イオンと水溶液の性質
イオンの考え方から酸性・アルカリ性の正体、中和反応までを学ぶ。
- 水溶液中のイオンを記号で表すことができる
- 指示薬による水溶液の性質の調べ方を知っている
- 中和反応を化学反応式で表すことができる
電気を運ぶ粒子と、水溶液全体の電気
なぜ食塩水は電流を通すのに、砂糖水は通しにくいのでしょう。人が荷物を運ぶように、水溶液では動けるイオンが電荷を運びます。食塩は固体のときから陽イオンと陰イオンでできており、水に溶けるとそれらが水中を移動できるようになります。砂糖は溶けても主に電気を帯びない分子のままです。「溶けたか」だけでなく「電荷を運べる粒子ができたか」が違いです。
水に溶けたときにイオンに分かれる物質を電解質といいます。水溶液中にイオンがあっても、陽イオンが持つ正の電荷と陰イオンが持つ負の電荷の合計は通常つり合っています。Ca²⁺のように1個で正の電荷2単位をもつ粒子もあるので、正負の「粒子数が同じ」と「電荷がつり合う」は別です。
CaCl₂が水中でCa²⁺とCl⁻に分かれたモデルを考える。Ca²⁺が3個ならCl⁻は何個か。水溶液全体の電荷も説明せよ。
解答・解説
Ca²⁺3個の電荷は+6単位。Cl⁻は1個で−1単位なので**6個**必要。+6と−6で合計0となる。化学式CaCl₂の右下の2も、Ca1個に対してCl2個という対応を示している。
中和の後も残るイオンを追う
中和は、組にできたH⁺とOH⁻が水になる変化です。席と人を1対1で対応させるように、少ない方の数だけ組ができます。残るH⁺・OH⁻を見れば酸性かアルカリ性かがわかり、Na⁺・Cl⁻も数えれば全体の電荷を検算できます。中和後に中性になっても、イオンがなくなるわけではありません。
架空の粒子モデルで、塩酸由来のH⁺6個・Cl⁻6個と、水酸化ナトリウム由来のNa⁺4個・OH⁻4個がある。中和後に残る溶質由来のイオンと、水溶液の性質を答えよ。
解答・解説
H⁺とOH⁻が4組反応するので、残るのは**H⁺2個、Cl⁻6個、Na⁺4個**。OH⁻はこのモデルでは余らない。H⁺が余るため**酸性**。正の電荷は2+4=6、負は6でつり合う。実際の水溶液では水に由来するごく少量のイオンも存在する。
MgCl₂の溶質由来のイオンで、Mg²⁺が5個ならCl⁻は何個か。
解答・解説
**10個**。+2×5=+10に対し、−1×10=−10で電荷がつり合う。
塩酸由来のH⁺5個・Cl⁻5個と、NaOH由来のNa⁺8個・OH⁻8個のモデルを考える。中和後の余るOH⁻の個数と液性を答えよ。
解答・解説
**OH⁻3個、アルカリ性**。H⁺5個とOH⁻5個が水になる。Na⁺8個とCl⁻5個も残り、正8と負5+3がつり合う。
中性の食塩水にイオンが存在することと、中性であることは矛盾するか。
解答・解説
**矛盾しない**。中性はH⁺とOH⁻の濃度が等しいという性質。Na⁺やCl⁻がないという意味ではなく、イオンが動いて電荷を運べる。
水溶液中のイオン
| 水溶液 | 陽イオン | 陰イオン |
|---|---|---|
| 塩酸 | ||
| 水酸化ナトリウム水溶液 | ||
| 食塩水 | ||
| 硫酸銅(II)水溶液 |
水溶液の酸性・アルカリ性には、水素イオン $H^+$ と水酸化物イオン $OH^-$ が関係します。同じ体積中で の数が より多ければ酸性、逆ならアルカリ性、等しければ中性です。中性でも両方のイオンがごくわずかに存在します。
中和反応
塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えると、 と が結びついて水になり、中性へ向かいます。
🔍 中和の本体は「H⁺ と OH⁻ が水になる」だけ——イオン反応式の導出
- Step 1: 塩酸と水酸化ナトリウムは水中でどう存在するか
両方とも水中では完全にイオンに分かれている。
- Step 2: 混ぜた後の様子
ここで と は結合したがる(安定な水をつくる)。 と は水中ではそのまま。
- Step 3: 反応しないイオンを消す(イオン反応式)
これが中和の本体。NaCl は「生成している」というより、水中に残ったイオンの呼び名に近い。
- Step 4: 蒸発すると塩として析出
水を蒸発させると残ったイオンが結晶化して食塩になる——化学反応式 NaCl 生成の正体です。
NaCl(塩化ナトリウム=食塩)のように、酸の陰イオンとアルカリの陽イオンからできる物質を塩(えん)といいます。中和でできる水は塩ではありません。また、中和反応が起こっても、一方が余れば水溶液は中性にはなりません。
塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を加えていくとき、水溶液の性質はどのように変化するか。 と に着目して説明せよ。
解答・解説
最初は が より多く**酸性**。加えた は と同数ずつ反応して水になる。もとの塩酸の と加えた が過不足なく反応すると**中性**。さらに加えると が余り**アルカリ性**になる。
塩酸に水酸化ナトリウム水溶液を中和するまで加えた。蒸発皿に入れて水分を蒸発させると何が残るか。
解答・解説
**塩化ナトリウム NaCl**(食塩)。中和で「酸 + 塩基 → 塩 + 水」が成り立つ。
水酸化ナトリウム 0.4 g と過不足なく反応する塩化水素 HCl は何 g か。反応する質量比は NaOH : HCl = 40 : 36.5 とする。
ヒント
40 g の 100 分の 1 が 0.4 g。塩酸全体ではなく、溶けている塩化水素の質量を求める。
解答・解説
**0.365 g**。塩酸は塩化水素の水溶液であり、水を含む塩酸全体の質量は濃度がないと求められない。
青色リトマス紙を赤色に変える酸性に関係するイオンを記号で答えよ。
解答・解説
**水素イオン **(酸性の正体)。
イオンの式を広げる——原子団と水和
ここまではNa⁺やCl⁻のように一つの原子からなるイオンを中心に考えました。しかし、複数の原子が結びついたまとまり全体が電荷をもつこともあります。これが多原子イオンです。硫酸イオンSO₄²⁻ではS原子1個とO原子4個のまとまり全体が−2の電荷をもちます。右下の4はO原子の個数、右上の2−は原子団全体の電荷であり、各O原子の電荷を示す数字ではありません。
酸性でも、溶けた酸がどれだけ電離するかは物質ごとに異なります。酢酸CH₃COOHのような一価の弱酸では、同じ温度・同じ形式濃度の一価強酸と比べて、H⁺の濃度が低くなります。形式濃度とは、電離した分と電離していない分を合わせた酸の量を、溶液の体積で割ったものです。ここでは水の電離の寄与を無視できる希薄水溶液を比べています。濃度の違う溶液同士なら、弱酸だから必ずH⁺が少ないとはいえません。
中和を「イオンの数」で読む——多価の酸・塩基の反応式
イオン反応式 から、中和は $H^+$ と $OH^-$ が 1 個ずつ対応して起こります。ここから化学反応式の係数が決まります。硫酸 は完全な中和では1 molあたり 2 mol分と対応し、 を合計2 mol供給する水酸化ナトリウム2 molが必要です。NaOHは独立した分子をつくらないため、ここでは分子数ではなく物質量で表しています。
架空の資料では、塩酸の濃度は0.120 mol/L、体積は25.0 mLである。これを過不足なく中和するNaOH水溶液の濃度が0.200 mol/Lなら、対応する体積は何mLか。物質量=濃度×溶液体積(L)を用い、完全電離とHCl:NaOH=1:1の反応を仮定する。実際に溶液を扱わない紙上の計算とする。
解答・解説
25.0 mL=0.0250 Lなので、HClは0.120×0.0250=0.00300 mol。NaOHも同じ0.00300 molが対応します。体積は0.00300÷0.200=0.0150 L=**15.0 mL**。必要なのは同じ物質量であり、同じ体積ではありません。濃度が異なるため、25.0 mLずつでは過不足なく中和しません。
硫酸 0.1 mol を含む水溶液を中和するには、水酸化ナトリウムが何 mol 必要か。またその質量は何 g か。(Na=23, O=16, H=1)
解答・解説
硫酸 1 分子は を 2 個出すので NaOH はその 2 倍の **0.2 mol**。NaOH の式量は なので、質量は **8 g**。
硫酸イオンSO₄²⁻が3個ある。含まれるO原子の個数と、硫酸イオン全体の電荷の合計を答えよ。
解答・解説
**O原子は12個、電荷は−6単位**。O原子は1個のイオンに4個あるため3×4=12。電荷はイオン1個あたり−2なので3×(−2)=−6です。右下の数字と右上の数字の役割を分けて数えます。
水酸化ナトリウム 2 g を含む水溶液を中和する塩化水素は何 g か。NaOH : HCl = 40 : 36.5 とする。
ヒント
2 g は 40 g の何分の 1 か。
解答・解説
2 g は 40 g の 20 分の 1 なので、HCl は 36.5 g の 20 分の 1 = **1.825 g**。
教科書上の記録で、石灰水と二酸化炭素が反応し、白くにごった。白濁の原因物質の名前を答え、何と何が反応して塩と水ができるか説明せよ。Ca(OH)₂+CO₂→CaCO₃+H₂Oの式が表す段階だけを考え、二酸化炭素が過剰になった後の変化は扱わない。実験を行う課題ではない。
解答・解説
白濁の原因は、溶けにくい**炭酸カルシウムCaCO₃の沈殿**です。酸性酸化物のCO₂と、塩基のCa(OH)₂が反応して、塩であるCaCO₃と水を作ります。酸塩基反応の一つであり、単純に「中和とは別種」とは分類できません。H⁺+OH⁻→H₂Oという式だけで表す型とは反応の形が異なり、この式ではCO₂との反応と沈殿生成も表しています。
問1. アルカリ性の正体となるイオンはどれか。
問2. 中和のとき、水溶液の中で実際に起きていることは?
問3. 中性の食塩水に BTB 溶液を入れるとどんな色になるか。