電磁誘導① 磁束とファラデーの法則・レンツの法則
面を貫く磁束 Φ = BA cosθ の計算から、鎖交磁束の変化率がつくる誘導起電力、誘導電流の向きの決め方まで。
- 面の法線と磁場の角度 θ を使って磁束 Φ = BA cosθ を計算できる
- 鎖交磁束 NΦ の変化率から誘導起電力 ε = −N dΦ/dt を計算できる
- レンツの法則に沿って誘導電流の向きと、コイルが受ける力の向きを定められる
磁束——面を貫く磁場の量
磁場の中に面を置いたとき、その面を貫く磁場の量を磁束 Φ(ファイ)といいます。一様な磁場(大きさ B)中の面積 A の平面について、選んだ法線(面に垂直な向き)と磁場がなす角を θ とすると、次式です。磁束は符号をもち、θ > 90° なら負になります。
cosθ を掛けるのは、磁場のうち面に垂直な成分 だけが面を貫くからです。θ = 0°(磁場が面に垂直)で最大、θ = 90°(磁場が面と平行)で 0。磁束の単位は Wb(ウェーバ)で、1 Wb = 1 T·m² です。なお法線の向きは面の両側のどちらにとってもよく、逆向きにとると Φ の符号が変わるだけで、あとで計算する起電力の大きさは変わりません。
鎖交磁束とファラデーの法則
N 巻のコイルの各巻きを貫く磁束がすべて等しく Φ であるとき、コイル全体では NΦ の磁束が鎖のように連なります。これを鎖交磁束といいます。ファラデーの実験によれば、コイルに生じる誘導起電力は鎖交磁束の変化率に比例します。
法線の正方向へ右手の親指を向け、指が曲がる向きを回路の正方向とします。負号は磁束の変化を妨げる向きの起電力を表します(レンツの法則)。瞬間の大きさは 、区間の平均起電力の大きさは 。一定の変化率のときだけ両者は一致します。これは起電力の絶対値を平均した値とは一般に異なります。閉回路の電流の向きを述べる以下の問題では、電池はなく、抵抗が正で、自己誘導を無視します。
🔍 回転コイルの誘導起電力 ε = NBAω sin ωt の導出
- Step 1: コイルの向きを角で表す
各巻きの面積 A、巻数 N のコイルが一様な磁場 B に垂直な、面内の軸のまわりに一定の角速度 ω で回転します。t = 0 で選んだ法線が磁場と同じ向き。ωt は連続した回転角です。
- Step 2: ファラデーの法則に代入する
d(cos ωt)/dt = −ω sin ωt なので、ファラデーの式の負号と打ち消し合って正の sin が残ります。
- Step 3: 最大値と波形を読み取る
sin ωt = 1 のとき最大。起電力は時間とともに正弦波状に変わり、これが交流発電機が正弦波交流をつくる原理です。f は1秒あたりの回転数、ω = 2πf です。
レンツの法則——誘導電流の向き
誘導電流は、自分のつくる磁場がもとの磁束の変化を打ち消す向きに流れます。これがレンツの法則で、エネルギー保存の要請から必ずそうなります(もし変化を助ける向きに流れたら、電流が自己増殖してエネルギーを無限に取り出せることになり、保存則に反するため)。向きの決め方は次の4ステップです。
- ① もとの磁場がコイル面をどちら向きに貫いているかを決める
- ② その磁束が増えているか減っているか(変化の向き)を確認する
- ③ 増えていれば逆向きの磁場、減っていれば同じ向きの磁場をつくる電流の向きが答え(右ねじの法則)
- ④ 磁石とは「近づければ反発、遠ざければ引力」となることも確かめる(相対運動を妨げる向き)
一辺 10 cm の正方形コイル(100 巻)を、大きさ 0.20 T の一様な磁場の中に法線が磁場と平行になるように置いた。(1) 1 巻きを貫く磁束と鎖交磁束を求めよ。(2) 磁場を 0.10 秒かけて一様に 0 まで減らしたときの誘導起電力の大きさを求めよ。
解答・解説
(1) 法線を磁場と同じ向きに選ぶと、 m² より Wb、鎖交磁束は **0.20 Wb**。(2) **2.0 V**。法線側から見ると、減る正の磁束を補う反時計回りの電流になります。
50 巻、各巻きの面積 2.0×10⁻³ m² のコイルを、大きさ 0.40 T の一様な磁場の中に、面が磁場と平行になるように置いた。0.20 秒かけて回転させ、選んだ法線を磁場と同じ向きにした。この間の平均誘導起電力の大きさを求めよ。
解答・解説
初めは磁場が面と平行なので 、後は Wb。よって **0.20 V**
面積 0.20 m² のループを、大きさ 0.50 T の一様な磁場の中に置いた。面の法線が磁場となす角が 60° のとき、この面を貫く磁束を求めよ。また角が 0°、90° のときの磁束はいくらか。
ヒント
(θ は法線と磁場のなす角)
解答・解説
**0.050 Wb**。θ = 0° なら **0.10 Wb**(最大)、θ = 90° なら **0**。磁場が面と平行だと磁束は 0 になる、が重要です。
200 巻のコイルを貫く鎖交磁束が 0.010 Wb から 0 まで 0.050 秒かけて一様に減少した。誘導起電力の大きさを求めよ。
ヒント
与えられた量は1巻きの磁束ではなく、すでに N 倍された鎖交磁束です。
解答・解説
**0.20 V**。ここでさらに200倍すると巻数の二重計上です。
棒磁石の N 極をコイルに近づけるとき、誘導電流は磁石側からコイルの面を見て、時計回りと反時計回りのどちらの向きに流れるか。レンツの法則で説明せよ。
ヒント
近づいてくる磁束を妨げるには、コイルの磁石に近い面が N 極と S 極のどちらになればよいか。
解答・解説
近づくことで増える磁束を打ち消すには、コイルの磁石に近い面が **N 極**になればよい(反発する向き)。面の外側へ磁場を出す電流は、その面を見て**反時計回り**に流れます。逆に N 極を遠ざけるときは S 極をつくる向き(磁石側から見て時計回り)に流れ、引き合います。
問1. 一様な磁場の中で、コイルの面を磁場と平行に保ったまま、面に沿って動かした。コイルに生じる誘導起電力は?
問2. N = 50 巻のコイルの各巻きを貫く磁束が 0.10 秒間にそれぞれ 0.060 Wb だけ一様に減った。誘導起電力の大きさは?