対応し、減った分が誘電体を引く力の仕事になります。逆に V 一定ではエネルギーが増えますが、この増分は電池が供給したエネルギーの一部です。

極板間距離 d を変える(C = εS/d)

電池接続(V 一定)で d を広げる:C は d に反比例して減少 → Q = CV も減少し、コンデンサーは電池へ電荷を返す。E = V/d は減少。U = ½CV² も減少。減ったエネルギーと電荷が電池へ返る過程の収支で符号を確認するのが入試頻出です。

例題1(電池接続のまま極板を引き離す)

容量 C0=2.0×10−6C_0 = 2.0 \times 10^{-6} F のコンデンサーを電池(起電力 V0=100V_0 = 100 V)で充電し、**つないだまま**極板間距離を 2 倍にした。面積・誘電率は一定で、ゆっくり操作し熱などの損失を無視する。(1) 操作後の容量と電荷、(2) コンデンサーのエネルギー変化、(3) 電池が最終的に受け取る(貯め直す)エネルギーを求めよ。

解答・解説

(1) C1=C0/2=1.0×10−6C_1 = C_0/2 = 1.0 \times 10^{-6} F、Q1=C1V0=1.0×10−4Q_1 = C_1 V_0 = 1.0 \times 10^{-4} C(初め Q0=C0V0=2.0×10−4Q_0 = C_0V_0 = 2.0 \times 10^{-4} C だったので差額 1.0×10−41.0 \times 10^{-4} C が電池へ逆流)。(2) ΔU=12C1V02−12C0V02=0.005−0.010=−5.0×10−3\Delta U = \tfrac12 C_1V_0^2 - \tfrac12 C_0V_0^2 = 0.005 - 0.010 = -5.0 \times 10^{-3} J(5.0 mJ 減少)。(3) 電池は電荷 1.0×10−41.0 \times 10^{-4} C を受け取るので W電池=1.0×10−4×100=1.0×10−2W_{\text{電池}} = 1.0 \times 10^{-4} \times 100 = 1.0 \times 10^{-2} J(10 mJ)が電池側に戻る。収支の検算:コンデンサーの減少 5.0 mJ + 外力の仕事 W外=12V02(C0−C1)=5.0W_{\text{外}} = \tfrac12 V_0^2 (C_0 - C_1) = 5.0 mJ(極板は引き合うので離すのに正の仕事)= 電池への回収 10 mJ ✓

例題2(切離し後に極板を接近)

容量 C0C_0、電荷 Q0Q_0 に充電した後電池から切り離し、極板間距離を半分にした。(1) 操作後の電圧、(2) エネルギーの変化とその由来、(3) 電場の変化を求めよ。

解答・解説

(1) 初期電圧を V0=Q0/C0V_0=Q_0/C_0 とおくと C1=2C0C_1 = 2C_0、V1=Q0/C1=V0/2V_1 = Q_0/C_1 = V_0/2。(2) ΔU=Q022(2C0)−Q022C0=−Q024C0=−U02\Delta U = \dfrac{Q_0^2}{2(2C_0)} - \dfrac{Q_0^2}{2C_0} = -\dfrac{Q_0^2}{4C_0} = -\dfrac{U_0}{2}(半分に減少)。由来:極板は異符号電荷を帯びて**引き合う**ので、接近は自然に起こる方向で、引力が正の仕事をした分が減少分に等しい。ゆっくり接近させる外力は負の仕事 −U₀/2 をし、その分が外部に取り出される。(3) E=Q0/(εS)E = Q_0/(\varepsilon S) は Q、ε、S が一定なので、**不変**。V = Ed なので d が半分になると V も半分になり、(1) と整合する。

仕事の符号:外力が系にする仕事を正、電池が供給する仕事を正とすれば、損失を無視した準静的操作では ΔU = W外 + W電池供給。電池接続では W電池供給 = VΔQ なので ΔQ < 0 なら電池へ戻ります。誘電体挿入で ΔC > 0 のとき、V 一定では ΔU = ½V²ΔC、W電池供給 = V²ΔC、W外 = −½V²ΔC。仕事も含めて収支を考えましょう。
練習問題
  1. 電池につないだまま平行板コンデンサーの極板間に誘電体(比誘電率 3)を挿入した。電荷とエネルギーは何倍になるか。

    ヒント

    V 一定。Q = CV、U = ½CV²。

    解答・解説

    C が 3 倍 → **Q は 3 倍、U は 3 倍**。増分は電池が供給した(実際には電池がする仕事の一部)。

  2. 充電後に切り離したコンデンサー(電荷 Q)の極板間距離を 2 倍にした。エネルギー変化を外力の仕事で説明せよ。

    ヒント

    U = Q²/(2C)、C = εS/d。

    解答・解説

    C は 1/2 倍 → U=Q2/2CU = Q^2/2C は **2 倍に増加**。極板は引き合っているので、離すには外力が正の仕事をし、その仕事がエネルギー増加分になる。

  3. 電池(V 一定)につないだまま極板間距離を半分にした。電場 E とエネルギー U の変化率を求めよ。

    ヒント

    E = V/d、U = ½CV²、C = εS/d。

    解答・解説

    C が 2 倍 → **E は 2 倍**(V 不変、d 半分)、**U は 2 倍**。増分は電池が追加充電の仕事 ΔQ⋅V\Delta Q \cdot V の一部として供給する。

確認クイズ

問1. 充電後に電池から切り離し、電荷が漏れないように誘電体を挿入した。電圧 V はどうなるか。

問2. 電池につないだまま極板間距離を広げた。コンデンサーのエネルギーはどうなるか。

📝 メモこの端末のみに保存
メモ欄はページ読み込み後に使えるようになります。