古典文法の要点
助動詞の接続と活用、敬意の方向、係り結びを具体的に確認する。
- 助動詞の接続・意味・活用を分けて説明できる
- 敬意の向かう人物を判断できる
- 係り結びを形で確認できる
接続・活用・文脈の三つで助動詞を読む
接続は「直前の語をどの活用形にするか」、活用は「助動詞自身がどの形になるか」です。例えば「む」は未然形接続であり、「む」が名詞を修飾して連体形になることとは別です。意味は文末かどうかだけでは決まらず、主語や発話状況を含めて判断します。
| 助動詞 | 接続 | 主な意味と注意 |
|---|---|---|
| む(ん) | 未然形 | 推量・意志・適当・勧誘・仮定・婉曲。一人称の意志、三人称の推量などは文脈判断の手がかり |
| じ | 未然形 | 打消推量・打消意志 |
| けり | 連用形 | 過去・詠嘆。和歌でも常に詠嘆とは限らない |
| ず | 未然形 | 打消。「咲かず」の「咲か」は未然形 |
| まし | 未然形 | 反実仮想・ためらいの意志など。「せば〜まし」などの条件と合わせて読む |
| まほし | 未然形 | 希望。「読ままほし」は「読みたい」 |
活用形を実際の形で確認する
| 語・活用の種類 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 已然形 | 命令形 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 書く(カ行四段) | 書か | 書き | 書く | 書く | 書け | 書け |
| 受く(カ行下二段) | 受け | 受け | 受く | 受くる | 受くれ | 受けよ |
| 給ふ(ハ行四段・尊敬) | 給は | 給ひ | 給ふ | 給ふ | 給へ | 給へ |
| 給ふ(ハ行下二段・謙譲) | 給へ | 給へ | 給ふ | 給ふる | 給ふれ | ― |
| けり(助動詞) | けら | ― | けり | ける | けれ | ― |
同じ形でも活用形が同じとは限りません。「書け」は已然形にも命令形にもなります。また「給へ」は四段なら已然形・命令形、下二段なら未然形・連用形です。後続する語との接続や文の構造から判断します。表の「―」はその活用形がないことを示します。「けら」は「けらず」などに見られる限られた用法で、未然形だからといってどの助動詞とも自由に組み合わせられるわけではありません。
係り結び
係助詞「ぞ・なむ・や・か」に対して結びは連体形、「こそ」に対して已然形になります。係助詞と対応する結びを探しましょう。「なむ」には別の文法的な用法もあるため、文字だけで係助詞と断定しません。
「花咲きけり」を、係助詞「ぞ」「こそ」を使って言い換え、結びの活用形を説明せよ。
解答・解説
「花ぞ咲きける」では「ける」が助動詞「けり」の連体形。「花こそ咲きけれ」では「けれ」が已然形。元の「けり」は終止形である。四段動詞の終止形・連体形のように同じ形になる場合もあるので、活用表と照合する。
敬語は敬意の向きを確認する
| 種類 | 敬意の対象 | 例と注意 |
|---|---|---|
| 尊敬語 | 動作・状態の主体 | おはす、四段活用の給ふ(〜なさる) |
| 謙譲語 | 動作の向かう相手など | 申す、参る、奉る。動作主が必ず低い身分という意味ではない |
| 丁寧語 | 聞き手・読み手 | 侍り・候ふ(あります・ございます)。両語には「お仕えする」の謙譲用法もある |
地の文「大臣、帝に物申し給ふ。」の「申し」「給ふ」はそれぞれ何敬語か。誰から誰への敬意か。
解答・解説
「申し」は「言ふ」の謙譲語「申す」の連用形で、語り手から発言の相手である帝への敬意。「給ふ」は四段活用の尊敬の補助動詞で、語り手から動作主の大臣への敬意。同じ発言について、相手と動作主の両方を敬っている。下二段の「給ふ」は主に話し手側の動作に用いるので、この地の文で第三者の大臣の動作を述べる用法とは区別する。
自作例文「我は明日行かむ。」の「む」の接続と、この文で自然な意味を答えよ。
解答・解説
未然形接続。「行か」は四段動詞「行く」の未然形。話し手が自分の行動を述べる文なので、通常は意志「私は明日行こう」と解釈する。
自作例文「鳥こそ鳴きけれ。」の結びを抜き出し、活用形を答えよ。
解答・解説
「けれ」。過去・詠嘆の助動詞「けり」の已然形で、「こそ」の結びになっている。
「侍り」が現れたら必ず謙譲語と判断してよいか。
解答・解説
よくない。「お仕えする」なら謙譲語、「あります・ございます」や補助動詞の「〜ます」なら丁寧語となる。用法と文脈を調べる。
自作の会話文「かく思ひ給へ候ふ。」の「給へ」の活用の種類と活用形を答えよ。「候ふ」は連用形に付く丁寧の補助動詞とする。
解答・解説
ハ行下二段活用の連用形。「候ふ」へ続くため連用形と判断し、四段の連用形「給ひ」と区別する。下二段の「給ふ」は話し手側の「思ふ」をへりくだって表し、聞き手に敬意を示す。「このように思っております」などと訳す。
文法を読解へつなぐ——「形」と「起きたこと」を分ける
文法問題で品詞名を答えた後、その形が文章の意味に何を加えるかを確認します。打消なら起こらない動作、希望なら望んでいる動作、意志ならこれから行おうとする動作です。「望む・推測する・実行する」は別なので、助動詞を訳から落とすと物語の出来事まで変わってしまいます。以下の例文はすべて学習用の自作です。
| 確認すること | 読解で守ること |
|---|---|
| 直前の活用形と後続語 | 似た形を見た目だけで分類しない |
| 誰の発言・判断か | 会話中の意志や希望を語り手の事実報告と混同しない |
| 文末まで含めた意味 | 打消・推量・希望を消さずに現代語へ移す |
| 前後の出来事 | 文法だけで決まらない解釈は文脈から絞る |
「この書を読ままほし。」について、①「まほし」の直前の活用形、②現代語訳、③この一文だけで読書が終わったといえるか、を答えよ。
解答・解説
①「読ま」はマ行四段動詞「読む」の未然形。「まほし」は未然形に接続する希望の助動詞。②「この本を読みたい。」③いえない。読みたいという希望を述べるだけで、読んだか、読み終えたかは示していない。「この本を読んだ」と訳すと、希望を事実に置き換えてしまう。
自作例文「我はこの書を読まじ。」を、話し手が自分の今後の行動を決めている場面として訳せ。すでに読んでいないという過去の報告か。
解答・解説
「私はこの本を読むまい(読まないつもりだ)。」この場面の「じ」は打消意志で、過去の読書の有無を報告する文ではない。「読ま」は未然形。
「花咲かず。」と「花咲きぬ。」の「咲か」「咲き」の活用形を示し、意味の違いを説明せよ。いずれも自作の地の文で、後者の「ぬ」は完了の終止形とする。
解答・解説
「咲か」は未然形で、打消「ず」に続く。「花が咲かない。」一方「咲き」は連用形で、完了「ぬ」に続く。「花が咲いた。」後者を打消とすると形にも出来事にも合わない。打消「ず」の連体形にも「ぬ」があるため、文字だけでなく接続を見る。
「読みたい」という現代語訳から、「すでに読んだ」と答案に書き換えてよいか。根拠を説明せよ。
解答・解説
よくない。希望は実現の報告ではないから。文章に実行を示す別の根拠がなければ、出来事を追加せず希望として記述する。