反応機構——電子の流れで理解する

曲がった矢印(電子対の移動)で反応を書き、生成物を予測する。

この単元の目標
  • 求電子剤・求核剤の概念で反応の駆動力を説明できる
  • SN1・SN2・付加・脱離の特徴を比較できる
  • カルボカチオンの安定性から生成物を選択できる
📑 目次
  1. 電子が動けば反応になる
  2. 代表的な反応型
  3. カルボカチオンの安定性

電子が動けば反応になる

ここで扱う極性反応は電子対の移動で表します。曲矢印は求核剤の孤立電子対や結合から、電子を受け取る求電子中心へ描きます。すべての有機反応が電子対だけで進むわけではなく、ラジカル反応では一電子移動を片矢印で表します。

種類例働き
求核剤 (nucleophile)OH−OH^-, CN−CN^-, NH3NH_3電子対を渡す
求電子剤 (electrophile)H+H^+, CH3+CH_3^+, Br2Br_2電子対を受け取る
脱離基 (leaving group)Cl−Cl^-, H2OH_2O(プロトン化した OH 基から)結合電子対を受け取り、イオンや中性分子として抜ける

代表的な反応型

反応しくみ決め手
SN2一歩で置換(裏面攻撃)**立体反転**、強い求核剤・一次ハロゲン化物で有利
SN1カルボカチオン経由**ラセミ化傾向**(イオン対などにより完全な1:1とは限らない)、三次基質で有利
E1/E2脱離(H を引き抜いて二重結合形成)塩基の強さ・温度が高いほど脱離優勢
求電子付加二重結合へのイオン機構の HBr 付加など単純な非対称アルケンではマルコフニコフ則。ラジカル機構などは別
例題

(S)-2-ブロモブタンに NaOH を SN2 で反応させると何が得られるか。

解答・解説

**裏面攻撃による立体反転**で (R)-2-ブタノール。光学活性が保たれるが配置が反転します(Walden 反転)。

カルボカチオンの安定性

第三>第二>第一>CH3+\text{第三} > \text{第二} > \text{第一} > CH_3^+

単純なアルキルカルボカチオンでは、アルキル基の超共役+誘起効果が正電荷を分散させ、通常は第三級 > 第二級 > 第一級 > メチルとなります。共鳴安定化するベンジル型・アリル型などにはこの序列をそのまま適用できません。

練習問題
  1. プロペンへの HBr の付加がイオン機構で進むと仮定したときの主生成物は?

    ヒント

    マルコフニコフ則

    解答・解説

    **2-ブロモプロパン**。中間体の第二カルボカチオンの方が第一より安定だから。

  2. tert-ブチルクロリドを水中で加水分解するとき、反応次数は?

    解答・解説

    **一次(SN1)**。律速段階は C−Cl の解離のみで、水の濃度に依存しない。

  3. アルケンへの臭素付加が「赤褐色の消失」で検出できる理由を述べよ。

    解答・解説

    Br2Br_2 が二重結合に付加して無色のジブロモ化合物になるため。不飽和結合の確認反応として使われる。

確認クイズ(反応機構)

問1. SN2 反応の立体化学的特徴は?

問2. 最も安定なカルボカチオンはどれか。

問3. 求核剤の例として適切なものは?

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