速さの文章題:出会い・追いつき・往復を時間線で解く

時間線で出発・出会い・折り返しを整理し、道のりの和と差から方程式をつくる。遅れて出発する追いつきや、休憩を含む往復も、何を同じにするか考えて解こう。

この単元の目標
  • 時刻と経過時間を区別し、同じ時間線に複数の人の動きを整理できる
  • 向かい合うときは道のりの和、追いつくときは位置の一致から式をつくれる
  • 往復を区間に分け、移動時間と休憩時間を足して方程式を立てられる
  • 答えの単位・位置・動きの条件を確かめ、別の方法で検算できる
📑 目次
  1. 1.まず時計をそろえる:同じ「3分後」でも基準が違う
  2. 2.1分ぶんを積み重ねると、道のりになる
  3. 3.出会い:2人で最初のすき間を埋める
  4. 4.追いつき:先行した分を、1分ずつ取り戻す
  5. 5.往復:同じなのは時間ではなく、片道の道のり
  6. 6.折り返しの前後では、式を作り直す

1.まず時計をそろえる:同じ「3分後」でも基準が違う

先に歩き始めた人と、あとから追いかける人を想像しましょう。「3分歩いた」と言われても、誰がいつ出発したかで、いる場所は変わります。文章題で先に必要なのは公式ではなく、いつから何分間動いたかです。紙に左から右へ時間線を引き、「A出発 → B出発 → 追いつく」の順に出来事を置くと、時間のずれを目で追えます。

たとえば A が9時に出発し、B が9時6分に出発するなら、9時9分には A は9分間、B は3分間動いています。同じ時刻でも移動時間は違います。「B出発から t 分後」と置いたとき、A の移動時間は t+6 分、B は t 分です。時間線には等間隔の目盛りがなくてもかまいませんが、出来事の順と区間の長さは必ず書きましょう。

出来事時計の時刻Aの移動時間Bの移動時間
A出発9時00分0分まだ出発していない
B出発9時06分6分0分
同じ時刻で位置を比べる9時09分9分3分
この記事の道・時刻・速さは学習用の架空設定です。各移動区間では一定の速さで進み、明記した休憩以外は止まらないとします。折り返しに時間はかからないモデルです。実際の歩行や交通では加減速などがあるので、そのまま到着予測には使えません。値は設定上の正確な数値とし、途中で丸めません。

2.1分ぶんを積み重ねると、道のりになる

毎分60 mなら、1分で60 m、2分で120 m、半分の0.5分で30 m進みます。毎分の増分を時間のぶんだけ積み重ねたものが道のりです。一定の速さ v、移動時間 t、道のり d の関係は次のようになります。v を m/分、t を分で表せば、d は m です。

d=vt,t=dv (v>0),v=dt (t>0)d=vt, \qquad t=\frac{d}{v}\ (v>0),\qquad v=\frac{d}{t}\ (t>0)
時刻と時間を混ぜないこと。9時6分を「9.6時間の移動」とは扱いません。また、時速4.8 kmと10分をそのまま掛けることはできません。4.8 km/時=4800 m÷60分=80 m/分と直すと、10分で800 mです。速度が変わるときは区間を分け、各区間の道のりを足します。

3.出会い:2人で最初のすき間を埋める

向かい合う2人の間に、長いリボンがあると考えます。Aが1分で60 m、Bが1分で80 m進むと、リボンの残りは両端から合計140 m短くなります。これは平均ではなく、2人が同時に埋めた道のりの和です。最初の距離が L mなら、出会うまでに2人が進む道のりの和は L mになります。

🔍 同時出発の出会いを式にする

  1. 同じ時間を使う
    dA=60t,dB=80td_A=60t,\qquad d_B=80t

    t は同時出発から出会うまでの分数。道のりの単位は m。

  2. 最初の距離を2人で分ける
    60t+80t=L60t+80t=L

    出会うまでに進んだ2人の道のりを足すと、最初の距離になる。

  3. 毎分の減少量で割る
    140t=L⟹t=L140140t=L\quad\Longrightarrow\quad t=\frac{L}{140}

    一般には、最初の距離÷速さの和。同じ時間区間、向かい合う動き、一定の速さという条件で使える。

例題1:何分後、どの地点で出会う?

840 m離れたPとQから、AはPを、BはQを9時に同時出発し、相手の出発地点へ向かう。速さはAが60 m/分、Bが80 m/分。出会う時刻と、Pから出会う地点までの道のりを求めよう。

解答・解説

①時間線は「9時:同時出発 → t分後:出会い」。②2人の道のりの和を使い、60t+80t=840。③140t=840よりt=6。時刻は**9時6分**。④PからはAの道のりなので60×6=**360 m**。検算すると、Bは80×6=480 m進み、360+480=840 m。Qからの位置も840−480=360 mで一致します。

「速さの和で割る」は万能ではありません。たとえば2人が違う時刻に出発すれば、出会うまでの移動時間も違います。あとから出発する時点の残りの距離を求めてから考えるか、各人の道のりを、それぞれの移動時間を使って書きます。出会ったあとは進んだ道のりの和が最初の距離を超えるので、「残りのすき間」という解釈もそこで終わります。

4.追いつき:先行した分を、1分ずつ取り戻す

同じ方向へ進むとき、後ろの人が毎分210 m、前の人が毎分70 m進むなら、後ろの人が210 m進んでいる間に、前の人も70 m逃げています。取り戻せるのは毎分210−70=140 mです。ここでは道のりの和ではなく、2人の間隔がどれだけ減るかを考えます。先行距離を D mとすると、追いつくまでにこの D mを取り戻せばよいのです。

D−(vfast−vslow)t=0⟹t=Dvfast−vslowD-(v_{\mathrm{fast}}-v_{\mathrm{slow}})t=0 \quad\Longrightarrow\quad t=\frac{D}{v_{\mathrm{fast}}-v_{\mathrm{slow}}}

この式の t は「先行距離 D を測った時点」からの時間です。D>0で、後ろの人の速さが前の人より大きいときに使います。前後の人が同じ速さなら間隔は変わらず、後ろの人のほうが遅ければ間隔は広がります。直線の道をそのまま進むモデルでは、どちらの場合も追いつきません。

例題2:6分遅れの出発を、2通りの式で解く

Aは9時にPを70 m/分で歩き始める。Bは9時6分に同じPを210 m/分で出発し、Aを同じ向きに追いかける。2人は3 km先のQまで一定の速さで進む。Qに着く前に追いつくなら、B出発から何分後か。時刻とPからの道のりも求めよう。

解答・解説

①時間線は「9時:A出発 → 6分 → 9時6分:B出発 → t分 → 追いつき」。Aはt+6分、Bはt分動きます。②B出発時の先行距離は70×6=420 m。③毎分210−70=140 mずつ縮むので、t=420÷140=**3分後**。時刻は**9時9分**、Pからの道のりは210×3=**630 m**。別解では、同じPから測った位置を等しくして70(t+6)=210t。70t+420=210tから同じくt=3です。検算はAの位置70×9=630 m。630 m<3000 mなので、Qに着く前という条件も満たします。

時間線上の出来事Aの位置(Pから)Bの位置(Pから)間隔
9時6分:B出発420 m0 m420 m
9時7分:B出発1分後490 m210 m280 m
9時8分:B出発2分後560 m420 m140 m
9時9分:追いつき630 m630 m0 m
420÷210=2分では追いつけません。2分でBが到達するのは「B出発時にAがいた420 m地点」です。その間にAは140 m進み、560 m地点にいます。追いつきは過去の位置ではなく、同じ時刻の位置の一致です。また t をA出発からの時間と決めたなら、Bの移動時間は t−6 分(t≧6)となり、70t=210(t−6)。解は t=9 分で、同じ9時9分を表します。

5.往復:同じなのは時間ではなく、片道の道のり

往復では行きと帰りの道のりが同じでも、速さが違うと時間は違います。片道を x mとして、時間線を「出発 → 行き → 到着・休憩 → 帰り → 帰着」に分けましょう。行きが遅ければ、その区間が時間線では長くなります。移動中だけの時間を聞くのか、休憩込みの経過時間を聞くのかも区別します。

🔍 休憩を含む往復時間を足す

  1. 行きと帰りを別々に求める
    tout=xvout,tback=xvbackt_{\mathrm{out}}=\frac{x}{v_{\mathrm{out}}},\qquad t_{\mathrm{back}}=\frac{x}{v_{\mathrm{back}}}

    片道の道のりxは共通。往路と復路の速さは正とし、道のり・速さ・時間の単位をそろえる。

  2. 時間線の区間を全部足す
    T=xvout+r+xvbackT=\frac{x}{v_{\mathrm{out}}}+r+\frac{x}{v_{\mathrm{back}}}

    Tは出発から帰着までの経過時間。休憩rの間は道のりが増えないが、時計は進む。

例題3:帰着時刻から片道の道のりを求める

9時に家を出て、公園まで60 m/分で歩く。公園で5分休憩し、同じ道を90 m/分で家に戻ると9時55分だった。家と公園の片道の道のりを求めよう。

解答・解説

①時間線の全体は55分で、その内訳は「行き+休憩5分+帰り」。②片道を x m(x>0)とすると、x/60+5+x/90=55。③休憩を除くと x/60+x/90=50。両辺を180倍して3x+2x=9000、5x=9000より **x=1800 m**。④独立に時刻を確かめると、行き1800÷60=30分で9時30分着、5分休んで9時35分発、帰り1800÷90=20分で9時55分着。片道を同じ1800 mとして全条件が再現できます。

往復全体の55分を2等分してはいけません。休憩があり、行きと帰りの速さも違うからです。また、往復の道のりは片道の2倍です。例題3では総道のり3600 m、移動時間50分。移動中の平均の速さは72 m/分ですが、休憩込みの平均は3600÷55=720/11 m/分で別の値です。「平均」に使う時間の範囲も明記しましょう。

6.折り返しの前後では、式を作り直す

2人のうち1人が折り返す問題も、時間線の区切りを増やすだけです。ただし「折り返したから向かい合う」とは限りません。折り返した瞬間、2人はどこにいて、どちらへ進んでいるでしょうか。位置を道の図に置いて矢印を描くと、和か差かを判断できます。

例題4:折り返した人は、同じ向きの人を追いかける

PとQは720 m離れている。AはPからQへ60 m/分、BはQからPへ40 m/分で同時に出発する。AはQに着くとすぐ同じ速さでPへ折り返す。BはPに着いたらそこで待つ。AがQを折り返した後、Bと再び会うのは出発から何分後か。

解答・解説

①AがQに着くのは720÷60=12分後。このときBはPから720−40×12=240 mの地点にいます。②Aは720 m地点からPへ、Bも240 m地点からPへ進むので**同じ向き**。間隔は720−240=480 m、縮む速さは60−40=20 m/分です。③この動きが続くと480÷20=24分かかりますが、Bは残り240÷40=6分でPに着くので、この式を24分先まで使えません。④出発18分後、BはPで停止。AはPから720−60×6=360 mの地点にいます。Aが残り360 mを進むのに6分かかるため、再会は**出発24分後、P**です。検算:Aは往復1440 mを60 m/分で24分、Bは720 mを40 m/分で18分進んで6分待ち、同時刻にPにいます。

  1. 時間線に出発・折り返し・停止などの出来事を順に置く。求める t がどこからの時間か書く。
  2. 動きの変わらない区間ごとに、速さ・移動時間・道のりをそろえる。
  3. 向かい合うなら道のりの和、追いつきなら同時刻の位置、往復なら時間の合計を等式にする。
  4. 式を解いたら、次の折り返しや停止より前の時刻か確かめる。区間を超えていたら、次の出来事から考え直す。
  5. 最後に時刻・位置・単位を文章で答え、式への代入だけでなく実際の移動の内訳を再現する。
練習:式と答えの両方を書こう
  1. 1000 m離れたPとQから、AはPを50 m/分、BはQを75 m/分で同時出発し、向かい合って進む。何分後に出会い、Pから何mの地点か。

    ヒント

    出会うまでの時間を t 分として、2人の道のりを足す。

    解答・解説

    50t+75t=1000よりt=8。**8分後、Pから400 m**。Aは50×8=400 m、Bは75×8=600 mで、和は1000 mです。

  2. 十分長い直線の道を、Aは80 m/分で出発。10分後に同じ地点からBが120 m/分で同じ向きに出発する。停止や折り返しはない。B出発から何分後、出発地点から何m先で追いつくか。

    ヒント

    B出発時の先行距離は800 m。Aの移動時間はBより10分長い。

    解答・解説

    **20分後、2400 m先**。800÷(120−80)=20分。位置の式80(t+10)=120tでもt=20。Aは80×30=2400 m、Bは120×20=2400 mです。

  3. ある場所まで行きは50 m/分、帰りは75 m/分で同じ道を往復した。目的地で4分休み、出発から帰着まで44分だった。片道の道のりは何mか。

    ヒント

    片道 x mなら移動時間は x/50+x/75 分。休憩を先に引いてもよい。

    解答・解説

    **1200 m**。x/50+x/75=44−4=40。150倍して3x+2x=6000よりx=1200。行き24分、休憩4分、帰り16分で44分になります。

  4. 一直線の道でAがBより200 m前にいる。Aは70 m/分、Bは60 m/分で、同じ方向へ止まらず進む。BはAに追いつけるか。5分後の間隔も求めよう。

    ヒント

    後ろの人のほうが遅いので、間隔は縮むか広がるか。

    解答・解説

    **追いつけません。5分後の間隔は250 m**。t分後の間隔は200+(70−60)t=200+10t。t≧0では0になりません。5分後は200+10×5=250 m。負の時間を追いつくまでの時間として答えてはいけません。

確認クイズ:どの時間・どの距離を使う?

問1. Aが先に出発し、5分後にBが出発した。B出発から t 分後のAの移動時間は?(2人とも出発後は止まらない)

問2. 300 m離れた2人が、40 m/分と60 m/分で向かい合って同時に進む。出会うまで何分か。

問3. 前を歩く人を後ろの人が同じ向きに追う。前は80 m/分、後ろは100 m/分。後ろの人の出発時、前の人は400 m先にいる。追いつくまでの時間の式は?(途中で動きは変わらない)

問4. 往復の時間線が「行き → 休憩 → 帰り」で、片道の道のりが x m、行き60 m/分、帰り90 m/分、休憩5分。出発から帰着までの時間(分)は?

根拠は「一定の速さ×移動時間=道のり」と「同じ時刻・同じ基準点から測った位置の一致」です。出会い・追いつきの公式を忘れても、時間線からこの2つに戻れば組み立て直せます。先に求めたい量と単位を書き、式の各項が道のりなのか時間なのかを確かめましょう。
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