軌道の概念と化学結合
電子は「軌道」という確率の雲に住む。そこから結合の本質を理解する。
この単元の目標
- 量子数と軌道の形を対応づけられる
- 分子軌道の考え方で結合次数を求められる
なぜ「軌道」か
原子軌道は電子の古典的な通り道ではなく、波動関数 ψ です。位置の確率密度は |ψ|² で与えられます。水素原子では主量子数 n = 1, 2, 3…、方位量子数 l = 0, 1, …, n−1、磁気量子数 mₗ = −l, …, l で軌道を指定します。l = 0, 1, 2, 3 に s, p, d, f が対応します。s の確率密度は球対称、実数の p 軌道は亜鈴形です。
分子軌道法の直感
原子軌道を足し合わせると結合性軌道(エネルギー低下)、引くと反結合性軌道(エネルギー上昇)。電子を低い方から詰めると結合次数 = (結合電子数 − 反結合電子数)/2 が得られます。
| 分子 | 結合次数 | 意味 |
|---|---|---|
| H₂ | 1 | 単結合、安定 |
| O₂ | 2 | 不対電子2個 → 常磁性(分子軌道法の勝利) |
| He₂ | 0 | 単純な分子軌道モデルでは共有結合しない(極めて弱い分散力による二量体は別) |
混成軌道と分子の形
- sp³(メタン): 正四面体 109.5° sp²(エチレン): 平面三角形 120° sp(アセチレン): 直線 180°
- VSEPR 理論:非共有電子対は結合電子対より強く反発 → 水の H–O–H は 104.5°
例題
O₂ が常磁性であることを、高校のルイス構造式では説明できない理由を述べよ。
解答・解説
ルイス構造では O₂ の電子はすべて対にして書く。しかし実験では O₂ は磁石に引かれる(不対電子をもつ常磁性)。分子軌道法で π* 反結合性軌道に不対電子が2個入ることで初めて説明できる——モデルの限界と進化の好例。
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