この単元の目標- 積・商・合成関数の微分法を、関数の構造に応じて組み合わせられる。
- 三角・指数・対数関数の導関数を、定義域とともに説明できる。
- 対数微分法を用いて、底と指数の両方に変数を含む関数を微分できる。
📑 目次
- 計算前に「外側の構造」と定義域を見る
- 積・商・合成の三つのルール
- 三角・指数・対数関数の基本公式
- 対数微分法:積と累乗を和と積に変える
計算前に「外側の構造」と定義域を見る
微分は記号を機械的に置き換える作業ではありません。まず関数が積・商・合成のどれで組み立てられているかを調べ、使う公式を選びます。例えば ex2 は指数関数と二次関数の合成、x2ex は積です。分母が 0 になる点、対数の真数が正でない点などは、計算を始める前に除きます。
この記事では $\ln x=\log_e x$ を自然対数 とします。e は自然対数の底です。三角関数の角はすべてラジアン(弧度法)で測ります。度数法のままでは、以下の微分公式はそのまま使えません。 積・商・合成の三つのルール
積では「片方だけを微分した項」を二つ足します。商では分子の順序が重要です。合成では外側を微分した後、内側の微分を掛けます。これらは u,v,g と外側の F が必要な点で微分可能であることを前提にしています。
🔍 差の分解から積の微分法を導く
- 積の差に同じ項を加減する
両方の関数が同時に変わる差を、一つずつの変化に分けます。
- h で割って極限をとる
微分可能なら連続なので、v(x+h) は v(x) に近づきます。積の微分が導関数どうしの積にならない理由です。
- 商は逆数との積とみなす
逆数の合成関数の微分を使えば商の公式も得られます。ただし v は 0 でないことが必要です。
三角・指数・対数関数の基本公式
| 関数 | 導関数 | 条件 |
|---|
| sinx | cosx | 実数全体 |
| cosx | −sinx | 実数全体 |
| tanx | 1/cos2x | cosx=0 |
| ex | ex | 実数全体 |
| ax | axlna | a>0(a=1 なら導関数は 0) |
| lnx | 1/x | x>0 |
| logax | 1/(xlna) | x>0, a>0, a=1 |
内側が u(x) なら各公式に u′(x) を掛けます。例えば (sin3x)′=3cos3x、(ex2)′=2xex2、(lnu)′=u′/u(u>0)です。ln∣u∣ は u=0 の各区間で定義され、同じ導関数 u′/u をもちます。
例題1:積の中に合成関数がある場合
f(x)=exsin2x を微分し、x=0 での接線の傾きを求めよう。
解答・解説
積の微分で f′(x)=exsin2x+ex⋅2cos2x=ex(sin2x+2cos2x)。内側の 2x の微分を忘れないことが要点です。f′(0)=1(0+2)=2 なので傾きは 2。定義域は実数全体で、f(0)=0 より接線は y=2x です。
対数微分法:積と累乗を和と積に変える
y>0 の式では両辺の自然対数をとり、lny を微分すると y′/y になります。求めた後に元の y を掛ければ導関数です。特に y=u(x)v(x)(u>0)なら lny=vlnu とでき、指数にも変数がある場合を扱えます。符号が一定で 0 でない関数なら ln∣y∣ を使う方法もあります。
例題2:底と指数の両方が変化する
y=xx(x>0)を微分し、x=1 での微分係数を求めよう。
解答・解説
lny=xlnx。両辺を微分すると y′/y=lnx+1 なので y′=xx(lnx+1)。x=1 では y′=1 です。xx=exlnx と書き直して合成関数として微分しても同じ答えになります。実数上で滑らかな関数として扱うため、ここでは定義域を x>0 に限っています。
誤解に注意: (uv)′=u′v′ ではありません。また xx に「指数を前に出す」公式だけを使うことはできません。その公式は指数が定数の場合です。ln(x2) の定義域は x=0 で、2ln∣x∣ と書くのが正確です。式を簡単にしても、元の関数で除かれていた点を勝手に戻してはいけません。 練習:構造と定義域をセットで答える
f(x)=lnx/x を微分し、f′(e) を求めよ。
ヒント
定義域は x>0。商の分子は「分子の微分×分母 − 分子×分母の微分」。
解答・解説
f′(x)=[(1/x)x−lnx]/x2=(1−lnx)/x2。lne=1 より f′(e)=0 です。
y=tan3x の導関数と定義域を求めよ。
ヒント
内側の 3x を微分する。定義域では cos 3x が 0 になる点を除く。
解答・解説
y′=3/cos23x。定義域は x=π/6+kπ/3(k は整数)。例えば x=0 の傾きは 3 です。
y=ln∣x2−1∣ を微分し、定義域を答えよ。
ヒント
ln|u| の導関数は u'/u。ただし u=0 は除く。
解答・解説
y′=2x/(x2−1)、定義域は x=±1。−1<x<1 でも絶対値の中が 0 でなければ定義されます。例えば x=0 では y=0, y′=0 です。
確認クイズ
問1. x>0 で y=ln(2x) の導関数はどれ?
問2. y=2x の導関数はどれ?