大気と海——地球の熱のエンジン
温室効果、大循環、海洋の役割から気候システムを理解する。
- 温室効果ガスの働きを説明できる
- 大気と海洋が熱を運ぶ仕組み(大循環)を説明できる
なぜ地球には熱を運ぶしくみが必要なのか
同じ光でも、斜めに当たると広い面積に分散します。地球では低緯度と高緯度で、単位面積あたりに受け取る日射が違います。年平均で見た低緯度の余分なエネルギーを大気と海洋が運び、高緯度の不足を補っています。暖房の近くだけが暖かい部屋で空気が動く様子が直感の助けになりますが、地球には自転と大陸もあり、単純な一往復の流れではありません。
地球全体の温度変化を考える基本は、入るエネルギーと出るエネルギーの差です。家計で収入が支出を上回ると蓄えが増えるように、吸収する太陽放射が宇宙へ出る赤外放射を上回ると地球系のエネルギーが増えます。大気や海流による地球内部の熱の移動と、宇宙とのエネルギーの出入りは分けて数えます。
S は太陽光に垂直な面が受ける単位面積あたりの放射、α は地球全体の反射率です。光を受け止める円の面積に対し、地球の表面積が 4 倍なので全球平均では 4 で割ります。F は W/m²、面積 A は m²、時間 t は s とすれば蓄積エネルギー ΔE は J。後半の式はその時間内で平均の収支が一定という近似です。
海が温度変化をゆっくりにする理由
同じエネルギーを受けても、温める物質の量が多いほど温度は上がりにくくなります。水は比熱が大きく、海では混合によって表面より下の水にも熱が分配されます。このため海沿いは内陸より気温の日変化・年変化が小さくなる傾向があります。熱量は Q = mcΔT(m:質量、c:比熱)で整理できます。ただし蒸発・凝結など状態変化の熱は、この式だけでは扱えません。
説明用に S = 1360 W/m²、反射率 α = 0.30 とする。全球平均の吸収日射は何 W/m² か。宇宙への放射が 237 W/m² なら収支は正か負か。
解答・解説
1360 × (1 − 0.30) ÷ 4 = **238 W/m²**。収支は 238 − 237 = **+1 W/m²** なのでエネルギーは増える向き。これは丸めた仮想条件の計算であり、現在の観測値や気温上昇量そのものではない。
水 1.0 kg と 4.0 kg に、それぞれ 8400 J の熱が一様に加わる。水の比熱を 4200 J/(kg·K) とし、熱損失・状態変化を無視すると、それぞれ何 ℃ 上昇するか。
解答・解説
ΔT = Q/(mc) より、1.0 kg は 8400/(1.0 × 4200) = **2.0 ℃**、4.0 kg は **0.50 ℃** 上昇する。温度差では 1 K と 1 ℃ は同じ大きさ。水量が 4 倍なら同じ熱による上昇は 1/4。海の温度を計算するときも、どの深さまで混ざるかが重要になる。
S = 1360 W/m² で反射率だけが 0.30 から 0.35 に増えた。吸収日射は何 W/m² 減るか。
解答・解説
1360 × (0.35 − 0.30) ÷ 4 = **17 W/m²** 減る。反射される割合が増えるためで、他の条件一定なら冷却の要因になる。
水 2.0 kg に 4200 J を加えた。比熱 4200 J/(kg·K)、損失・状態変化なしなら温度上昇は何 ℃ か。
解答・解説
4200 ÷ (2.0 × 4200) = **0.50 ℃**。熱量を水全体の熱容量で割る。
同じ温度・圧力の海水 A、B があり、A のほうが塩分が高い。一般にどちらが高密度か。これだけで地球全体の深層循環の速さを決められるか。
解答・解説
**A が高密度**。ただし実際の循環には温度、風、地形、混合なども関わるため、塩分の比較だけで速さは決められない。
問1. 全球平均の日射を S/4 とする理由はどれか。
問2. 他条件が同じで海洋の混合する水量が増えると、同じ熱による温度上昇はどうなるか。
問3. 大気の熱輸送の説明として正しいのはどれか。
温室効果
太陽からの短波放射が地表を暖め、地表は赤外線を放出します。二酸化炭素や水蒸気などは赤外線の一部を吸収し、上下を含むさまざまな方向へ放射します。下向きの放射が地表を暖める働きが温室効果です。現在と同じ反射率を仮定した放射収支から求まる地球の有効放射温度は約 −18 ℃ で、実際の平均地表温度の目安である約 15 ℃ より低くなります。この概算だけで温室効果のない地球の局所的な水や生命の有無までは断定できません。
- 主な温室効果ガス: 水蒸気・CO₂・メタン
- 産業革命以降、CO₂ 濃度は 280 ppm → 420 ppm 以上へ(化石燃料の燃焼・森林減少)
- 温暖化は平均気温だけでなく極端現象(猛暑・豪雨)の頻度を変える
大気と海洋の大循環
- 低緯度で受ける太陽エネルギー > 高緯度 → 熱は大気と海流によって極へ運ばれる
- ハドレー循環: 赤道付近で上昇・緯度 30° 付近で下降する循環。下降域は降水が少なく、砂漠が多いが、砂漠の成因はこれだけではない
- 海洋深層循環: 北大西洋や南極周辺で冷却などにより高密度になった海水が沈み、深層を巡る。混合や湧昇も関わり、千年程度の時間スケールで熱や炭素の分布を変える
砂漠が緯度 15〜35° に多い理由を、大気の循環と結びつけて説明せよ。
解答・解説
ハドレー循環の**下降流域**では空気が圧縮されて暖まり、相対湿度が下がるため雲が発達しにくく、雨が少ない。これが亜熱帯の砂漠が多い主な理由。寒流や山脈による雨陰も乾燥に関わる。
温室効果ガスが増えると、地表の平均気温はどうなるか。その理由も述べよ。
解答・解説
**上昇する**。地表面から出る赤外線を吸収して再び下向きに放出する量が増え、地表付近の熱収支が正になるため。
大西洋の南北の循環が弱まり、海洋が北へ運ぶ熱が減ると、ヨーロッパ西部にはどのような気温変化の要因が加わるか。
ヒント
ほかの条件が同じ場合と比べる。表層海流がすべて停止するとは限らない。
解答・解説
北向きの熱輸送が減ることで、ほかの条件が同じ場合より**冷却する方向の要因**になる。ただし風で駆動される海流がすべて止まるわけではなく、大気の熱輸送や地球温暖化もあるため、実際の気温変化をこれだけで断定できない。
問1. 地球の平均気温を約15℃に保っているしくみはどれか。
問2. 赤道上空で上昇した空気はどこで下降するか(ハドレー循環)。