光合成と呼吸——エネルギーの流れ

光合成と呼吸のつり合いから、生態系におけるエネルギーの流れと物質循環を学ぶ。

この単元の目標
  • 光合成・呼吸の化学変化を式で表すことができる
  • デンプン検出の結果と、光の条件を比較する意味を説明できる
  • 食物連鎖におけるエネルギーの流れを図示できる
📑 目次
  1. 植物はどこから体の材料を得るのか
  2. 外から見える増減は「入金−出金」
  3. 光合成
  4. 呼吸
  5. 生態系でのエネルギーの流れ

植物はどこから体の材料を得るのか

鉢植えの植物が大きくなっても、増えた体がすべて鉢の土から移ってきたわけではありません。光合成でできる糖の炭素は空気中の二酸化炭素に由来します。土から吸収する水や無機養分も必要ですが、光は体をつくる原子そのものではなく、物質をつくり変えるためのエネルギー源です。材料の流れとエネルギーの流れを、別の色の矢印で描くつもりで分けましょう。

外から見える増減は「入金−出金」

貯金が増えた額だけでは、入金額そのものはわかりません。出金も同時に起きるからです。同様に、葉から正味で出た酸素は、光合成でつくられた量から呼吸で使われた量を引いた値です。正味の酸素放出量=光合成による酸素生成量−呼吸による酸素消費量。同じ時間・同じ植物量で比較し、負の値なら外から酸素を取り込んだことを表します。

酸素の正味の増減が0でも、「光合成も呼吸も止まった」とは限りません。両方の速さが等しい可能性があります。また暗所の呼吸量から明所の呼吸量を推定する計算は、温度などが等しく、呼吸の速さが同じとみなせるという仮定つきです。以下の数値は学習用の架空データで、測定操作の指示ではありません。
例題:正味の放出量から光合成量へ

同じ植物量について、明所では1時間に酸素が正味6 mg増え、暗所では1時間に2 mg減ったとする。明暗で呼吸の速さが同じなら、明所で光合成がつくった酸素は1時間に何mgか。

解答・解説

暗所では光合成がないので、呼吸による消費は2 mg。明所の正味6=生成量−2より、生成量は**8 mg**。正味の6 mgをそのまま光合成量とすると、呼吸で使われた分を数え落とす。

架空の条件1時間の正味の酸素変化呼吸による消費を2 mgとした生成量
暗所−2 mg0 mg
弱い光−1 mg1 mg
つり合う光0 mg2 mg
十分な光+6 mg8 mg
例題:食物連鎖の割合を逆にたどる

架空の一定期間の収支で、草が蓄えたエネルギーの20%が草食動物へ、そのうち15%が肉食動物へ渡った。肉食動物へ渡ったのが60 kJなら、最初に草が蓄えたのは何kJか。

解答・解説

肉食動物の一つ前は60÷0.15=400 kJ。草は400÷0.20=**2000 kJ**。順に確認すると2000×0.20×0.15=60。20%や15%はこの問題の仮定で、普遍的な割合ではない。

練習:光合成の収支とエネルギー
  1. 呼吸による酸素消費が1時間に3 mg、光合成による生成が1時間に2 mgの葉では、酸素は正味でどう変化するか。

    解答・解説

    2−3=−1なので、**1時間に1 mg減る**。光合成はしていても呼吸による消費の方が多い。

  2. 同じ温度・植物量で呼吸の速さは一定とする。暗所で1時間に酸素が4 mg減り、明所では増減0だった。明所の光合成による酸素生成量は1時間に何mgか。

    解答・解説

    **4 mg**。0=生成量−4なので生成量は4。正味0でも二つの働きは続いている。

  3. 架空の食物連鎖で8000 kJのうち25%が草食動物へ、さらに10%が肉食動物へ渡る。肉食動物へ渡るエネルギーと、物質との流れの違いを答えよ。

    解答・解説

    8000×0.25×0.10=**200 kJ**。炭素などの物質は環境と生物の間を循環するが、エネルギーは最終的に熱として周囲へ散逸し、同じようには循環しない。

光合成

植物は葉緑体で、光のエネルギーを使って二酸化炭素と水から糖などの養分をつくり、酸素を出します。養分の一部はデンプンとして蓄えられます。光合成には光が必要ですが、適切な人工の光でもおこなわれます。次の式は物質の出入りを表す模式図です。

二酸化炭素+水→光のエネルギーデンプン+酸素\text{二酸化炭素} + \text{水} \xrightarrow{\text{光のエネルギー}} \text{デンプン} + \text{酸素}
  • デンプンの検出:ヨウ素(ヨウ化カリウム加ヨウ素)水溶液で青紫色に変色
  • 観察では、葉の緑色の色素を除くとヨウ素液の色の変化を見分けやすくなる。薬品や加熱を扱う操作は教員の管理下で行う
  • もともと蓄えられていたデンプンの影響を除き、光以外の条件をそろえた部分どうしを比較することで、光の必要性を調べられる

呼吸

一方、呼吸は昼も夜もおこなわれ、養分(デンプンなど)を分解して生活に必要なエネルギーを取り出します。

養分(デンプン等)+酸素→二酸化炭素+水+エネルギー\text{養分(デンプン等)} + \text{酸素} \rightarrow \text{二酸化炭素} + \text{水} + \text{エネルギー}
明るい時間にも呼吸は続いています。外から見える酸素の増減は「光合成による放出量 − 呼吸による消費量」です。弱い光では呼吸の方が上回り、明るくても酸素が正味で減る場合があります。

生態系でのエネルギーの流れ

草 → 草食動物 → 肉食動物という食物連鎖では、養分に蓄えられたエネルギーの一部だけが次の段階へ渡ります。各段階の呼吸に伴って熱が周囲へ移り、食べ残しや排出物のエネルギーは分解者などへ渡ります。炭素や窒素などの物質は循環しますが、エネルギーは一方向に流れ、最終的には熱として散逸します。一定期間に次の段階へ渡るエネルギーと、ある瞬間の生物の質量(バイオマス)は区別しましょう。

例題

草 → バッタ → カエルの食物連鎖を考える。ある期間に草が蓄えたエネルギーが 10000 kJ で、各段階から次の段階へ 10% ずつ伝わると仮定する。カエルへ伝わるのは何 kJ か。

解答・解説

バッタへは 10000 × 0.1 = 1000 kJ、カエルへは 1000 × 0.1 = **100 kJ**。10% はこの問題の仮定で、実際の割合は生物や環境によって異なる。エネルギーの割合だけから生物の質量比は決められない。

確認クイズ(光合成と呼吸)

問1. 光合成で放出される酸素の酸素原子は、もともとどこにあったものか。

問2. 呼吸がおこなわれる時間帯は?

問3. 食物連鎖で、次の段階へ渡るエネルギーが少なくなる理由として適切なのは?

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