電流がつくる磁場——直線電流・円形電流・ソレノイド

右ねじの法則で磁場の向きを決め、直線電流・円形電流・ソレノイドの磁場の大きさを計算し、重ね合わせまで扱う。

この単元の目標
  • 右ねじの法則で、直線電流・円形電流・ソレノイドの磁場の向きを一意に決められる
  • B = μ₀I/(2πr)、B = μ₀nI などの適用範囲を踏まえて磁場の大きさを計算できる
  • 複数の電流がつくる磁場を重ね合わせで求められる
📑 目次
  1. 磁場と右ねじの法則
  2. 直線電流のつくる磁場
  3. 円形電流とソレノイド
  4. ソレノイド内部の磁場が導ける理由

磁場と右ねじの法則

電荷が動く(=電流が流れる)と、そのまわりに磁場が生じます。本稿では磁束密度 B を磁場と呼び、単位はテスラ [T] です。磁場の強さ H [A/m] とは区別し、真空では B = μ₀H です。直線電流のまわりの向きは右ねじの法則で決めます。「右ねじを進める向き」に電流を流すと、ねじを回す向きが磁場の向きになります。本稿では向きをあいまいにしないため、次の約束で紙面を固定して考えます。

  • 紙面の約束: 紙面の右を +x、上を +y、手前(読者に向かう方向)を +z とする。紙面に垂直で奥へ向かう向きが −z。
  • 紙面上を +x 方向に流れる直線電流なら、その直上(+y 側)の磁場は右ねじより +z(手前)向き。
  • 紙面に垂直で奥へ(−z 向き)流れる電流は記号 ⊗(矢の羽根)、手前へ(+z 向き)は記号 ⊙ で描く。

直線電流のつくる磁場

B=μ0I2πrB = \frac{\mu_0 I}{2\pi r}

無限に長い直線電流(電流 II [A])から距離 rr [m] の点の磁場の大きさです。μ₀ は真空の透磁率で μ0=4π×10−7\mu_0 = 4\pi \times 10^{-7} T·m/A。磁場の向きは電流を軸とする同心円上で、右ねじの回る向きです。B は距離 r に反比例する点が、点電荷の電場(r² に反比例)と違うところです。この式は「長さが十分長く、端の効果を無視できる」直線電流に対して成り立ちます。

円形電流とソレノイド

B=μ0NI2r  (円形電流の中心),B=μ0nI  (長いソレノイド内部)B = \frac{\mu_0 N I}{2r} \;\text{(円形電流の中心)}, \qquad B = \mu_0 n I \;\text{(長いソレノイド内部)}

半径 r [m] の円形電流 N 巻(N は総巻数)では、中心の磁場は B=μ0NI/(2r)B = \mu_0 NI/(2r)。同じ半径・中心・面をもつ薄い巻線を仮定し、1巻きなら N = 1 とします。右手の4指を電流に沿わせると親指が中心の磁場の向きです。紙面の手前から見て反時計回りの電流なら +z(手前)向きです。ソレノイド(長い円筒コイル、単位長さあたり n 巻 [m⁻¹])の内部では磁場は軸に平行でほぼ一様、B=μ0nIB = \mu_0 nI。端から見て電流が反時計回りなら、内部の磁場はその端から見てこちら向き。両式とも真空または空芯(空気を真空と近似)を扱い、鉄心入りにはそのまま使えません。ソレノイドの式は長さが半径より十分大きく、端から遠い場合の近似です。外部の磁場をほぼ 0 とみなしますが、有限長では外にも磁場が回り込みます。

直線電流の磁場の大きさと向き

紙面上を +x 方向(右向き)に 5.0 A の電流が流れる長い直線電流がある。電流から真上 0.20 m の点 P における磁場の大きさと向きを求めよ。μ₀ = 4π×10⁻⁷ T·m/A。

解答・解説

大きさは B=μ0I2πr=4π×10−7×5.02π×0.20=5.0×10−6B = \frac{\mu_0 I}{2\pi r} = \frac{4\pi\times10^{-7}\times 5.0}{2\pi\times 0.20} = 5.0\times10^{-6} T。向きは右ねじより、+x 向き電流の +y 側では **+z(手前)方向**。検算:分子 4π×10−7×5=2π×10−64\pi\times10^{-7}\times5 = 2\pi\times10^{-6}、分母 0.4π0.4\pi なので商は確かに 5×10−65\times10^{-6} T。

2本の直線電流の重ね合わせ

2本の十分長い導線 A、B が紙面の (x, y) = (0, −0.10 m)、(0, +0.10 m) をそれぞれ貫き、z 軸に平行に伸びている。どちらも奥へ(−z 向き)5.0 A ずつ流している。原点 O (0, 0) での磁場を求めよ。

解答・解説

各電流から O までの距離は 0.10 m。奥向き電流のまわりの磁場は右ねじより**時計回り**(紙面の手前から奥を見て)。O は A の真上なので A の磁場は +x 向き、O は B の真下なので B の磁場は −x 向き。大きさは B=4π×10−7×5.02π×0.10=1.0×10−5B = \frac{4\pi\times10^{-7}\times5.0}{2\pi\times0.10} = 1.0\times10^{-5} T ずつで互いに逆向きなので、**合成は 0 T**。同方向・同じ大きさの電流の間の中点では磁場が打ち消し合います。

重ね合わせは大きさの足し算ではなく、B⃗=B⃗1+B⃗2\vec{B}=\vec{B}_1+\vec{B}_2 というベクトルの足し算です。同じ向きなら和、逆なら差、直交するなら B=B12+B22B=\sqrt{B_1^2+B_2^2} とし、成分から合成の向きも決めます。たとえば +x 向き 3 μT と +y 向き 4 μT の合成は 5 μT で、+x から +y 側へ約 53° です。

よくある誤解:① B は r² ではなく r に反比例(電場と混同しない)。② ソレノイドの B = μ₀nI は「十分長い」場合のみ。短いコイルや端では成り立ちません。③ n は全体の巻数ではなく単位長さあたりの巻数 [巻/m]。「1 m あたり 1000 巻、長さ 0.5 m」なら n = 1000 であって 500 ではありません。

ソレノイド内部の磁場が導ける理由

🔍 アンペールの法則から B = μ₀nI を導く

  1. Step 1: アンペールの法則
    ∮B⃗⋅dl⃗=μ0∑I\oint \vec{B}\cdot d\vec{l} = \mu_0 \sum I

    閉曲線に沿った B の周回積分は、その面を貫く電流の和の μ₀ 倍。軸対称な電流配置に強い味方です。

  2. Step 2: 長方形経路を選ぶ
    ∮B⃗⋅dl⃗=BL\oint \vec{B}\cdot d\vec{l} = B L

    定常電流を仮定します。長さ L の区間をソレノイド内部の軸に平行に通り、外側に戻る長方形経路をとります。内部では B は一様・軸平行、外側は B ≈ 0、軸に垂直な2辺は内積が 0 なので内部の1辺だけが寄与します。

  3. Step 3: 貫く電流を数える
    ∑I=nLI\sum I = nLI

    長さ L の区間を貫く巻き数は nL 巻で、各巻きが電流 I を 1 回貫きます。

  4. Step 4: 等しいと置く
    BL=μ0nLI⇒B=μ0nIBL = \mu_0 nLI \quad\Rightarrow\quad B = \mu_0 nI

    L が消えて磁場だけが残ります。端から遠い内部で成り立つ一様磁場の式です。

練習問題
  1. 真空中、十分長い直線電流 3.0 A から 0.030 m 離れた点の磁場の大きさを求めよ。

    ヒント

    B=μ0I/(2πr)B = \mu_0 I / (2\pi r)

    解答・解説

    B=4π×10−7×3.02π×0.030=12π×10−70.06π=2.0×10−5B = \frac{4\pi\times10^{-7}\times3.0}{2\pi\times0.030} = \frac{12\pi\times10^{-7}}{0.06\pi} = 2.0\times10^{-5} T

  2. 真空中、半径 0.10 m の薄い円形コイル(20 巻)に 2.0 A を流した。中心の磁場の大きさを求めよ。

    ヒント

    20 巻は 1 巻の 20 倍。中心では B=μ0NI/(2r)B = \mu_0 NI/(2r)(N は総巻数)。

    解答・解説

    B=4π×10−7×20×2.02×0.10=1.6π×10−50.2≈2.5×10−4B = \frac{4\pi\times10^{-7}\times20\times2.0}{2\times0.10} = \frac{1.6\pi\times10^{-5}}{0.2} \approx 2.5\times10^{-4} T。向きはコイル面に垂直で、電流のまわり右ねじの進む向き。

  3. 長さ 0.40 m、総巻数 800 巻の空芯ソレノイドに 1.5 A を流した。長さは半径より十分大きいとして、中央付近の内部の磁場の大きさを求めよ。

    ヒント

    まず n = 総巻数 ÷ 長さ。

    解答・解説

    n=800/0.40=2000n = 800/0.40 = 2000 巻/m、B=μ0nI=4π×10−7×2000×1.5=1.2π×10−3≈3.8×10−3B = \mu_0 nI = 4\pi\times10^{-7}\times2000\times1.5 = 1.2\pi\times10^{-3} \approx 3.8\times10^{-3} T

確認クイズ(電流と磁場)

問1. 紙面に垂直に奥へ向かう直線電流のまわりの磁場を、紙面の手前から奥へ見たときの向きは?

問2. ソレノイドに流す電流を 2 倍、巻数密度 n を 1/2 にした。内部の磁場は?

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