細胞とDNA(遺伝情報)
細胞分裂、DNAの構造とタンパク質合成、減数分裂と遺伝の基本。
- 体細胞分裂と減数分裂の染色体数の変化を区別できる
- DNA の相補性と転写・翻訳の役割を説明できる
- 塩基の割合や染色体数について根拠を示して答えられる
なぜ同じ DNA をもつ細胞が違う働きをするのか
筋肉の細胞と神経の細胞では、形も仕事も違います。これは通常、持つ遺伝情報の大部分が違うからではなく、使う遺伝子の組み合わせや使う程度が違うためです。同じ料理本を持っていても、開くページが違えばできる料理が違う、という比喩で考えられます。DNA は情報の保存を担い、その情報をもとにつくられるタンパク質などが、細胞の構造や働きに関わります。
| 用語 | 関係を整理する説明 | 比喩の手がかり |
|---|---|---|
| DNA | 塩基配列として遺伝情報を保持する分子 | 文字が並ぶ長い記録 |
| 遺伝子 | 機能をもつ RNA やタンパク質の産生に関わる DNA の領域 | 利用する情報のまとまり |
| 染色体 | DNA とタンパク質からなる構造。分裂時に凝縮して見えやすくなる | 記録を整理したまとまり |
遺伝子の情報が RNA やタンパク質として利用されることを遺伝子発現といいます。真核細胞では核が DNA の多くを保持し、リボソームが翻訳を担います。ミトコンドリアにも独自の DNA があり、植物などの葉緑体にもあります。原核細胞には膜で囲まれた核がありませんが DNA とリボソームはあります。「核がない」ことと「遺伝情報がない」ことは同じではありません。
分裂で追うのは細胞数・染色体数・DNA 量
資料を読むときは、まず「1 細胞あたり」か「全細胞の合計」かに線を引きましょう。DNA 量を C という相対単位で表し、複製していない半数体の核の量を 1C とします。通常の二倍体では複製前が 2C、複製後が 4C。体細胞分裂後の娘細胞は各 2C です。減数分裂では第 1 分裂で相同染色体が分かれて各 n・2C、第 2 分裂で姉妹染色分体が分かれて各 n・1C になります。ここでは核の DNA を数えます。
ある動物は 2n = 6。本例では DNA 複製前の二倍体の核 DNA 量を 2C とする。減数第 1 分裂が終わった各細胞、および第 2 分裂が終わった各細胞の染色体数と核 DNA 量を答えよ。
解答・解説
第 1 分裂後は相同染色体が分かれ、**3 本・2C**。各染色体はまだ姉妹染色分体 2 本からなる。第 2 分裂後は姉妹染色分体が分かれて各細胞へ渡り、**3 本・1C**。染色体数はどちらも n = 3 だが、1 細胞あたりの DNA 量は違う。
同じ個体の通常の体細胞 A と B を比較した。架空の測定表では、ある遺伝子 X の DNA は両者に存在し、対応する mRNA の相対量は A で 80、B で 2 だった。「B には遺伝子 X がない」といえるか。
解答・解説
**いえない**。DNA は両者に存在するという資料がある。mRNA の量は A が B の 80 ÷ 2 = **40 倍**で、この測定では RNA の蓄積量に違いがあると読める。転写量だけでなく RNA の分解にも影響されるため、mRNA 量だけからタンパク質量も必ず 40 倍とは断定できない。
2n = 10 の細胞で、DNA 複製直後・体細胞分裂前の染色体数と DNA 量を答えよ。複製前は 2C とする。
解答・解説
**10 本・4C**。姉妹染色分体は増えるが、分離前の各組を 1 本の染色体と数える。
1 個の細胞が体細胞分裂を 3 回繰り返し、毎回すべての娘細胞が分裂し、死ぬ細胞がないとする。細胞数と、各娘細胞の染色体数はどうなるか。
解答・解説
細胞数は 1 → 2 → 4 → **8 個**。正常な分裂では各娘細胞の染色体数は元と同じ。細胞数の増加と染色体数の増加を混同しない。
「膜で囲まれた核がない細胞には DNA もリボソームもない」は正しいか。
解答・解説
**誤り**。原核細胞は核膜で囲まれた核をもたないが、DNA をもち、リボソームでタンパク質を合成する。核の有無だけでこれらの有無を判断できない。
問1. 通常の筋細胞と神経細胞の働きが違う主な説明はどれか。
問2. 減数第 1 分裂で主に分かれるのはどれか。
問3. mRNA の量だけから必ず断定できるのはどれか。
細胞と細胞分裂
- 体細胞分裂: 分裂前に DNA を複製し、それを 2 個の娘細胞へ等しく分配する。通常は染色体数と遺伝情報が保たれ、成長・修復に役立つ
- 減数分裂: DNA を 1 回複製した後に 2 回分裂し、染色体の組数を半分にする。ヒトでは配偶子形成につながる
- ヒトの核のある通常の体細胞は 2n = 46 本(23 対)、配偶子は n = 23 本。受精によって 23 + 23 = 46 本に戻る
真核細胞では DNA の多くが核内の染色体に含まれます。DNA 量と染色体数は別の量です。DNA 複製後の染色体は同じ情報をもつ 2 本の姉妹染色分体からなりますが、分かれる前はまとめて 1 本と数えます。そのため、複製によって DNA 量は 2 倍になっても、染色体数が直ちに 2 倍になるわけではありません。
DNAからタンパク質へ
DNA は A・T・G・C の塩基をもつ 2 本の鎖が相補的に結びついた二重らせんです。タンパク質をつくる遺伝子では、一方の鎖を鋳型に mRNA が合成されます(転写)。mRNA では T の代わりに U を使い、リボソームが 3 塩基ずつのコドンを読み取ってアミノ酸をつなぎます(翻訳)。ただし終止コドンはアミノ酸を指定せず、翻訳の終了を示します。DNA のすべての領域がタンパク質の情報をもつわけではありません。
DNA の鋳型鎖の一部分を、転写で読み取る向き(3′→5′)に「ATG CCT」と示した。対応する mRNA を 5′→3′ の向きで答えよ。
解答・解説
鋳型 DNA の A→U、T→A、G→C、C→G と対応させ、**5′-UAC GGA-3′**。もし示されたのが非鋳型鎖の 5′-ATG CCT-3′ なら答えは 5′-AUG CCU-3′ となるため、鎖の指定が不可欠。ここでは短い配列の相補性だけを扱う。
二重鎖 DNA 全体で A が全塩基の 20 % を占める。T、G、C の割合をそれぞれ求めよ。
解答・解説
相補性から A と T は同数なので T は 20 %。残る 60 % を G と C が等しく分けるため、G と C はそれぞれ 30 %。この関係は 2 本の鎖を合わせた全体について成り立ち、片方の鎖だけには一般に成り立たない。
核のあるヒトの体細胞が DNA を複製し終え、まだ分裂していない。染色体数と DNA 量は、複製前と比べてどうなっているか。
解答・解説
染色体数は 46 本のまま、DNA 量は 2 倍。姉妹染色分体が分かれる前なので、各組を 1 本の染色体と数える。分裂後は通常、それぞれの娘細胞に 46 本ずつ分配される。
ある動物の体細胞の染色体数は 2n = 8 本である。正常な配偶子と受精卵の染色体数を答えよ。
解答・解説
配偶子は減数分裂により n = 4 本。受精卵は 4 + 4 = 8 本。受精のたびに染色体数が増え続けないのは、配偶子形成時に半減するため。
二重鎖 DNA 全体で G が 28 % のとき、A は何 % か。また「すべてのコドンがアミノ酸を指定する」は正しいか。
解答・解説
C も 28 % なので、A は (100 − 28 − 28) ÷ 2 = 22 %。後半は誤り。終止コドンはアミノ酸を指定せず、翻訳を終了させる。