関数の極限と連続:左右・有理化・はさみうち

その点の値と近づく値を区別し、極限の条件を確認しながら式変形と評価で求める。

この単元の目標
  • 関数の極限と左右極限を区別し、両側の一致から極限の存在を判定できる。
  • 因数分解・有理化・はさみうちと弧度法の三角関数の基本極限を使える。
  • 関数の連続性を、関数値と極限値の一致という条件で判断できる。
📑 目次
  1. 極限は「その点以外で近づいた先」
  2. 計算の順序:代入して形を見てから変形する
  3. はさみうちと三角関数の基本極限
  4. 連続とは極限と関数値が一致すること

極限は「その点以外で近づいた先」

lim⁡x→af(x)=L\lim_{x\to a}f(x)=L とは、xx を aa そのものとは異なる値のまま十分近づけると、f(x)f(x) を LL にいくらでも近づけられることです。f(a)f(a) が未定義でも、別の値でも極限は考えられます。数値表やグラフは予想には役立ちますが、非常に近くでの挙動を保証するには式変形や不等式を使います。

lim⁡x→af(x)=L⟺lim⁡x→a−f(x)=lim⁡x→a+f(x)=L\lim_{x\to a}f(x)=L\quad\Longleftrightarrow\quad\lim_{x\to a-}f(x)=\lim_{x\to a+}f(x)=L

ここでは aa の左右で関数が定義されている場合を考えます。x→a−x\to a- は小さい側から、x→a+x\to a+ は大きい側から近づく意味です。左右の有限極限が一致すれば両側の有限極限が存在します。例えば ∣x∣/x|x|/x は左側で −1-1、右側で 11 なので、x→0x\to0 の極限は存在しません。定義域の端点では、定義されている側からの極限を使います。

1/x1/x は x→0+x\to0+ で +∞+\infty、x→0−x\to0- で −∞-\infty に発散します。無限大は実数としての値ではなく、際限なく増大する挙動の記号です。1/x21/x^2 は左右とも +∞+\infty ですが、これも有限の極限値をもつという意味ではありません。

計算の順序:代入して形を見てから変形する

f(x)→Af(x)\to A、g(x)→Bg(x)\to B が有限なら、和・差・積の極限はそれぞれ A±BA\pm B、ABAB です。商は B≠0B\ne0 のとき A/BA/B。多項式の極限は代入で求まり、有理関数も代入後の分母が0でなければ同様です。分子・分母がともに0へ近づく「0/00/0 型」は答えではなく、そのままでは商の法則を使えないという合図です。

  1. 多項式の 0/00/0 型なら因数分解し、x≠ax\ne a で共通因子を約分する。
  2. 平方根の差を含むなら共役な式を掛けて有理化する。掛ける分母が0でないことも確かめる。
  3. 三角関数なら変数をそろえて基本極限へ、不規則な振動なら絶対値を上から評価する。
  4. x→∞x\to\infty の有理式なら分母の最高次数のべきで割り、1/x→01/x\to0 などを使う。
例題1:有理化で消える因子を見つける

lim⁡x→01+x−1x\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\sqrt{1+x}-1}{x} を求めよ。

解答・解説

実数の定義域は x≥−1x\ge-1 かつ x≠0x\ne0。0の左右で近づけます。共役な 1+x+1>0\sqrt{1+x}+1>0 を掛けると、x≠0x\ne0 で (1+x−1)/x=1/(1+x+1)(\sqrt{1+x}-1)/x=1/(\sqrt{1+x}+1)。右辺の分母は2へ近づくので極限は 1/21/2 です。検算として、x=−0.01x=-0.01 では約0.5013、x=0.01x=0.01 では約0.4988となり、両側から同じ値へ近づく予想と整合します。

はさみうちと三角関数の基本極限

aa の十分近く(x=ax=a は除いてよい)で g(x)≤f(x)≤h(x)g(x)\le f(x)\le h(x) が成り立ち、g(x)g(x) と h(x)h(x) がともに同じ有限値 LL へ近づくなら、f(x)f(x) も LL へ近づきます。これがはさみうちの原理です。特に ∣f(x)∣≤r(x)|f(x)|\le r(x)、r(x)→0r(x)\to0 なら f(x)→0f(x)\to0 と判断できます。

🔍 弧度法で sin x / x の極限を導く

  1. 単位円の面積を比較
    12sin⁡x≤12x≤12tan⁡x(0<x<π2)\frac12\sin x\le\frac12x\le\frac12\tan x\quad\left(0<x<\frac\pi2\right)

    内側の三角形、扇形、接線でできる外側の三角形の順です。扇形の面積が x/2 になるのは x がラジアンのときです。

  2. 正の量で割ってはさむ
    cos⁡x≤sin⁡xx≤1\cos x\le\frac{\sin x}{x}\le1

    sin x≤x と x≤sin x/cos x をそれぞれ整理します。この範囲では x と cos x は正です。

  3. 右からの極限
    cos⁡x→1⟹lim⁡x→0+sin⁡xx=1\cos x\to1\quad\Longrightarrow\quad\lim_{x\to0+}\frac{\sin x}{x}=1

    cos x→1 は単位円上で角を0へ縮めたときの座標からわかります。

  4. 左側も確認
    sin⁡(−t)−t=sin⁡tt(t>0)⟹lim⁡x→0sin⁡xx=1\frac{\sin(-t)}{-t}=\frac{\sin t}{t}\quad(t>0)\quad\Longrightarrow\quad\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1

    比は偶関数なので左右の極限が一致します。微分の公式は使っていません。

lim⁡x→0sin⁡(kx)x=k(k∈R, 角は弧度法)\lim_{x\to0}\frac{\sin(kx)}{x}=k\quad(k\in\mathbb R,\ \text{角は弧度法})

k≠0k\ne0 なら t=kxt=kx とおき、sin⁡(kx)/x=k(sin⁡t/t)\sin(kx)/x=k(\sin t/t) とします。k=0k=0 なら x≠0x\ne0 で式は常に0です。一方、度数法で sin⁡(x∘)/x\sin(x^\circ)/x を考えると sin⁡(πx/180)/x\sin(\pi x/180)/x なので極限は π/180\pi/180。角の単位は定数倍の違いを生みます。

連続とは極限と関数値が一致すること

f が a で連続⟺lim⁡x→af(x)=f(a)f\text{ が }a\text{ で連続}\quad\Longleftrightarrow\quad\lim_{x\to a}f(x)=f(a)

内点での連続性には、① f(a)f(a) が定義されている、②両側の有限極限が存在する、③その極限が f(a)f(a) と等しい、の三条件が必要です。閉区間の左端では右極限、右端では左極限を使います。多項式と sin⁡x\sin x、cos⁡x\cos x は実数全体で連続です。正接関数は cos⁡x≠0\cos x\ne0 の範囲で、有理関数は分母が 0 でない範囲で、x\sqrt{x} はその定義域 x≥0x\ge0 で連続です。

例題2:つなぎ目で連続にする

f(x)=x2−1x−1f(x)=\dfrac{x^2-1}{x-1}(x<1x<1)、f(1)=bf(1)=b、f(x)=ax+1f(x)=ax+1(x>1x>1)とする。x=1x=1 で連続となる a,ba,b を求めよ。

解答・解説

左側では x≠1x\ne1 なので (x2−1)/(x−1)=x+1(x^2-1)/(x-1)=x+1、左極限は2。右極限は a+1a+1 です。まず両側の一致から a+1=2a+1=2、つまり a=1a=1。さらにその極限と関数値が等しい必要があるので b=2b=2。検算すると、左右とも式は x+1x+1 になり、つなぎ目の値も2で一致します。

誤解に注意:0/00/0 は0でも1でもありません。「x=0x=0 を代入できない」と「x→0x\to0 の極限がない」は別です。また sin⁡(1/x)\sin(1/x) が有界でも極限をもつとは限りません。はさみうちでは、上下の評価が同じ値へ近づく必要があります。
練習:使った条件も説明しよう
  1. lim⁡x→2x2−4x−2\displaystyle\lim_{x\to2}\frac{x^2-4}{x-2} を求め、この式の x=2x=2 での値を補って連続にせよ。

    ヒント

    分子を因数分解します。極限計算では x≠2x\ne2 です。

    解答・解説

    x≠2x\ne2 で (x2−4)/(x−2)=x+2(x^2-4)/(x-2)=x+2 なので極限は4。元の式は2で未定義ですが、新しく関数値を f(2)=4f(2)=4 と定めれば極限と一致し連続になります。

  2. lim⁡x→0xsin⁡(1/x)\displaystyle\lim_{x\to0}x\sin(1/x) を求めよ。

    ヒント

    ∣sin⁡u∣≤1|\sin u|\le1 を用いて式全体の絶対値を評価します。

    解答・解説

    x≠0x\ne0 で ∣xsin⁡(1/x)∣≤∣x∣|x\sin(1/x)|\le|x|。よって −∣x∣≤xsin⁡(1/x)≤∣x∣-|x|\le x\sin(1/x)\le|x| で、上下とも0へ近づくため極限は0。振動する部分だけの極限を求める必要はありません。

  3. 角を弧度法として lim⁡x→0sin⁡(3x)2x\displaystyle\lim_{x\to0}\frac{\sin(3x)}{2x} を求めよ。

    ヒント

    分母を 3x3x にそろえるための係数を外に出します。

    解答・解説

    x≠0x\ne0 で sin⁡(3x)/(2x)=(3/2){sin⁡(3x)/(3x)}\sin(3x)/(2x)=(3/2)\{\sin(3x)/(3x)\}。t=3x→0t=3x\to0 より基本極限から答えは 3/23/2 です。

確認クイズ

問1. f(x)=∣x∣/xf(x)=|x|/x(x≠0x\ne0)について正しいものはどれか。

問2. lim⁡x→0sin⁡(x∘)/x\displaystyle\lim_{x\to0}\sin(x^\circ)/x の値はどれか(角は度数法)。

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