直流回路と電力——電荷とエネルギーの収支

オームの法則・直列と並列・ジュール熱を、保存する量の違いから理解する。

この単元の目標
  • 直列・並列回路の合成抵抗と電流を求められる
  • 電力と電力量を区別し、J と kWh を換算できる
  • 電流は消費されず、電気エネルギーが熱などに変わると説明できる
📑 目次
  1. 電流・電圧・抵抗
  2. 直列では同じ電流、並列では同じ電圧
  3. 電力は「1秒あたり」、電力量は「合計」

電流・電圧・抵抗

電流 I は導線の断面を単位時間に通過する電気量です。電流の向きは正電荷が動く向きと定め、金属中の電子の移動方向とは逆になります。電圧 V は電位の差で、1 C の電荷が移動する際のエネルギーの変化に関係し、1 V = 1 J/C です。抵抗では電気エネルギーが熱に変わりますが、電荷や電流が途中で使い減りするわけではありません。

I=qt,V=RII=\frac{q}{t},\qquad V=RI
q は時間 t に通過した電気量(C)で、I が一定の場合を扱います。以下では抵抗の温度がほぼ一定でオームの法則に従い、導線の抵抗と電源の内部抵抗を無視します。豆電球のように温度で抵抗が大きく変わる素子やダイオードには、一定の R をそのまま使えません。

一様な導線の抵抗は、材質・温度で決まる抵抗率 ρ、長さ l、断面積 S を使って表せます。同じ材質・温度・太さなら長いほど抵抗が大きく、同じ長さなら太いほど小さくなります。

R=ρlS[ρ]=Ω mR=\rho\frac{l}{S}\qquad[\rho]=\mathrm{\Omega\, m}

直列では同じ電流、並列では同じ電圧

接続共通の量足し合わせる量合成抵抗
直列(枝分かれなし)I = I₁ = I₂V = V₁ + V₂R=R1+R2R=R_1+R_2
並列(同じ二点の間に接続)V = V₁ = V₂I = I₁ + I₂1/R=1/R1+1/R21/R=1/R_1+1/R_2

🔍 並列の合成抵抗はなぜ小さくなる?

  1. 各枝には同じ電圧がかかる
    I1=VR1,I2=VR2I_1=\frac{V}{R_1},\qquad I_2=\frac{V}{R_2}
  2. 分岐点で電荷がたまらないため、電流を足す
    I=I1+I2=V(1R1+1R2)I=I_1+I_2=V\left(\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}\right)
  3. 回路全体の V/I が合成抵抗
    1R=1R1+1R2,R=R1R2R1+R2\frac{1}{R}=\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2},\qquad R=\frac{R_1R_2}{R_1+R_2}

    正の抵抗なら合成抵抗は小さい方の抵抗よりさらに小さい。同じ電圧で電流の通り道が増えるためです。

例題1:接続で電流は変わる

6.0 Ω と 3.0 Ω の抵抗を、6.0 V の理想電源につなぐ。直列の場合の電流と各抵抗の電圧、並列の場合の各枝の電流と全電流を求めよ。

解答・解説

直列:合成抵抗は 9.0 Ω なので I=6/9=I=6/9= **2/3 A(約0.67 A)**。電圧は V1=(2/3)×6=V_1=(2/3)\times6= **4.0 V**、V2=(2/3)×3=V_2=(2/3)\times3= **2.0 V**。並列:各枝は6.0 Vなので **1.0 A と2.0 A**、全電流は **3.0 A**。合成抵抗 R=6/3=R=6/3= **2.0 Ω** はどちらの抵抗よりも小さい。

電力は「1秒あたり」、電力量は「合計」

電力 P は1秒間に変換される電気エネルギーで、単位は W(ワット)です。一定の電力 P で時間 t 使った電力量は E = Pt。抵抗で電気エネルギーがすべて熱に変わる場合、その発熱量(ジュール熱)Q は E に等しくなります。モーターなどで機械的仕事にも変わる場合、電力量のすべてが熱になるとは限りません。

P=VI=I2R=V2R,Q=Pt=I2RtP=VI=I^2R=\frac{V^2}{R},\qquad Q=Pt=I^2Rt
P = I²R と P = V²/R は矛盾しません。電流一定なら抵抗が大きいほど電力は大きく、電圧一定なら抵抗が大きいほど電力は小さくなります。どちらを固定して比較しているかが重要です。
1 kWh=1000 W×3600 s=3.6×106 J1\,\mathrm{kWh}=1000\,\mathrm{W}\times3600\,\mathrm{s}=3.6\times10^6\,\mathrm{J}
例題2:電熱器の電力量と水の温度上昇

100 V で500 Wを消費する電熱器を2.0分使った。電流、使用時の抵抗、電力量(J と kWh)を求めよ。発生した熱の80%が0.50 kgの水に伝わると、温度は何 K 上がるか。水の比熱は 4.2×1034.2\times10^3 J/(kg·K)、状態変化はない。

解答・解説

I=P/V=I=P/V= **5.0 A**、R=V/I=R=V/I= **20 Ω**。E=500×120=E=500\times120= **6.0×10⁴ J**。kWh では 0.50×(2/60)≃0.50\times(2/60)\simeq **0.0167 kWh**。水が受け取る熱は Q水=0.80E=4.8×104Q_{\text{水}}=0.80E=4.8\times10^4 J。Q水=mcΔTQ_{\text{水}}=mc\Delta T より ΔT=48000/(0.50×4200)≃\Delta T=48000/(0.50\times4200)\simeq **23 K**(温度差では23 ℃と同じ)。

理想電流計は測る枝に直列、理想電圧計は測る部分の両端に並列につなぎます。電流計を電源の両端へ直接つなぐと短絡する危険があります。学習実験は適切な低電圧電源と指導のもとで行い、家庭のコンセントを実験に使わないでください。
練習問題(回路と電力)
  1. 同じ材質・温度の導線で、長さを2倍、直径を2倍にした。抵抗はもとの何倍か。

    解答・解説

    断面積は直径の2乗に比例して4倍。R=ρl/SR=\rho l/S より **1/2倍**。太さを直径で与えられたときは、そのまま S の比にしない。

  2. 12 V の理想電源に4.0 Ωと12 Ωの抵抗を並列につなぐ。合成抵抗、全電流、各抵抗の電力を求めよ。

    解答・解説

    R=(4×12)/(4+12)=R=(4\times12)/(4+12)= **3.0 Ω**、I=12/3=I=12/3= **4.0 A**。電力は 122/4=12^2/4= **36 W** と 122/12=12^2/12= **12 W**。和48 Wは電源の電力 12×412\times4 Wと一致する。

  3. 消費電力1.2 kWの器具を15分使った。電力量をkWhとJで求めよ。電力量1 kWhあたり30円とし、この使用分の電力量料金を求めよ(他の料金は考えない)。

    解答・解説

    E=1.2×(15/60)=E=1.2\times(15/60)= **0.30 kWh**、0.30×3.6×106=0.30\times3.6\times10^6= **1.08×10⁶ J**。料金は 0.30×30=0.30\times30= **9円**。

確認クイズ

問1. 一定の電圧をかけた抵抗の値を2倍にすると、消費電力は?

問2. 抵抗を通過すると電流はどうなるか(定常な直流・途中に分岐なし)?

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