動物の体のつくりとはたらき——消化・呼吸・循環

食べ物が消化・吸収されて細胞に届き、二酸化炭素が出ていくまでの流れを、3つの系統が協力するしくみとして理解する。

この単元の目標
  • 消化管の各器官と、それぞれで働く消化酵素の役割を対応させて説明できる
  • 肺胞でのガス交換と、血液による酸素・二酸化炭素の運搬のしくみを説明できる
  • 体循環と肺循環の経路を区別し、心臓の4つの部屋を通る血流を述べることができる
📑 目次
  1. 消化——栄養素を吸収できる形に変える
  2. 吸収の舞台——小腸の絨毛
  3. 呼吸——肺胞でのガス交換
  4. 循環——2つのルートを持つポンプ

消化——栄養素を吸収できる形に変える

食べ物に含まれるでんぷん・たんぱく質・脂肪は、消化酵素のはたらきで吸収しやすい小さな分子に変わります。これが消化です。小腸の絨毛から体内へ取り込まれ、ぶどう糖やアミノ酸は主に血液へ、脂肪に由来する成分の多くはリンパへ入って運ばれます。

器官消化液酵素分解の対象
口だ液アミラーゼ(プチアリン)でんぷん → 麦芽糖
胃胃液ペプシンたんぱく質 → 中間生成物
すい臓(すい液)すい液アミラーゼ・トリプシン・リパーゼでんぷん・たんぱく質・脂肪
肝臓(胆汁)胆汁酵素なし(乳化)脂肪を小さな粒に分散
小腸の壁小腸の表面の酵素マルターゼ・ペプチダーゼなど麦芽糖 → ぶどう糖、ペプチド → アミノ酸
胆汁は消化酵素を含みません。肝臓でつくられ、胆のうに蓄えられてから小腸へ送られます。脂肪を細かい粒に分散させる「乳化」で表面積を増やし、リパーゼのはたらきを助けます。乳化は脂肪分子そのものを分解する反応とは違います。

吸収の舞台——小腸の絨毛

小腸の内壁にはひだがあり、その表面の絨毛という小さな突起が吸収面積をさらに広げます。ぶどう糖やアミノ酸は絨毛の毛細血管へ入ります。脂肪の分解物の多くは小腸の細胞に吸収された後、再び脂肪に組み立てられ、リンパ管(乳び管)へ入ります。吸収は物質を消化管から体内へ取り込むことで、水や無機塩類、ぶどう糖などは消化されなくても吸収されます。

絨毛があると、同じ長さのなめらかな管より表面積が大きくなり、栄養素を効率よく吸収できます。肺胞も、多数の小さな構造によって物質を交換する面積を広げています。

呼吸——肺胞でのガス交換

空気は鼻腔 → 気管 → 気管支 → 細気管支 → 肺胞へと進みます。肺胞はブドウの房のように無数に集まり、周囲を毛細血管が覆っています。肺胞の中の酸素は濃度が高いので血管側へ、血中の二酸化炭素は逆に肺胞側へと、拡散によって移動します。酸素はヘモグロビンと結合して全身へ運ばれます。

場所酸素の移動二酸化炭素の移動
肺胞(外呼吸)肺胞 → 血液血液 → 肺胞 → 呼気
組織(内呼吸)血液 → 細胞細胞 → 血液

循環——2つのルートを持つポンプ

心臓は左右に分かれ、さらに上下の計 4室(左心房・左心室・右心房・右心室)に分かれています。右心室から出て肺へ向かう経路が肺循環、左心室から出て全身へ向かう経路が体循環です。動脈は心臓から出る血管、静脈は心臓へ戻る血管であり、酸素が多いか少ないかとは独立の名前であることに注意しましょう(肺動脈は酸素の少ない血液を流します)。

  • 肺循環: 右心室 → 肺動脈 → 肺(ガス交換) → 肺静脈 → 左心房
  • 体循環: 左心室 → 大動脈 → 全身の毛細血管 → 大静脈 → 右心房
  • 動脈: 心臓から出る血管/静脈: 心臓へ戻る血管

🔍 1分あたりに送り出される血液の量(心拍出量)

  1. Step 1: 1回の心臓の拍動で送り出す量
    stroke volume≈70 mL/beat\text{stroke volume} \approx 70\ \mathrm{mL/beat}

    1回の拍動で左心室から押し出される血液の量を1回拍出量といいます(成人で約 70 mL)。

  2. Step 2: 1分あたりの拍動数
    heart rate≈70 beats/min\text{heart rate} \approx 70\ \mathrm{beats/min}

    安静時の心拍数です。運動するとこの値が大きくなります。

  3. Step 3: 掛け算で1分あたりの総量を出す
    70 mL/beat×70 beats/min=4900 mL/min70\ \mathrm{mL/beat} \times 70\ \mathrm{beats/min} = 4900\ \mathrm{mL/min}

    1分間に約 5 L の血液が全身へ送り出されます。これは成人の全血液量(約 5 L)とほぼ同じです。

  4. Step 4: 運動時には
    cardiac output=heart rate×stroke volume\text{cardiac output} = \text{heart rate} \times \text{stroke volume}

    激しい運動では心拍数が 150 以上になり、心拍出量は安静時の 3〜5 倍になります。細胞の呼吸が盛んになるほど必要な酸素が増え、循環系全体がそれに応答しているのです。

例題

でんぷんがぶどう糖になって血液に吸収されるまでの流れを、代表的な消化酵素の名前を使って説明せよ。

解答・解説

だ液やすい液の**アミラーゼ**が、でんぷんを麦芽糖などに分解する。小腸の表面の**マルターゼ**などがさらにぶどう糖まで分解し、ぶどう糖は絨毛の毛細血管に吸収される。

練習問題
  1. 胃液とすい液に含まれる、たんぱく質の消化に関係する酵素を一つずつ挙げよ。

    ヒント

    たんぱく質は段階的に分解され、最後にアミノ酸になる。

    解答・解説

    胃液の**ペプシン**、すい液の**トリプシン**。これらがたんぱく質をより小さなペプチドに分解し、小腸のペプチダーゼなどもはたらいてアミノ酸になる。

  2. 肺動脈を流れる血液の特徴を述べよ。

    解答・解説

    心臓から出る血管なので**動脈**だが、流れるのは**酸素の少ない暗赤色の血液**(肺へ送られる)

  3. 肺胞で酸素が血液中に取り込まれるとき、酸素は血中のどの物質と結んで運ばれるか。

    解答・解説

    **ヘモグロビン**(赤血球中の色素たんぱく質)と結合してオキシヘモグロビンになる

確認クイズ(人体)

問1. でんぷんの消化に最初に関係する酵素はどれか。

問2. 胆汁の役割として正しいものはどれか。

問3. 体循環の出発点となる心臓の部屋はどこか。

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