電磁誘導② 導体棒の運動起電力とレール回路
磁場中を動く導体棒に生じる起電力 V = Bℓv を導き、レール回路の電流・力・エネルギー保存を通して発電のしくみを理解する。終端速度は発展。
- ローレンツ力から運動起電力 V = Bℓv を導き、向きを含めて計算できる
- レール回路の電流・磁場による力・外力の釣り合いを扱える
- 外力の仕事がジュール熱に等しいことをエネルギー保存で説明できる
レール回路の設定
発展問題以外は、水平面を真上から見た図を考えます。右を +x、上を +y、手前を +z とします。レールは y = 0 と y = ℓ に沿って右へ延び、左端 x = 0 を抵抗 R > 0 で接続します。質量 m の棒は x > 0 で両レールを橋渡しし、+x 向きに動きます。磁場 B は全面で一様・一定で紙面の奥(−z)向き。棒・レール・接点の抵抗、摩擦、自己誘導を無視し、接触は常に保ちます。全抵抗は左端の R だけです。動く棒の電荷に働く磁気力によって生じる起電力を運動起電力といいます。
🔍 運動起電力 V = Bℓv の導出とエネルギー保存
- Step 1: 棒の中の電荷が受けるローレンツ力
棒の中の電荷は棒といっしょに速さ v で動くので、磁場から F = qvB(v ⊥ B)の力を受けます。向きは棒に沿って上向き(正電荷の場合)なので、上端に正電荷が集まります。金属では実際には自由電子(負)が下端に集まりますが、端子の正負は同じです。
- Step 2: 電荷の分離がつくる電場とのつり合い
両端に電荷がたまると棒の内部に電場ができ、磁場からの力とつり合うところで集まりが止まります。回路を開いたままの開放端電圧がこれです。
- Step 3: 回路をつなぐと電流が流れる
左端の抵抗をつなぐと、棒は起電力 Bℓv・内部抵抗0の電源として働きます。棒の中では電流は上向き、上レールは左向き、抵抗は下向き、下レールは右向き(全体で反時計回り)です。
- Step 4: 電流が流れると棒は逆向きの力を受ける
電流が上向き、磁場が奥向きなので、棒が受ける力はフレミングの左手の法則より左向き(運動を妨げる向き=レンツの法則)。等速で引き続けるには、同じ大きさの外力を右向きに加えます。
- Step 5: 外力の仕事 = ジュール熱
外力のする仕事率がそのままジュール熱になります。力学のエネルギーが電気エネルギー経由で熱へ変わる、発電機の本質です。
回路面積は A = ℓx です。奥向きの磁束の大きさは Bℓx なので、その増加率は Bℓv。増える奥向き磁束を妨げるには手前向きの磁場をつくる反時計回りの電流が必要で、上の向きと一致します。棒を左へ動かすと電流も逆向きです。棒・速度・磁場が互いに垂直なこの配置で V = Bℓv を使います。一般には磁気力の棒に沿う成分を調べます。
例題で確かめる
ℓ = 0.40 m、R = 2.0 Ω、B = 0.50 T のレール回路で、棒を速さ 3.0 m/s で右向きに等速で引く。(1) 誘導起電力、(2) 電流、(3) 必要な外力、(4) 外力のする仕事率、(5) ジュール熱の発生率を求めよ。
解答・解説
(1) **0.60 V**、(2) **0.30 A**、(3) **0.060 N**、(4) **0.18 W**、(5) **0.18 W**。(4) と (5) が一致します。
例題1の状態から外力を取り去り、初速 3.0 m/s のまま棒を放した(質量 m = 0.030 kg)。放した直後の電流と、棒の加速度の向き・大きさを求めよ。その後の運動のようすも述べよ。
解答・解説
直後も起電力は 0.60 V、電流は 0.30 A。棒は左向きに N の力を受けるので、加速度の大きさは **2.0 m/s²(左向き)**。速度が落ちると電流も力も小さくなり、速さは0に漸近します(この理想模型では有限時間で厳密に停止しません)。外力の仕事がなくても、棒の運動エネルギーがジュール熱に変わるので発熱します。
発展:終端速度
発展では配置を変え、鉛直レールに水平な棒を架けて落下させます(詳細は練習3)。速いほど磁気抵抗力が大きくなり、速さは重力と磁気力がつり合う終端速度に近づきます。式は (下向き正)。静止から出発すると終端速度へ漸近し、有限時間で厳密に到達するわけではありません。
上記のレール配置で、長さ 0.25 m の棒を、0.40 T の磁場(紙面の奥向き)の中で右向きに 2.0 m/s で動かす。棒の起電力の大きさと、高電位になる端を求めよ。
ヒント
棒の中の正電荷が受けるローレンツ力の向きを考えよう。
解答・解説
**0.20 V**。正電荷が上向きの力を受けるので**上端が高電位**。
ℓ = 0.20 m、B = 1.0 T、R = 0.40 Ω(回路全体)のレール回路で、棒を速さ 5.0 m/s で等速に引き続けている。必要な外力の大きさと、1 秒あたりに発生するジュール熱を求めよ。
ヒント
、単位時間の発熱は
解答・解説
V、 A より **0.50 N**、発熱は **2.5 W**(外力の仕事率 W に一致)。
(発展)鉛直面を正面から見て、左右に間隔 ℓ の鉛直レールを置き、上端を抵抗 R で接続する。質量 m の水平な棒をその下に架け、静かに放す。磁場は紙面の奥向きに一様・一定、棒とレールの抵抗・摩擦・自己誘導を無視し、レールは十分長い。終端速度を導き、m = 0.030 kg、R = 2.0 Ω、B = 0.50 T、ℓ = 0.40 m、g = 9.8 m/s² として計算せよ。
ヒント
終端速度では、下向きの重力 mg と上向きの磁場による力 BIℓ がつり合う。
解答・解説
速さ のとき 、上向きの力は 。つり合い より **14.7 ≈ 15 m/s**(下向き)。
問1. 導体棒が磁場の向きに平行な向きへ動くとき、棒に生じる起電力は?
問2. レール回路で棒を等速に引き続けるとき、外力のする仕事は最終的にどこへ行くか。