産業と貿易——世界とつながる日本

第一次〜第三次産業の構造、エネルギー問題、貿易の現状を学ぶ。

この単元の目標
  • 第一次〜第三次産業の分類で各国の産業構造を比較できる
  • 日本の資源輸入への依存と貿易相手国を説明できる
📑 目次
  1. 産業の三つの部門
  2. 同じ「割合」でも分母が違う
  3. 日本の貿易

産業の三つの部門

産業内容例
第一次産業自然から直接得る農業・漁業・林業
第二次産業原料を加工する製造業・建設業
第三次産業サービスを提供する小売・金融・情報通信

先進国ほど第三次産業の割合が高く、途上国では第一次産業の比重が大きい傾向があります。これを産業構造の違いとして読み取るのが地理の基本スキルです。

同じ「割合」でも分母が違う

なぜ産業や貿易の割合は、数字だけ並べても比較できないのでしょう。クラスの「運動部の割合」も、人数で数えるか活動時間で数えるかで意味が変わります。産業構造でも就業者数の割合と生産額の割合は別です。まず何を全体の100%としたかを確認し、その後で大小を比較します。

食料も米の1kgと野菜の1kgでは、含む熱量や価格が違います。そこで総合食料自給率は、食料全体を熱量にそろえるカロリーベースと、金額にそろえる生産額ベースで表します。農林水産省の定義では、総合食料自給率の国産分に、輸入飼料を使って国内で生産した畜産物の分は算入しません。国内の農場で育ったことだけで、原料まで国内で賄ったとはいえないのです。

指標分母・分子の考え方注意点
就業者の産業別割合全就業者のうち、その産業で働く人数生産額や所得の割合ではない
カロリーベース総合食料自給率総供給熱量のうち国産供給熱量重量や金額の割合ではない
生産額ベース総合食料自給率国内消費仕向額のうち国内生産額価格の変動にも影響される
「自給率が低い=今すぐ食料がなくなる」「第三次産業の割合が高い=全員が豊か」とは断定できません。自給率は特定のものさしで測る国内生産の比重です。供給の安定性を考えるには、輸入先の分散、備蓄、国内生産の維持なども調べる必要があります。以下は実在国の統計ではなく、定義を確かめる教材用データです。
例題:食料自給率の二つのものさし

架空の国で、飼料の扱いを反映した国産供給熱量が1人1日800kcal、総供給熱量が2000kcal。国内生産額は6兆円、国内消費仕向額は10兆円で、生産額も総合食料自給率の計算用に輸入飼料の扱いを反映済みとする。二つの自給率を求めよ。

解答・解説

カロリーベースは800÷2000×100=40%、生産額ベースは6÷10×100=60%。どちらも正しく、矛盾しない。食料を熱量で重みづけするか、金額で重みづけするかが違うため。

例題:人数が増えても割合が下がる?

架空の地域で第三次産業の就業者が600人から660人に増えた。同時に全就業者は1000人から1200人に増えた。第三次産業の割合はどう変わったか。

解答・解説

初めは600÷1000=60%、後は660÷1200=55%で、5ポイント下がった。人数は60人増えているが、全体の人数はそれ以上の率で増えた。「割合の低下」と「人数の減少」は同じではない。

練習:分母と供給網を確かめる
  1. 架空の国の国産供給熱量は900kcal、総供給熱量は2250kcal(ともに1人1日当たり、飼料の扱い反映済み)。カロリーベース自給率は?

    解答・解説

    900÷2250×100=40%。同じ単位・同じ期間の国産分を全体で割る。

  2. 国内の畜産物がすべて国内の資源だけで作られているとは限らない理由は?

    解答・解説

    飼料を輸入している場合があるから。完成した畜産物の生産地だけでなく、供給網の前の段階を見る必要がある。

  3. 就業者の70%が第三次産業という資料から、国の生産額の70%も第三次産業だといえるか。

    解答・解説

    いえない。人数と生産額は違う指標であり、一人当たりの生産額も産業によって異なりうる。生産額の資料で別に確認する。

定義の根拠:農林水産省「食料自給率とは」https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/011.html 。同ページには新設の摂取熱量ベースなどもあるため、総合食料自給率と区別してください。ここでは実際の年度別自給率は示さず、架空数値で計算しています。現実の比較では年度・指標・飼料の扱いをそろえます。

日本の貿易

  • 日本は資源(石油・鉄鉱石など)を輸入に依存し、完成品(自動車・電機)を輸出して成り立つ
  • 中国・アメリカなどと多くの貿易を行う。貿易相手国の順位は対象年や輸出・輸入・総額のどの指標かを確認する。食料の多くも輸入している
  • 近年は半導体など特定品に依存するリスク(供給網の途絶)が課題
例題

日本が食料を多く輸入している理由を、土地の条件から説明せよ。

解答・解説

国土が山がちで**農地が狭い**ことに加え、農業就業者の**高齢化・減少**がある。一方で人口は多いため、国内生産だけでは需要を満たせない。

練習問題
  1. スマートフォン1台を作るには世界中の部品が必要である。この状況を表す言葉を答えよ。

    解答・解説

    **グローバル・サプライチェーン**(世界的な供給網)。

  2. 第一次産業従事者の割合が高い国と低い国で、それぞれ生活の特徴をひとことずつ述べよ。

    ヒント

    機械化・サービス経済との関係。

    解答・解説

    高い国では農林水産業で働く人が多く、低い国では製造業やサービス業で働く人が多い。ただし割合だけで機械化の程度や生活水準を断定できない。

確認クイズ(産業と貿易)

問1. カロリーベース総合食料自給率で、食料をそろえるものさしは?

問2. IT サービス業は何次産業か。

問3. 日本が消費する量のほとんどを輸入に頼る資源の組み合わせは?

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