起電力・端子電圧と内部抵抗:電力と効率

電池を理想電源と内部抵抗で表し、取り出せる電力が最大になる条件と効率の違いを調べる。

この単元の目標
  • 起電力と端子電圧を区別し、放電時の電流と端子電圧を計算できる
  • 電源の供給電力・負荷の消費電力・内部損失を収支で説明できる
  • 一定の起電力と内部抵抗のもとで最大電力条件を導き、効率最大と区別できる

電池にも電圧降下がある

起電力 E は、電源が単位電荷に与えるエネルギーで、単位は力の N ではなく V(J/C)です。実際の電池は電流を流すと内部でもエネルギーを消費します。ここでは電池全体を「起電力 E の理想電源と内部抵抗 r の直列接続」で近似します。E と r は一定、r > 0、外部は抵抗 R > 0 だけとします。温度変化や電池残量による変化は扱いません。

接続を一意に定めます。電池の外部端子を A(正側)・B(負側)とし、内部の枝は B→理想電源(負極 B、正極 C)→C→内部抵抗 r→A です。外部の枝は A→負荷抵抗 R→B だけで、C に他の接続はありません。放電電流 I の正方向を内部では B→C→A、外部では A→B と定義します。端子電圧は V=VA−VBV=V_A-V_B です。

E−Ir−IR=0,I=ER+r,V=IR=E−IrE-Ir-IR=0, \qquad I=\frac{E}{R+r}, \qquad V=IR=E-Ir

起電力 E のすべてが外部負荷にかかるわけではなく、内部で Ir だけ電圧が下がります。外部を開放して電流が 0 なら、このモデルでは端子電圧は E です。開放電圧の測定には入力抵抗が十分大きい電圧計が必要です。負荷をつないだまま V を E とみなすと、電流や出力を過大評価してしまいます。

電力はどこへ行くか

Psource=EI,PR=VI=I2R,Pr=I2r,EI=PR+PrP_{\mathrm{source}}=EI, \quad P_R=VI=I^2R, \quad P_r=I^2r, \quad EI=P_R+P_r

理想電源部分が供給する電力 EI は、外部負荷で使われる電力と内部のジュール熱に分かれます。このモデルの効率は「外部に渡った電力 ÷ 理想電源の供給電力」で定義します。負荷が抵抗なら、その外部電力も熱になりますが、ここでは内部損失とは分けて数えます。

η=PREI=VE=RR+r(I>0)\eta=\frac{P_R}{EI}=\frac{V}{E}=\frac{R}{R+r} \quad (I>0)

🔍 取り出す電力が最大になる抵抗を求める

  1. 1.電流を消去して負荷 R の関数にする
    PR=(ER+r)2R=E2R(R+r)2P_R=\left(\frac{E}{R+r}\right)^2R=\frac{E^2R}{(R+r)^2}

    比較中は E と r を一定に保つ。R を変えると I も V も変わるため、P = I²R を I 一定として読んではいけない。

  2. 2.分母を平方の和に書き換える
    (R+r)2=(R−r)2+4Rr≥4Rr(R+r)^2=(R-r)^2+4Rr\geq 4Rr

    R > 0、r > 0 なので不等式で比較できる。平方が 0 になるのは R = r のときだけ。

  3. 3.電力の上限と等号条件を得る
    PR≤E2R4Rr=E24r,R=rP_R\leq\frac{E^2R}{4Rr}=\frac{E^2}{4r}, \qquad R=r

    外部の抵抗と内部抵抗が等しいとき、外部負荷での電力が最大になる。

  4. 4.そのときの電流・電圧・効率を確認する
    I=E2r,V=E2,PR=Pr,η=12I=\frac{E}{2r}, \quad V=\frac{E}{2}, \quad P_R=P_r, \quad \eta=\frac12

    最大電力時には内部にも同じだけの熱が生じ、効率は 50%にすぎない。電力最大は省エネルギーの最適条件ではない。

例題1:端子電圧と電力収支

上で定義した回路で E = 6.0 V、r = 1.0 Ω、外部負荷 R = 5.0 Ω とする。放電電流、端子電圧、負荷電力、内部損失、効率を求めよ。

解答・解説

I=6.0/(5.0+1.0)=1.0I=6.0/(5.0+1.0)=1.0 A で、外部では A→B。V=6.0−1.0×1.0=5.0V=6.0-1.0\times1.0=5.0 V。負荷電力は PR=VI=5.0P_R=VI=5.0 W、内部損失は Pr=I2r=1.0P_r=I^2r=1.0 W、理想電源の供給電力は EI=6.0EI=6.0 W。**6.0=5.0+1.06.0=5.0+1.0 W** と収支が一致する。効率は η=5.0/6.0≈0.833\eta=5.0/6.0\approx0.833、つまり **約83%**。起電力をそのまま負荷電圧として使わないことが重要。

例題2:電圧と電流のデータから電源を推定する

同じ端子 A・B をもつ電源について、外部の抵抗負荷だけを変更した架空の放電データがある。外部電流を A→B、端子電圧を V_A−V_B とすると、I = 0.10 A で V = 2.8 V、I = 0.30 A で V = 2.4 V だった。E と r を一定として求め、さらにモデル上の最大負荷電力と、そのときの R・I・V・効率を求めよ。

解答・解説

2.8=E−0.10r2.8=E-0.10r、2.4=E−0.30r2.4=E-0.30r を引くと 0.4=0.20r0.4=0.20r より **r = 2.0 Ω**。E=2.8+0.10×2.0=3.0E=2.8+0.10\times2.0=3.0 V。最大電力条件は **R = r = 2.0 Ω**、PR,max⁡=3.02/(4×2.0)=1.125P_{R,\max}=3.0^2/(4\times2.0)=1.125 W(約1.1 W)。そのとき I=3.0/4.0=0.75I=3.0/4.0=0.75 A、V=IR=1.5V=IR=1.5 V、効率は **50%**。検算は EI=2.25EI=2.25 W、I2r=1.125I^2r=1.125 W なので負荷電力との和に一致する。この負荷での実験を勧めるものではなく、実際には定格や発熱の制限が優先される。

最大電力と最大効率を混同しないでください。R を大きくすると効率は 1 に近づきますが、電流と負荷電力は 0 に近づきます。完全に開放した点では入出力とも 0 なので、効率を比として計算できません。また V = E − Ir は放電方向を正にした式です。充電などで電流の向きを変える場合は符号の定義を確認します。
R を 0 にする短絡では、このモデルでも内部発熱が大きくなります。電源の端子を導線で直結したり、電流計を端子間に直接つないだりしてはいけません。最大電力条件も安全性を保証しません。ここでの計算は机上のモデルであり、実物の電池の限界や保護回路を無視した実験は行わないでください。
練習:出力・損失・効率を分ける
  1. 本文の A・B 端子間に負荷 R = 8.0 Ω を接続し、E = 9.0 V、r = 1.0 Ω の電源を放電させるモデルを考える。外部電流の正方向は A→B とする。I、V、負荷電力、内部損失を求めよ。

    ヒント

    先に I=E/(R+r)I=E/(R+r)。端子電圧は IR と E − Ir の両方で確かめる。

    解答・解説

    **I = 1.0 A、V = 8.0 V**。PR=1.02×8.0=8.0P_R=1.0^2\times8.0=8.0 W、Pr=1.02×1.0=1.0P_r=1.0^2\times1.0=1.0 W。供給電力 9.0 W と合計が一致する。

  2. 本文と同じ放電回路で、外部負荷を R = 3r とした。効率と、同じ E・r における最大負荷電力に対する現在の負荷電力の比を求めよ。

    ヒント

    η=R/(R+r)\eta=R/(R+r) と PR=E2R/(R+r)2P_R=E^2R/(R+r)^2 に R = 3r を代入する。

    解答・解説

    η=3r/(4r)=3/4\eta=3r/(4r)=3/4 なので **75%**。PR=3E2/(16r)P_R=3E^2/(16r) を最大値 E2/(4r)E^2/(4r) で割ると **3/4 倍**。効率が 50%より高くても、取り出す電力は最大値より小さい。

  3. 本文と同じ回路で E = 4.0 V、r = 2.0 Ω とする。外部負荷 R を正の範囲で変えたとき、最大負荷電力、その R、端子電圧、内部損失を求めよ。

    ヒント

    最大電力条件では R = r、V = E/2、内部損失と負荷電力が等しい。

    解答・解説

    **R = 2.0 Ω** で PR,max⁡=4.02/(4×2.0)=2.0P_{R,\max}=4.0^2/(4\times2.0)=2.0 W。I=4.0/4.0=1.0I=4.0/4.0=1.0 A、**V = 2.0 V**、内部損失は **2.0 W**。供給電力 4.0 W の半分ずつが外部と内部で消費される。

確認クイズ:起電力と最大電力

問1. E と r > 0 が一定の電池が放電中、外部電流 I が増えたときの端子電圧は?

問2. 一定の E と r > 0 のもとで、外部抵抗の電力が最大となるときの条件と効率は?

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