反応機構——電子の流れで理解する
曲がった矢印(電子対の移動)で反応を書き、生成物を予測する。
この単元の目標
- 求電子剤・求核剤の概念で反応の駆動力を説明できる
- SN1・SN2・付加・脱離の特徴を比較できる
- カルボカチオンの安定性から生成物を選択できる
電子が動けば反応になる
ここで扱う極性反応は電子対の移動で表します。曲矢印は求核剤の孤立電子対や結合から、電子を受け取る求電子中心へ描きます。すべての有機反応が電子対だけで進むわけではなく、ラジカル反応では一電子移動を片矢印で表します。
| 種類 | 例 | 働き |
|---|---|---|
| 求核剤 (nucleophile) | , , | 電子対を渡す |
| 求電子剤 (electrophile) | , , | 電子対を受け取る |
| 脱離基 (leaving group) | , (プロトン化した OH 基から) | 結合電子対を受け取り、イオンや中性分子として抜ける |
代表的な反応型
| 反応 | しくみ | 決め手 |
|---|---|---|
| SN2 | 一歩で置換(裏面攻撃) | **立体反転**、強い求核剤・一次ハロゲン化物で有利 |
| SN1 | カルボカチオン経由 | **ラセミ化傾向**(イオン対などにより完全な1:1とは限らない)、三次基質で有利 |
| E1/E2 | 脱離(H を引き抜いて二重結合形成) | 塩基の強さ・温度が高いほど脱離優勢 |
| 求電子付加 | 二重結合へのイオン機構の HBr 付加など | 単純な非対称アルケンではマルコフニコフ則。ラジカル機構などは別 |
例題
(S)-2-ブロモブタンに NaOH を SN2 で反応させると何が得られるか。
解答・解説
**裏面攻撃による立体反転**で (R)-2-ブタノール。光学活性が保たれるが配置が反転します(Walden 反転)。
カルボカチオンの安定性
単純なアルキルカルボカチオンでは、アルキル基の超共役+誘起効果が正電荷を分散させ、通常は第三級 > 第二級 > 第一級 > メチルとなります。共鳴安定化するベンジル型・アリル型などにはこの序列をそのまま適用できません。
練習問題
プロペンへの HBr の付加がイオン機構で進むと仮定したときの主生成物は?
ヒント
マルコフニコフ則
解答・解説
**2-ブロモプロパン**。中間体の第二カルボカチオンの方が第一より安定だから。
tert-ブチルクロリドを水中で加水分解するとき、反応次数は?
解答・解説
**一次(SN1)**。律速段階は C−Cl の解離のみで、水の濃度に依存しない。
アルケンへの臭素付加が「赤褐色の消失」で検出できる理由を述べよ。
解答・解説
が二重結合に付加して無色のジブロモ化合物になるため。不飽和結合の確認反応として使われる。
確認クイズ(反応機構)
問1. SN2 反応の立体化学的特徴は?
問2. 最も安定なカルボカチオンはどれか。
問3. 求核剤の例として適切なものは?
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