因数分解のすべて——たすきがけ・grouping・置換

共通因数、公式、たすきがけ、grouping(組み替え)、置換を体系化。なぜたすきがけで因数分解できるのかという原理から、複雑な式の処理までを学ぶ。

この単元の目標
  • 共通因数でくくり、展開の公式を逆向きに使って因数分解することができる
  • たすきがけで x2+(a+b)x+abx^2 + (a + b)x + ab 型や px2+qx+rpx^2 + qx + r 型を因数分解し、その原理を説明できる
  • 式の一部を文字におきかえる置換を使い、複雑な式を段階的に完全因数分解できる
📑 目次
  1. 因数分解は「展開の逆向き」
  2. 公式の使い分け表
  3. たすきがけの原理——なぜ斜めの線を引くのか
  4. たすきがけの符号の決め方
  5. grouping(組み合わせてくくる)
  6. 置換(式の一部を文字におきかえる)

因数分解は「展開の逆向き」

(x+2)(x+3)(x + 2)(x + 3) を展開すると x2+5x+6x^2 + 5x + 6 ですが、この操作を逆向きに行って 多項式をいくつかの式の積の形にすること が因数分解です。まず必ず確認するのは 共通因数 の有無、次に 展開の公式を逆向きに使えないか、それでもだめなら たすきがけ、4項あったら grouping(組み替え) という順番で考えるのが定石です。因数分解は答えが1通りとは限らず、最後は これ以上分割できない形(完全な因数分解)まで行う のがルールです。

公式の使い分け表

式の形公式(逆向き)見分けるポイント
ka+kb+kcka + kb + kck(a+b+c)k(a + b + c)すべての項に共通する文字・数を探す
a2+2ab+b2a^2 + 2ab + b^2(a+b)2(a + b)^2首尾が a2, b2a^2,\ b^2、真ん中が 2ab2ab
a2−2ab+b2a^2 - 2ab + b^2(a−b)2(a - b)^2真ん中の項がマイナスの 2ab2ab
a2−b2a^2 - b^2(a+b)(a−b)(a + b)(a - b)2つの平方の差(和と差の積)
x2+(a+b)x+abx^2 + (a + b)x + ab(x+a)(x+b)(x + a)(x + b)積が定数項・和が中間項になる2数を探す
acx+adx+bcx+bdxacx + adx + bcx + bdx(a+b)(c+d)x(a + b)(c + d)x 形4項あれば grouping(組み替え)を試す
最初の一手は 共通因数 です。2x2+4x=2x(x+2)2x^2 + 4x = 2x(x + 2) のようにくくり出してから公式を当てはめると、扱う数字が小さくなって楽になります。因数分解の前に、次数の高い項から順に並べる(降冪の順)整理も済ませておきましょう。

たすきがけの原理——なぜ斜めの線を引くのか

(px+q)(rx+s)=pr x2+(ps+qr)x+qs(px + q)(rx + s) = pr\,x^2 + (ps + qr)x + qs

🔍 たすきがけがなぜうまくいくか——展開の構造を分解する

  1. Step 1: 展開をばらして観察する
    (px+q)(rx+s)=pr x2+ps x+qr x+qs=pr x2+(ps+qr)x+qs(px + q)(rx + s) = pr\,x^2 + ps\,x + qr\,x + qs = pr\,x^2 + (ps + qr)x + qs

    中間項は 斜め(たすき)の積の和 ps+qrps + qr だけで作られています。ここがたすきがけの核心です。

  2. Step 2: $2x^2 + 7x + 3$ に当てはめる
    pr=2,qs=3,ps+qr=7pr = 2, \qquad qs = 3, \qquad ps + qr = 7

    x2x^2 の係数になる積 prpr、定数項になる積 qsqs、中間項になるたすきの和 ps+qrps + qr の3つの条件を満たす組を探します。

  3. Step 3: 候補を総当たりで試す
    (p,r)=(2,1),(q,s)=(1,3)  ⟹  ps+qr=2×3+1×1=7(p, r) = (2, 1), \quad (q, s) = (1, 3) \implies ps + qr = 2 \times 3 + 1 \times 1 = 7

    たすきがけの表とは、この候補出しを効率よく行うための道具なのです。

  4. Step 4: 結論(検算つき)
    2x2+7x+3=(2x+1)(x+3)2x^2 + 7x + 3 = (2x + 1)(x + 3)

    展開して戻すと元の式になり、因数分解が正しいことが確かめられます。検算は1回必ずやりましょう。

たすきがけの符号の決め方

  • 第3項がプラス: 2数は同符号。中間項がプラスなら両方プラス、マイナスなら両方マイナス
  • 第3項がマイナス: 2数は異符号。絶対値の大きいほうに中間項の符号を合わせる
  • 候補が複数あるときは 中間項の和 が一致する組を選び、最後に展開して検算する
例題 1

x2+5x+6x^2 + 5x + 6 と 3x2−10x+83x^2 - 10x + 8 を因数分解せよ。

解答・解説

x2+5x+6x^2 + 5x + 6: 和 55・積 66 となる2数は 22 と 33 なので (x+2)(x+3)(x + 2)(x + 3)。3x2−10x+83x^2 - 10x + 8: たすきがけより ps+qr=(−4)×1+(−2)×3=−10ps + qr = (-4) \times 1 + (-2) \times 3 = -10 なので (3x−4)(x−2)(3x - 4)(x - 2)

grouping(組み合わせてくくる)

4つの項に公式が直接使えないときは、項を2つずつグループに分けてそれぞれ共通因数でくくり、あらためて共通因数をくくる 方法(grouping)が有力です。グループの分け方は1通りとは限らず、うまくいかないときは組み合わせを変えてみます。成功の目安は、各グループをくかったあとに 同じ中身のかっこ が現れることです。

ax+ay+bx+by=a(x+y)+b(x+y)=(a+b)(x+y)ax + ay + bx + by = a(x + y) + b(x + y) = (a + b)(x + y)
例題 2

x2−3x+ax−3ax^2 - 3x + ax - 3a を因数分解せよ。

解答・解説

前半と後半をそれぞれくると x(x−3)+a(x−3)x(x - 3) + a(x - 3)、共通因数 (x−3)(x - 3) でくって (x−3)(x+a)(x - 3)(x + a)

置換(式の一部を文字におきかえる)

(x2+x)2−8(x2+x)+12(x^2 + x)^2 - 8(x^2 + x) + 12 のように 同じまとまりが繰り返し現れる式 は、そのまとまりを AA などの1文字におきかえると見通しがよくなります。AA で因数分解したあとは、必ず元の式に戻して さらに因数分解できるかを確認します。ここを省略すると「因数分解したつもり」で終わってしまうので注意しましょう。

A=x2+x  ⟹  A2−8A+12=(A−2)(A−6)A = x^2 + x \implies A^2 - 8A + 12 = (A - 2)(A - 6)
例題 3

(x2+x)2−8(x2+x)+12(x^2 + x)^2 - 8(x^2 + x) + 12 を因数分解せよ。

解答・解説

A=x2+xA = x^2 + x とおくと (A−2)(A−6)(A - 2)(A - 6)。元に戻すと (x2+x−2)(x2+x−6)(x^2 + x - 2)(x^2 + x - 6)、さらにたすきがけで (x+2)(x−1)(x+3)(x−2)(x + 2)(x - 1)(x + 3)(x - 2)

x4−16=(x2+4)(x2−4)x^4 - 16 = (x^2 + 4)(x^2 - 4) で終わってはいけません。x2−4x^2 - 4 はまだ平方の差なので、最終的な答えは (x2+4)(x+2)(x−2)(x^2 + 4)(x + 2)(x - 2) です。因数分解の最後には すべての因数がこれ以上分割できないか を必ずチェックしましょう。
練習問題
  1. 2x2+5x+22x^2 + 5x + 2 をたすきがけで因数分解せよ。

    ヒント

    積が 22・積が 22、たすきの和が 55 になる組を探す。

    解答・解説

    pr=2, qs=2, ps+qr=4+1=5pr = 2,\ qs = 2,\ ps + qr = 4 + 1 = 5 なので (2x+1)(x+2)(2x + 1)(x + 2)

  2. x2−xy−2y2x^2 - xy - 2y^2 を因数分解せよ。

    ヒント

    yy を定数だと思ってたすきがけする。

    解答・解説

    積 −2y2-2y^2、和 −y-y となるのは −2y-2y と yy なので (x−2y)(x+y)(x - 2y)(x + y)

  3. x2−4x−xy+4yx^2 - 4x - xy + 4y を因数分解せよ。

    ヒント

    前半2項・後半2項に分けて grouping。

    解答・解説

    x(x−4)−y(x−4)=(x−4)(x−y)x(x - 4) - y(x - 4) = (x - 4)(x - y)

  4. x4−5x2+4x^4 - 5x^2 + 4 を因数分解せよ。

    ヒント

    A=x2A = x^2 とおいたあと、戻してもう一度分解する。

    解答・解説

    (x2−1)(x2−4)(x^2 - 1)(x^2 - 4) となり、さらに分解して (x+1)(x−1)(x+2)(x−2)(x + 1)(x - 1)(x + 2)(x - 2)

確認クイズ

問1. x2−9x^2 - 9 を因数分解するとどれか。

問2. 2x2+11x+122x^2 + 11x + 12 をたすきがけで因数分解するとどれか。

問3. ax+ay+bx+byax + ay + bx + by の因数分解として正しいものはどれか。

📝 メモこの端末のみに保存
メモ欄はページ読み込み後に使えるようになります。