熱力学の第0法則と温度の定義

「温度」とは何かを問い直す。熱平衡・第0法則から温度計の原理、理想気体温度計による目盛りの定義までを導く。

この単元の目標
  • 熱平衡と熱力学第0法則を述べ、温度計が使える理由を説明できる
  • 理想気体の状態方程式から絶対温度の定義を導ける
  • セルシウス度とケルビンの換算、絶対零度の意味を説明できる
📑 目次
  1. 温度とは——熱平衡という概念から始める
  2. 理想気体温度計と絶対温度の定義
  3. 状態方程式の導出

温度とは——熱平衡という概念から始める

「熱い」「冷たい」は触覚の感覚ですが、物理学的な温度は熱平衡という概念で定義されます。2つの物体を接触させて放置したとき、状態がそれ以上変化しなくなれば2つの物体は同じ温度にある、つまり熱平衡にあると言います。

🔍 第0法則——なぜ温度計が使えるのか

  1. Step 1: 3つの系 A, B, C を用意する
    A↔C,B↔C(thermal equilibrium)A \leftrightarrow C, \quad B \leftrightarrow C \quad \text{(thermal equilibrium)}

    C を温度計だと思ってください。C は A とも B とも熱平衡にあるとします。

  2. Step 2: A と B を接触させる
    A↔Bno changeA \leftrightarrow B \quad \text{no change}

    経験上、A と B の間には何も起こりません。これが実験事実です。

  3. Step 3: 法則として宣言する
    A∼C∧B∼C  ⟹  A∼BA \sim C \wedge B \sim C \implies A \sim B

    「それぞれ第3の系と熱平衡にある2つの系は互いに熱平衡にある」——これが熱力学第0法則です。

  4. Step 4: 温度という状態量の存在
    θ(A)=θ(C)=θ(B)\theta(A) = \theta(C) = \theta(B)

    熱平衡は推移的なので、「いくつ」かを表す状態量 θ(温度)を各系に割り当てられることになります。温度計 C を介して他の物体の温度を比較・測定できるのはこの法則のおかげです。

理想気体温度計と絶対温度の定義

ボイルの法則とシャルルの法則を組み合わせると、希薄な気体の圧力 PP、体積 VV、温度 TT の間に美しい関係が成り立ちます。この TT を絶対温度(ケルビン)といい、セルシウス度との関係は T=t+273.15T = t + 273.15 です。

PV=nRTPV = nRT

状態方程式の導出

🔍 ボイル+シャルル → PV = nRT

  1. Step 1: ボイルの法則
    PV=const(T,n fixed)PV = \text{const} \quad (T, n \text{ fixed})

    温度とモル数を固定すると圧力と体積の積は一定です。

  2. Step 2: シャルルの法則
    VT=const(P,n fixed)\dfrac{V}{T} = \text{const} \quad (P, n \text{ fixed})

    圧力固定で体積は絶対温度に比例します。0 °C = 273.15 K の目盛りを使うのがポイントです。

  3. Step 3: 2つの法則を合わせる
    PV=f(T,n)PV = f(T, n)

    温度とモル数だけで決まる関数が存在します。気体の種類に依存しない共通の関数であることが実験でわかります。

  4. Step 4: 比例定数 R を導入
    PV=nRTPV = nRT

    さらにアボガドロの法則(同温・同圧で V は n に比例)を使って比例定数を nR と書きます。R ≈ 8.31 J/(mol·K)。実在気体は低密度極限で理想気体に近づき、この極限が理想気体温度計による温度測定の基礎です。現在の SI ではケルビンはボルツマン定数の値を固定して定義されます。

法則/概念内容役割
第0法則熱平衡の推移性温度という状態量の存在根拠
ボイルの法則PVPV 一定(TT, nn 固定)状態方程式の部品
シャルルの法則V/TV/T 一定(PP, nn 固定)絶対温度目盛りの導入
理想気体の状態方程式PV=nRTPV = nRT温度の操作的定義
例題

27 °C、1.0×105 Pa1.0 \times 10^5\ \mathrm{Pa} で体積 2.0 m32.0\ \mathrm{m^3} の理想気体がある。温度を 127 °C に上げ、圧力を 2.0×105 Pa2.0 \times 10^5\ \mathrm{Pa} にしたときの体積を求めよ。

解答・解説

物質量が一定なら PV/TPV/T は一定。T1=300.15 KT_1=300.15\,\mathrm K、T2=400.15 KT_2=400.15\,\mathrm K より V2=V1(T2/T1)(P1/P2)=2.0×(400.15/300.15)×(1/2)≈1.33 m3V_2=V_1(T_2/T_1)(P_1/P_2)=2.0\times(400.15/300.15)\times(1/2)\approx1.33\,\mathrm{m^3}。温度を 300 K、400 K と概算しても同じ有効数字で一致する。

状態方程式に入れる温度は必ず絶対温度です。°C のまま代入するのが典型ミス。換算は T=t+273.15T = t + 273.15(概算で +273)。
練習問題
  1. 25 °C は何 K か。また 300 K は何 °C か。

    解答・解説

    25+273.15=25 + 273.15 = **298.15298.15 K**、300−273.15=300 - 273.15 = **26.8526.85 °C**

  2. 物質量と体積が一定の理想気体で、温度を 0 °C から 273 °C に上げると圧力は何倍になるか。

    ヒント

    P/TP/T 一定。セルシウス温度には 273.15 を加える。

    解答・解説

    P2/P1=546.15/273.15≈1.99945P_2/P_1=546.15/273.15\approx1.99945、したがって**約 2 倍**。厳密に2倍ではない。

  3. 第0法則がないと温度計が使えない理由を説明せよ。

    ヒント

    熱平衡の推移性が崩れると何が起きるか。

    解答・解説

    温度計 C が A と B の双方と熱平衡でも A と B が同温である保証がなくなり、**温度を比較する操作自体が成立しない**ため

確認クイズ(熱力学)

問1. 熱力学第0法則が保証していることはどれか。

問2. 理想気体の状態方程式における R の単位はどれか。

問3. 絶対温度 400 K は何 °C か。

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